Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

楽天トラベル

ラブホテル掲載

5月4日の朝日新聞の記事にあったニュースです。

楽天トラベルが6月下旬にも、ラブホテルの情報掲載を始めるということです。

訪日外国人客の増加で、都市部を中心にホテルが不足していることに対応するため、サイト内に専用コーナーをつくるって対応するとのことです。

東京や大阪では、外国人客の増加で、ホテル不足が深刻化しています。ビジネス客らに客層を広げる目論見のようです。

米エクスペディアなど外資系の旅行予約サイトはすでに掲載して、訪日客が多く利用しているようです。

digital.asahi.com

 

コメント

このニュース、案外重要なニュースだと思います。記事にもあるように、インバウンドや2020年東京オリンピックパラリンピック対策で、宿泊施設の強化が必要です。

しかし、シティホテルやビジネスホテルを建てすぎると、2020年後としてはホテル過剰で倒産するホテルも出てきます。できるだけ既存施設の活用が望ましいのですが、その場合の対策として、Airbnbのような民泊と、今回のラブホテルの転用があります。

今、賃貸住宅はあまっているので、不動産業界は、民泊を推進しています。でも、相続税の関係で一部では賃貸住宅バブルになっており、こちらばかり強化するのはよくないと思われます。また、民泊自体、旅館業の経営を圧迫する可能性が高いので、ホテル業界は反対します。ダークホースは、ラブホテルの活用(転用)ということだと思います。通常のホテルに変えるなら融資が出るという記事も別に見つけました。 

そもそも、法律の谷間のような問題もあり、旅館業法と風俗営業法の双方の指導を受けているようです。そして風俗営業法の申請をしていない隠れラブホテルは正規のものの数倍あるようです。

 

話は変わりますが、東京で驚いたことの一つに、子供達も通るメインの道にラブホテルがあることがあります。例えば、池袋駅からサンシャインに行くまでの人通りの多いメインの道にありました。驚きました。

儲かるならなんでもする企業が多いのかもしれませんが、利用者も人目をはばからないのかと不思議に思いました。あまり奥ゆかしくないですね。

大阪でも、国道など道路沿いには良く存在するのですが車利用ですのでプライバシーの問題は少ないとして、繁華街の人通りの多いところには、なかったようにと思います。隠れ系で単なるホテルの免許しかないのかもしれませんし、ホテルの方が先にあって、街が後から急激に大きくなったのかもしれませんが。

どちらにせよ、都市計画からして望ましくはないように思いますが、どうでしょうか?あるいは地元の人は気にしないのかも。すでに風景の一部として溶け込んでいるのかもしれません。

 

さて、本題の楽天ブランドへの影響ですが、まず問題ないと思います。TSUTAYAの例でもあきらかです。多少のマイナスがあっても、上手くコントロールされるでしょうし、(代官山のTSUTAYA書店のような)ブランド価値を引っ張るものがあれば、全体的にはプラスに向くと思います。

読みました

最後の秘境 東京藝大

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

 

横浜の図書館で借りて読みました。非常に読みやすい本でした。藝大の雰囲気が良くかわりました。藝大には、美校と音校が道を挟んで左右対称にあるのですね。

作者の二宮さんの奥さんが東京藝大の美術の学生さんということで、作者が東京藝大に興味を持ち、奥さんのツテででしょうか、多くの藝大生に取材され、まとめたノンフィクションです。

入るのは非常に難しいが、成功する人は ほんの一握りで、行方不明者も多いということです。

特に音楽の方ですが、東京藝大に入るには、お金がかかるのはもとより、小さなころからの親の教育も必要ですので、家族を巻き込んでの大仕事なのがわかりました。

東京藝大からすると、本当に成功する人が、数年に1名でればよく、後の学生は成功する人のために存在する?という話もありました。

企業に就職する人は、落ちこぼれ?というくだりは、いかにも、東京藝大らしいですね。

東京藝大生は、在学期間、やりたいことをやっているという、自由闊達な雰囲気が伝わってきました。

 

コメント

以前の会社では、意匠の仕事をしていたこともありますし、また、ブランドでもインダストリアルデザインの人とのやりとりや、宣伝ではグラフィック系のクリエイターの人とのやりとりもあったので、デザイナーという職業の人は、ずっと割と身近にいました。

その私の知っているデザイナーという人々と、東京藝大の芸術家の卵とは、目指す方向がちょっと違うようです。

国公立のデザインを学べる学校が京都工繊大や千葉大など非常に少なく、私立の大学が割と多いという話を聞いたことがあります私の場合、何人かのデザイン系と言われる人を知っていますが、東京藝大卒は、たった一人しかしりません。

私の知る東京藝大卒の彼は、ごく普通の常識人ですので、この本の反対解釈からすると、東京藝大の中では異色の人材だったんですしょうか?

