Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

読んだマンガ、読んだ本、見た映画

上を下へのジレッタ

家族が関ジャニ∞ファンなのですが、その関ジャニ∞の横山クンがお芝居に出るというので、子供が原作の漫画を買ってきました。先に読んで良いということでしたので、読ましてもらいました。文庫本サイズの漫画は、文字が小さく読みにくかったのですが、何とか読み終わりました。

上を下へのジレッタ (手塚治虫文庫全集)

上を下へのジレッタ (手塚治虫文庫全集)

 

1968年~69年の作品ですが、今読んでも新鮮で、古さは全く感じません。大人向けの「漫画サンデー」に連載されていたためか、子供向けではない表現・内容満載です。また、Big Brotherとか、脳科学とか、バーチャルリアリティとか、50年前とは思えないような内容です。

 

女性の主人公は、お腹がすくと絶世の美女になるという設定です。その彼氏の売れない漫画家の空想が、バーチャルリアリティとなって事件を巻き起こします。その二人を操る敏腕TVディレクターが主人公です。最後は大団円になります。解説に手塚治虫が本作品に込めたのは、メディアが権力を握る怖さを表現、とありました。

 

手塚治虫さん曰く、お腹がすくと美女になるというのは、女性が美人になるために減食したり、カロリーを控えたりすることのパロディだそうです。私がこの女性の主人公を見て近いと思ったのは、子供のころTVでよく見た「メルモちゃん」です。青いキャンディと赤いキャンディで、大人になったり子供になったりして、事件を解決していくという話です。美人か美人でないか、大人か子供か、と違いがありますが、食事や薬で変化するというところに、近いものを感じました。

 

この作品が発表されて50年です。50年ぐらい経っても、この作品に古さを感じないということは、人間はあまり進歩していないのではないでしょうか。

 

少し前に内田百閒と寺田虎彦の随筆を読みました。80年前ぐらいに書かれたものが多かったように思います。これらも、今読んでも全く古さを感じませんでした。戦前にここまで自由な(内田百閒)で科学的・合理的な(寺田虎彦)、文章が書かれ、人気があったということは、凄いことだなと思いました。 

百けん随筆 (1)    講談社文芸文庫

百けん随筆 (1) 講談社文芸文庫

 

 

さて、今日は、毎年恒例の名探偵コナンの映画を見てきました。上の子供が小学生のころから、例年、ゴールデンウィークは、家族4名でコナンの映画に行っていたのですが、さすがに子供達は社会人と大学生ですので、忙しいようで、来てくれませんでした(というか先に友人と見たようです)。ついに夫婦二人でコナンの映画に行くことになりました。映画は面白かったのですが、これから夫婦二人の時間が長くなるのでしょうね。まだ、子供達は自宅から会社や大学に通っているのですが、それでも、にぎやかな子供達が遊びに行ってしまうと、家の中が急に静かになります。

このような状態も、過去から営々と繰り返されているのでしょうね。

www.conan-movie.jp

 

行ってきました

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昨日、今年のゴールデンウィークのメインイベントとして、妻と二人で、上野公園の東京文化会館大ホールのNHK交響楽団のコンサートに行ってきました。曲目は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調交響曲第5番ホ短調でした。

人生初のNHK交響楽団です。年に2~3回は、オーケストラを聴くチャンスはあったのですが、今までチャンスがありませんでした。

ヴァイオリンは大江馨さんという若い方です。指揮はロベルト・フォレス・ヴェセスという方です。

 

今回は、2曲とも聞いたことのある曲でしたし、楽しく聴けました。予定の30分前に行ったのですが、開場後すぐに行っていれば、大江さんのプレコンサートもあったようです。前もってチケットに書いておいてくれればと、少し残念でした。

 

さて、音楽会に行くといつも感じることですが、コンサートが終わってアンコールも終わり、明かりがともり、楽団員が帰りはじめ、聴衆も帰るころになると、それまでの音楽モードからパッと状況が変わり、音楽の記憶がさぁーと引いていきます。音楽はその時のもので記憶に残りません。

 

ここからは、職業病的な話です。

やはり記憶に残るのは①視覚(会場のデザイン、特に、壁面タイルの形がユニークだったことなど)、②意味(ゴールデンウィークに上野に行ったこと、大江さんのプレコンサートがあったが聴けなかったなど)、③聴覚という順番ではないでしょうか。音楽のプロならもっと聴覚的な記憶が残るのかもしれませんが。

