Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

外国商標を特許事務所に依頼する意味(2)

バックアップ

特許の年金管理と商標の更新管理は、一見、似ています。どちらもミスをしたら、おしまいです。企業内の話ですが、年金納付のミスがあったときなど、知財の部長さんが、事業部に謝りに行かれるのではないでしょうか。

しかし、年金と更新は、時間軸がだいぶ違います。特許なら20年というところが、商標なら50年となります。20年なら研究者や開発者はまだ会社にいますが、会社員でおれるのは22歳で入って60歳定年とすると、38年間ですので、商標の時間軸には合致しません。

少し前まで、企業の商標担当になると、新入社員から定年退職の60歳まで商標一筋という方が多くおられました。そして、20年に一度くらい、新入社員をとります。そうすると、経験が一子相伝のように伝わります。

しかし、今の時代、企業で同じ仕事を38年しろと言われることは皆無です。3年~5年程度でどんどん新しい業務にチャレンジせよと言われていると思います。

そうなると、過去の経験が引き継げません。過去の経験は、実は、外部の協力会社に引き継いでもらうのが一番手っ取り早いのです。そういう意味では、特許事務所、特に外国商標の得意な事務所には、しっかりした担当者がおりますので、その企業の外国商標で何が起こったのか、ファイル、資料、データ、経験という形で、引き継がれています。別部署から転勤してきた社員よりも、その会社の商標をよく知っているということが良くあり、企業の商標のバックアップ機能を果たしていると思います。

 

外国出願を念頭に、国内出願にも関与

最近、外国出願では、マドリッドプロトコル出願(マドプロ出願)をよく活用すると思います。マドプロ出願をやらせてもらって思ったのは、将来、外国出願すべきものは、国内の出願段階から関与させてもらいたいということです。

海外は、商品記載が難しいということは、以前、書きました。

グローバルネーミングは、国内と海外をセットで考えますので、グローバルネーミングになったものだけは、当初から一緒に検討させてもらえれば、ありがたいと思います。

海外で通用する指定商品の記載をベースに、その表現を日本語化して、国内の出願の指定商品に記載することが必要です。また、そうすることで、マドプロのメリットも最大化されます。

nishiny.hatenablog.com

 

nishiny.hatenablog.com

 

外国商標を特許事務所に依頼する意味(1)

卸売機能原理

国内出願は、自社でやっている会社が多いように思います。
最近は、弁理士も多くなり、企業勤務の人も多いですし、国内商標の出願件数が多い会社は、自社で商標担当を抱えていることも一般的です。

しかし、外国商標となると、大手の特許事務所や商標の得意な特許事務所に依頼されていることが多いと思います。

 

大学1年生(関西の大学ですので1回生)のときに、商学の授業があり、そのときに聞いた、メーカー支配と流通支配という講義の中で、「なぜ卸売りがあるのか?」という話があり、非常に記憶に残っています。

タイトルに記載した、「卸売り機能原理」です。これは、「取引数量最小化の原理」「不確実性プールの原理」に分かれるようなのですが、メーカーと小売りしかない状態と卸がある状態を比較して、卸があることで、取引先が少なくて済んだり、在庫が少なくすんだりするということになります。

www.jmrlsi.co.jp

 

外国商標は、世界200ヵ国地域となりますので、各社が全世界の200ヵ国の代理人(本当は、間接代理があるので、それほど多くはありません。半分程度で良いのではないでしょうか。)と取引関係を結ぶのは、本当に大変です。メーカーで、それをやっている某S社は、ある意味、尊敬に値します。

外国商標に強い特許事務所を使うことで、この卸売りのメリットと同様のメリットを受けることができます。

費用が廉価であることを謳っているインターネット事務所では、現実問題として、海外の案件は難しいでしょうし、大手の法律事務所でも商標のプロのいるところは別として、本格的に外国商標をやっていると胸を張って言えるところは少ないように思います。

卸売り機能原理に従って、理論上も外国商標は、経験豊富な特許事務所に出すべきとなります。

イーグルスの曲の商標権侵害?