これは、商標の類似の判断の、外観=視覚、称呼=聴覚、観念=意味の分析にも通じる話だと思いました。昔の商標類似判断は、図形商標を除き、比較のしやすい称呼を中心にやっていました(昔は簡単に比較できるのは称呼ぐらいだったのです。コンピュータを使ってもそのレベルでした。)が、今は、外観が重視されるようになってきているように思います。

 

外観については、以前の会社で意匠の仕事をしているときに、聞いた話があります。松下幸之助に若いデザイナーがテレビのプレゼンをしたとき、テレビは箱でしかなく、ブラウン管があり、チャンネルやスイッチがあるだけで、どれも同じデザインになってしまい、デザインする余地がないという趣旨の愚痴こぼしたようなのです。幸之助さんの反応は人間の顔を引き合いに出して、世界中には何十億の人がいるのに一人として同じ顔の人はいないという話をしたようです。与えられた条件のもとでも、いくらでも工夫の余地があるということですが、人間の外観を区別する力は、相当高いということでもあります。

商標の類似も、称呼中心主義から、外観・称呼・観念の総合判断に移りつつありますが、その中で外観の果たす役割は非常に高いのではないでしょうか。

国家公務員の女性比率

総合職は最高、全体では微減

2017年4月28日の日経夕刊と、翌29日の朝日新聞に、国家刻印の2017年度の採用者の数が出ています。

www.nikkei.com

www.asahi.com

二つの記事から、数字を挙げると次のようになります。

  • キャリア官僚となる国家公務員総合職の2017年度の採用者は678人
  • うち、女性は234人で、34.5%。この34.5%が過去最高で、1ポイント増加
  • 女性の多い官庁は、公正取引委員会の50%、農林水産省の46.2%、文部科学省の45.2%など
  • 反対に低いのは、国土交通省の21.3%
  • 国家公務員全体で見ると、男女全体の採用数は、7276人
  • うち、女性は2427人、33.4%で昨年より1.1ポイント減少

総合職の女性が増えたことについて、山本幸三行政改革担当大臣の「大変喜ばしい」というコメントがありました。

 

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なんということもないニュースですが、新聞に出ていた見出しが、日経と朝日新聞でだいぶ違いました。日経は、総合職に着目して過去最高を強調し、朝日新聞は全体を見て女性が微減(総合職は増加との小見出しあり)としていました。

まず、同じニュースですが、取り上げ方が違うのが面白いと思いました。政治家が強調したい点をずらしているのは、朝日新聞の反骨精神が発揮されたのでしょうか。それはそれで、意味があると思います。

内容面では、キャリアも一般職も、だいたい33~35%で、同じ程度の比率なんですね。キャリアでは、特に公正取引委員会で、女性公務員が多いようですが、公取の仕事はそれほど、女性が好む仕事なのでしょうか。

今も公務員になるには、法学部が多少は有利だと思います。30年前の話ですが、私の出身大学では、法学部に女性は20%もいませんでした。今は、調べると出身大学の法学部の女性比率は38%でした。法学部の女性比率があがると、それに応じて女性公務員の比率がリニアに増減すると考えると良いのかと思います。

そう考えると、全体の数字自体は自然増ですね。難しいキャリア官僚を目指すような大学でも、男女比は同じ傾向にあるのではないでしょうか。

そういう意味では、大学で学ぶ女性が順調に増えている。キャリアを目指すような大学でも傾向は同じ。というのが、このニュースの答えなんでしょうか。

特許の裁定制度

標準必須特許の裁定制度

2017年4月27日(金)の日経と朝日新聞に、政府の知的財産戦略本部が5月にまとめる知的財産推進計画2017の中で、標準必須特許のライセンス料について、裁定制度を導入という話がありました。2018年の通常国会に提出するとのことです。

ライセンス料の決定で交渉力の弱い中小企業でも使いやすい仕組みにするようです。

朝日新聞では、目的をパテント・トロール対策としています。また、標準化特許の裁定においては裁定費用を数万円程度にする見込みとし、裁定で決まった使用料には法的拘束力を持たせるとしています。

www.nikkei.com

www.asahi.com

 

コメント

正式な報告書を見ないと何とも言えないのですが、想像を交えてコメントします。

関連資料は、こちらでしょうか?