ホテル・カリフォルニア

2017年5月4日(木)の日経に、人気ロックグループの「イーグルス」のヒット曲である「ホテル・カリフォルニア」のモデルであるかのように営業しているのは、商標権侵害であるとして、ホテルに損害賠償を求める訴えが、カリフォルニア地裁に提起されたという記事がありました。

www.nikkei.com

記事のポイントは、次のようなものです。

イーグルス側の主張は、

  • 館内でイーグルスの曲を流している
  • 売店で関連商品を販売した
  • 商標活動の停止やこれまで得た利益の支払いを求めている

という内容でした。訴訟について、より詳しくは下記を見てください。

news.yahoo.co.jp

 

コメント

私が気になったのは、曲にも商標権があるのか?という論点です。

昨年、商標審査基準の3条のところが改正されていますので、ちょっと見てみました。ちょっと省略をしています。

1)「書籍」「レコード」等の商品又は役務について、商標が、需要者に題号等として認識され、かつ、当該題号等が特定の内容を認識させるものと認められる場合には、商品等の内容を認識させるものとして、商品の「品質」又は役務の「質」を表示するものと判断する。

2)題号等として認識されるかは、需要者に題号等として広く認識されているかにより判断し、題号等が定の内容を認識させるかは、取引の実情を考慮して判断する。

例えば、次の①②の事情は、商品の「品質」又は役務の「質」を表示するものではないと判断する要素とする。

① 一定期間にわたり定期的に異なる内容の作品が制作されていること 
② 当該題号等に用いられる標章が、出所識別標識としても使用されていること

  1. 小説の題号や、曲のタイトル、映画のタイトルなどは、原則として、商品や役務の(品)質を示すとして、拒絶になります。これは、思想感情の創作的表現者である著作権者の作品は、商業ベースではなく小規模であり、また、商標調査や商標出願の手間をかけないためと解釈しています。
  2. しかし、単なる題号を超えるものがあり、その基準があります。    
  3. ①で、定期的に異なる内容の作品が制作されているというものがあります。例えば、寅さんの「男はつらいよ」シリーズでしょうか。このようにシリーズされるものは、商品や役務の(品)質を示すものとは考えず、商標登録が可能です。アメリカなどでもそのように運用していました。
  4. ②は当たり前のことを言っていますが、商品化権のようなことを想定しているのなら、今回のホテル・カリフォルニア事件に近いですね。

どちらにせよ、財産的価値が発生したものは、マネジメント次第で、単なる題号ではなくなり、商標登録を得ることも可能なものになることが明確になっています。

このあたり、昔の商標審査基準より、良くなっていると思います。

芸能人の氏名やグループ名を商標登録したり、楽曲タイトルを商標登録したり、本気でマネジメントをして、財産的価値を高めようとすると、やるべきことは沢山あります。

日本弁理士会の会長のお話し

弁理士に何ができるか?

2017年5月1日(月)の日経に、弁理士会会長の渡辺敬介さんの談話記事がありました。最近、国内(特許)出願件数が減少傾向になり、「知財の活力が低下している」という課題認識のもと、「知的財産を創造し、保護し、活用するサイクルの活性化に向けて弁理士になにができるのか、改めて見直すところから始めたい」との発言が載っていました。

その方策例として、次のようなものがあるとされています。

  • 中小企業向けに、全国でセミナーを開催。「有望な知財を持っていれば融資を受ける際の条件交渉に役立つといったことも知ってもらいたい」
  • 大企業向けには、企業の海外事業の拡大に応じて、「弁理士のスキルを高め、グローバル対応も急ぐ」

www.nikkei.com

 

コメント

まあ、今、云えることは、こういうことだと思います。

街の弁理士は、青息吐息なのですが、弁理士会は裕福です。私が合格した昭和63年ごろは3000人で運営していた弁理士会が、現在は11000人を超え、会費は多少は下がりましたが、予算が潤沢にあると聞きます。

予算がある、弁理士会の出す施策の優劣が、今後の弁理士全体の栄枯盛衰のキーになると思います。

 

1)中小企業向けの施策では、もっと、明細書の作成や出願ではなく、

など、突っ込んだ施策が望まれており、そのレベルを業務としてできるように弁理士が望まれていると思います。従来から、企業の知財部や、税理士が、多少の相談にのってやってきた分野ですが、未開の分野にどれだけ入れるかではないかと思います。

 

2)大企業向けでは、大企業の知財部員はだいたい海外に研修に行っています。弁理士会が、弁理士知財エリートを養成するのもありだと思います。

  • 基本は、特許事務所の費用で送るべきですが、お金は出せないと思いますが、経験のない特許事務所に、弁理士の海外研修のノウハウを伝授するとかできないものでしょうか?
  • 弁理士会のバックアップがあれば、現地で単に明細書を書いて、多少の講義を弁護士にしてもらう程度の研修ではなく、特許庁や裁判所の事務方の業務を見るとか、レベルの高い研修が可能になるように思います。
  • お金は出さなくても、雰囲気作りはできますので、海外研修を終えた人を集めて、発表会をしてもらうと士気があがるのではないでしょうか。

施策自体は色々とあると思います。

 

3)一番の課題は、知財サイクルにおいて一番重要なことは、権利の価値を高く評価することではないでしょうか(あえて適正ではなく「高く」だと思います)。

日本企業も、日本の裁判所も、基本保守的で、高額の損害賠償を望みません。その一方で、画期的な発明がないと嘆きます。

明らかに、二律背反ですので、画期的な発明を求めるなら、高額の対価を支払うべきだと思います。

もう知財の数では遠く中国に及びませんが、このままいけば、知財の質で中国やインドに負けるときも来るのではないかと危惧します。

タタとドコモの賠償問題 

1300億円の損害賠償金

2017年4月29日(土)の朝日新聞にインドの財閥のタタと、NTTドコモ間の提携解消をめぐる争いのが決着しそうだという記事がありました。記載内容は、次のようなものです。

www.asahi.com

  • ドコモとタタが提携していたが、3年前にインド撤退を決めた
  • 両社は、2017年2月に和解した
  • インド準備銀行(中央銀行)が賠償金の算出基準を問題視して支払いを認めなかった
  • タタは賠償金をデリー高裁に預託した
  • デリー高裁は4月28日にタタがドコモに損害賠償金約11億8千万ドル(約1300億円)の支払いを認める判決を出した
  • 今後、インド準備銀行が最高裁に上訴しなければドコモに支払われる

 

コメント

知財の問題ではないのですが、損害賠償金額が非常に高いので、凄いと思っていました。なんとか決着ができそうであり、ドコモ関係者も安心されたことと思います。

今回は、提携の契約に、撤退時の取扱いの条項があり、その契約通りに賠償金を請求したけれども、中央銀行に送金を止められたという話のようです。外貨が減りますので、先進国以外では外国送金が問題になることが多いのだと思います。

本件、はじめはタタは、インド金融当局が支払いを拒むという理由で、賠償金の支払いを拒否していたようですが、契約を無視して賠償金を支払わないということになると、タタの信用、ひいてはインドの信用にかかわる問題ですので、タタが支払いを決め、またインドのデリー高裁もそのように判断したようです。 

www.asahi.com

契約は別れるときのことを念頭に書くといいますが、まさしく契約がその役割を果たした事例です。ロンドン国際仲裁裁判所も活用したようですし、日本の企業法務の歴史に残る契約・仲裁・裁判だと思います。 

www.nttdocomo.co.jp

横浜元町

「Knot」の時計を買いに行きました

2017年4月26日の朝日新聞に、「Knot(ノット)」の時計が紹介されていたので、同社のホームページを見ていたら自分でも欲しくなり、昨日妻と、横浜元町のお店に買いに行きました。関内から中華街を通って元町に行きました。

knot-designs.com

朝日新聞によると、「Knot」は、3年前にできたブランドで、創業者の遠藤さんがシンガポールのアクセサリー店で、行列のできている店かがあり、そのお店はお客さんが自分でパーツを選んで、オリジナルのアクセサリーを作る店だったのをヒントに作った店ということです。値段も手ごろで、若い人に人気があるようです。