  • 平成29年4月19日付の「第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方について(検討会報告書概要)」のパワーポイント

この説明によると、今回は、2つの裁定制度になるようです。

  1. 標準必須特許
  2. 多様な紛争解決の手段としてのADR

まず、1.標準必須特許ですが、行政(特許庁)が適正なライセンス料を決定するADR(標準必須特許裁定)とあります。新聞にあった話題はこちらです。標準必須特許の話は、パテント・トロールとは必ずしも一致しないと思いますが。。。

 

もう一つの、2.多様な紛争解決の手段としてのADRには、次の説明がありました。

・ライセンス契約、特許権侵害紛争、中小企業が使いやすいADR

・民間ADR(日本知的財産仲裁センター)との関係を整理した上で、制度設計

この2つ目は、パテント・トロールと関係付けることも可能と思います。

 

どちらにせよ、「裁定」という制度は、強いものですのでどうするつもりなのでしょうか?

特許法の裁定というと、不使用特許の場合の裁定、自己の発明を実施するための裁定、公共の利益のための裁定の3種類あり、1980年代の日米通商交渉では、特に公共の利益のための裁定がやり玉に挙がったと思います。伝家の宝刀で、通常は行使しないものです。

今回の標準化の裁定は、この3類型以外のものだと思います。

ここからは、全くの想像ですが、特許の技術的範囲に入るかどうかを特許庁が確認する「判定」制度に、ADRの仲裁・調停をハイブリッドにしたものと想像しています。特許庁が、仲裁や裁定自体はすべきではないので、弁護士や弁理士に委託するしかないと思いました。

特許庁の判定も、日本知的財産仲裁センターADRも活用されていない制度ですので、活用されていない制度を組み合わせて、どうなるのかという疑問があります。

裁判やADRに費用がかかりすぎ、双方とも想定したほどは活用されていないので、役所が出て低廉な費用で納得いく判断をするということでしょうが、三権分立との関係や官業による民業圧迫とかの議論になるように思います。

企業は、標準化のために特許調査、開発、国内外への特許出願、標準化の交渉、特許交渉と膨大な時間と費用をかけています。

今回の1.の標準化の部分は、たぶん、特許交渉の一部のみの話になります。

最後の砦として、制度の存在自体が、特許庁の裁定があることで、企業間の話合いが前に進むなら、この制度は意味があると思います。

活用されるとすると、2.の紛争解決の方ですね。

ここ、10年、知財高裁ができ、知財を専門とする弁護士も増加していますが、判決の論理的整合性は取れてきていると思いますが、それ以上のものではないように見えます。

今回の話は、特許庁が、裁判所や企業の交渉の替わりをやるということと思います。一度、やってみたらよいと思いますが、仲裁・調停委員の名簿を、弁護士・弁理士に偏らせず、より広くビジネス経験者に振った方が良いように思いますが、いかがでしょうか。

 

nishiny.hatenablog.com

 

LVMHのオーナー家

ディオールを完全子会社化

2017年4月26日(水)の日経に記事からです。

LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)を支配するアルノー家のグループ会社が、クリスチャン・ディオール社を100%子会社にするというニュースです。従来から、74%あったものを、100%にするということした。

www.nikkei.com

LVMHのようなブランド複合体企業は、他にリシュモン、ケリングという会社があるようですが、これらの会社は、買収で大きくなっており、今回のケースもそのようですが、買収の過程で創業家の移行などで出資構成やガバナンスが複雑化しているケースもあり、その整理をして、総合的なブランド戦略を打ち出してブランド間の競争を勝ち抜くという趣旨とありました。

コメント

先日、スティープ・ジョブズの本を読んでいたとき、PIXARをDisneyに売却したとき、PIXARが会社の場所とか、意思決定とか、いろいろな面で、自由度を確保したというくだりがありました。

通常の企業では、資本の論理が一番強いですので、被買収会社は、買収する会社の会社のカラーに染められるのが通常です。しかし、さすがに、PIXARなどは、Disney映画にとって無くてはならないものであり、自由度を確保しつつ、売却できるなんて、スティーブ・ジョブズは凄いと思いました。

さて、ラグジュアリーブランドの場合は、チーフデザイナーやマーケティング担当などの人間模様がブランドを作るものであり、資本の論理だけではすまない世界だと思います。

下記の本は、2002年の本ですので、15年前のものですが、そのような人の重要性が理解できました。

このような人間模様まで含んで、LVMHの本社はコントロールしているのでしょうね。

ちなみに、高級ラグジュアリーブランドとは縁がないのですが、なぜか、大学生のときに着ていた一張羅のブルゾンが、日本橋駅の地下街で買ったディオール製品でした(友人からは只のジャンパーと言われていました)。