また、ネット通販から始めるため、資金集めはクラウドファンディングでスタートし、現在は国内4か所と台北に店舗があるまでになっています。

Made in Japanにこだわっており、シンガポール、タイ、ベトナム、ニューヨークに出店を予定しているとのことです。

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買った時計です。時計本体が19,000円+バンドが4,000円(税別)でした。バンドの着せ替え非常に簡単になっているのがポイントのようです。シルバーのメタルのバンドも欲しかったのですが、売り切れていたので、自宅に戻ってネットで注文しました。

 

横浜元町

久しぶりに、元町に行きました。10年ぶりぐらいです。たまたま入った汐汲坂ガーデンという店で昼食をとりました。中年夫婦が、若いカップルの隣というのは、なんとなく恥ずかしいですね。

横浜元町 汐汲坂ガーデン - 汐汲坂ガーデン

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そのあと、Knotで時計を買い、MOTHERHOUSEでカバンを見せてもらいました(残念ながら買っていません)。

元町商店街に、犬を連れてきている人が多く、ペットショップやペット用品のお店もありました。下の写真は、今、横浜元町で一番有名なお店と思われる「スタージュエリー」の脇になる「PET BAR(ペット用水飲み場)」です。

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 汐汲坂ガーデンでも、テラス席はペット同伴の人が多かったように思います。横浜元町は、ペットと散歩できる商店街を目指しているのですね。

元町は、若いカップルも多いですが、熟年夫婦も多く、女性仲間で来ている人もいて、面白い街だと思いました。喧噪の中華街から小さな川を渡るだけで大人の街です。今度は子供も一緒に行きたいと思います。

時差ビズ?

「COOLBIZ」にちなんで

2017年4月29日(土)の日経に、東京都が首都圏の通勤ラッシュの緩和を目指して、7月11日~25日に、官民あげて時差出勤を実施するときの、ネーミングが紹介されていました。

ネーミングは「時差ビズ」です。小池百合子知事が12年前に「COOLBIZ(クールビズ)」を成功させたときの旗振り役だったこともあり、今回も「〇〇BIZ」としたようです。時差出勤、テレワークなども企業に呼び掛けるようです。

また、2017年5月1日の朝日新聞の夕刊に、今年のクールビズがスタートしたというニュースがありました。2005年(愛・地球博のとき)に始まり今年で13年目ということでした。旗振り役の環境省の男女の職員の写真が載っており、アロハシャツのような花柄のシャツをきています。

 

コメント

「チームマイナス6%」はまだやっているのか思い出せないぐらいですが、クールビズは毎年この季節になると繰り返しニュースでも報道させれるので思い出します。

政府や役所が主催するキャンペーンとしては他に、「&TOKYO」や「プレミアムフライデー」などあります。「&TOKYO」は舛添知事と共にどこかに行ってしまいました。「プレミアムフライデー」はこれからですね。

今日のニュースの「時差ビズ」は、まだ、実験段階のようですし、東京都の話ですので、地域的には限られた範囲の話です。

「COOLBIZ」を調べていて、環境省のホームページをみていると、上位概念として「COOL CHOICE」というものがあり、その下に「COOLBIZ」と「WARMBIZ」があるという構成のようです。その他にも「ECODRIVE」や「SMARTMOVE」というものがあるようです。「SMARTMOVE」は今回の時差ビズとは違って、自動車のカーシェアリングのようです。地域性が出ますね。

ondankataisaku.env.go.jp

ondankataisaku.env.go.jp

また、「COOLBIZ」も「時差ビズ」も商標出願はさせていないようでした。そもそも、国民運動で、社会運動であり、商標出願不要ということだと思いますが、広告代理店が入り、ほぼマーケティングの手法で運営されているものであり、ライセンス的なロゴ使用申請もさせていますので、商標に近い運用が必要で、マネジメントがなされていると思います。

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