五輪マスコットの公募

5月中旬に要項発表

2017年4月25日(火)の日経に、2020年東京五輪パラリンピック組織委員会のマスコット選考検討会議が24日にあり、応募要項を5月中旬に発表することを決めたという記事がありました。

www.nikkei.com

tokyo2020.jp

  • プロアマを問わず広くデザインを募集する
  • 最終候補を3~4案に絞って公表
  • 子供の意見を反映させた上で決定

というプロセスのようです。

組織委員会は、マスコットの商標や意匠するなどして、法的に問題ないことを確認し、最終候補を公表する。

意匠登録のために、マスコット前後、上下、左右の6面図や、プロフィールを提出を求めるとありました。

 

コメント

前回のエンブレム問題があるので、慎重に判断されると思いますが、前回は、著作権が問題になったのであり、商標が問題ではありませんでした。

また、今回、マスコットですので、ノート、Tシャツ等の衣類、ぬいぐるみ、ストラップといった商品化権のグッズ類を想定してだと思いますが、意匠が出てきています。

しかし、たぶん、意匠で引っかかるようでは、著作権でダメだと思いますので、この著作権の調査をどうするかです。インターネットの画像検索が通常ですが、データベースがあるわけではないので、どうするつもりでしょうか。

公表してしまえば、公衆審査で、世界中の人が調べてくれると思いますが。

さて、意匠の6面図を出せというのは、ハードルが高いですね。一般の人には正面図はかけても、6面図は、書けないと思います。意匠という笠を着た非関税障壁のように思われてもしかたないのではと心配してしまいます。

正面図のみを募集して、良さそうなものは事務局で6面図を仕上げて、本人の確認を取るというのが、筋が良いのではないでしょうか。

特許庁 審査にAIを活用

商標の審査で、AIをどう使べきか

2017年4月24日(月)の日経の記事です。特許審査にAIを活用する方針という話です。

www.nikkei.com

特許の新規性の引用例の検索作業や、特許出願の分類作業、図形商標の画像認識での引用例の検索作業で、AIを活用するという方針のようです。AIに学習させるだけの業務資料があって、AIが答えを出せそうな20業務を対象とするとあります。この業務について、実証実験をして、費用対効果を見るようです。

一般からの問い合わせに対する回答案をAIに作成させる実験をして、人間とほぼ同水準の作業ができるということでした。

 

コメント

AIが法務や知財の業界で何ができるか、最近、話題になっているようです。法務では、ディスカバリーで活用する、特許では新規性の引用例の検索、商標では図形商標の検索ということでしょうか。

特許や商標の審査は、コンピュータが一番早く時期に入った業種の一つです。BRANDYの商標の称呼検索も早かったですし、ペーパーレスも早い時期からスタートしています。

この記事にあったように業務資料があり、また、一定の需要がしっかりあるということが必要なのだと思います。

私見ですが、商標で、AIを活用する時代が本当に来るなら、是非やってほしいのは、図形商標や文字商標の類似ではなく、「商品」・「役務」の類似判断です。

1992年の法改正のときに、実務家の要請で商品・役務の類似群コードが残ってしまったと聞いています。類似群コードは、実務家には非常に楽なのですが、これを墨守すると商標制度が発展しません。最近の裁判所がマークについてみるべき判決を出している(?)としても、商品・役務は、そもそも論点になっていないことが多く、そのため、審判にも裁判にもなりません。

商品・役務は、コンピュータがコード検索しかできず、全文検索もできない当時の状態のままです。日本分類は商品分類としては良くできていると思いますし、類似群は便利ですが、類似群をありたがっている精神構造にいる限りは、日本の商標制度はあまり良くならないと思います。

類似群コードの発想は、特許庁の業務の効率化をベースにしています。日本法の欠点は、周知商品/著名商標の保護が、マークの面でも商品・役務の面でも足りないことと、先使用権を軽視すること、商標や商品・役務の類否を特許庁の審査基準に頼り過ぎていることなどです。そのため、商標の世界の結論が、世間の常識とズレていることが多いように思います。

1992年の国際分類採用時に、類似群コードをやめていれば、業務上の多少の障害はあったとしても、このあたりの議論が大きく進み、いまごろは、世界に冠た立派な商標制度の国になっていたかもしれません(日本から、商品・役務の類似群コードを入れた中国が商標出願大国になっているのは不思議なのですが...)。

AIを入れる前提で、もう一度、商品・役務の類似をやり直してどうでしょうか。具体的には、審決例や裁判例を積み重ねて、それをAIに調べさせて、商品・役務の類否を判断するようにしてはどうでしょうか。

ちなみに、同時通訳、翻訳についてのAIの話はこちら:

nishiny.hatenablog.com