 

だいぶ前に聞いた話ですが、デザイン能力だけを考えれば、専門学校卒の方に才能ある人がいる(ファッション系やWeb系などでしょうか)が、企業では人事の仕組み上、高い処遇ができないので、大卒を取っているという話も聞いたことがあります。

最近、上野には良く行くようになったのですが、東京藝大にまで、足を延ばしたことはなかったのですが、今度いくときは、覗いてみようと思います。

外国商標を特許事務所に依頼する意味(4)

ライバル

では、外国商標で特許事務所のライバルになっているのは、どのようなところでしょうか?

企業形態で、外国商標出願をやっている会社が幾つかあります。これらの会社は、スピード、IT化などを武器にしています。

国内商標出願の代理は、弁理士法により守られていますので、これらの企業は参入できません。しかし、外国商標では、現地に弁護士・弁理士がいますので、企業はその中継ぎであれば良いということで、特に、弁護士・弁理士は不要となります。

多少、いろんな噂はありますが、費用については、多少の差はあっても、大差はないと思います。

企業が、これらの会社を選択しているのは、組織力にモノをいわせて、スピード、IT化、大量の事務職能力などが魅力なのだと思います。

 

では、特許事務所の良いところは?

まだ、この業界に入って間がないので、私の知らないメリットもあると思いますが、特許事務所の良いところはどんなところでしょうか?

  • 弁理士がいるので、専門家集団といえること(事務所によると思いますが)。
  • 調査したところで出願することで、また、権利化したところで更新することで、現地の弁護士・弁理士がインナーになってくれる。そのため、異議申立を積極的に支援してくれる、相談に親身に乗ってくれるなど、現地代理人とのつながりができること。
  • 前述の企業では、だいたい、コストのために、調査する海外事務所、出願する海外事務所、更新する海外事務所、事件関係の海外事務所などで切り分けますので、どうしても人的なつながりが薄くなります。現地弁護士・弁理士も、日本のA社という大企業の現地代理人をしていることに誇りを持っています。昔は、特許事務所経由ではあるのですが、現地代理人が、会社までよく表敬訪問に来てくれました。
  • 事務処理能力の有無は、特許事務所によります(件数が一定レベルまでなら、紙ベースでも十分できますし、反対に紙ベースの方が、先生のチェックがしやすくためでしょうか、手触り感のある仕事になるためでしょうか、高いレベルが維持できるように思いました。しかし、件数が一定レベルを超えたり、担当者の数が増えたりすると、IT化が必要になると思います。できれば、商標専門に設計されたシステムを使いたいところです)。

外国商標を特許事務所に依頼する意味(3)

米国出願強化とマドプロ活用

ちょっと、トリビアのような話ですが、特許と全く異なり、企業では、ハウスマークを除いて、アメリカへの商標出願が積極的ではないと感じています。

理由は、いろいろあります。

  1. アメリカにコモンローの権利があり、これで十分であるので、調査だけやって、出願しなくて良いという理解が広範囲に流布しているとか(使用意思に基づく出願とか、マドリッドプロトコルの出願とかの理解が日本人全体に広がっていません。海外営業担当者のレベルは、30年前の古い知識で止まっています。)、
  2. 付着使用している使用証拠がないと権利にならないからとか(これも実際はWebページやカタログが使えるときが案外多いことがほとんど知られていません。)、
  3. 昔は委任状のサインが代表取締役しかだめで、そのサインをもらうのが大変だったからとか(今は、代表取締役から知財部長等への委任が多いと思いますし、そもそもアメリカも電子出願になっています。)、
  4. 米国の弁護士が商標や模倣品対策の仕事を好む(したがる)からなどです。

しかし、ここは、折角のマドプロの利便性を最大限に活用して、アメリカ出願を増やすように努力すべきではないかと思います。マドプロのアメリカは、本国出願・登録ベースになりますので、本国登録証の提出や、包含証明など、面倒な作業があり、たまにしかやらない企業でやると、費用対効果がマイナスになると思います。

企業の知財部と特許事務所の双方に勤務した人間だから言えるのかもしれませんが、企業はネーミングの発掘とか、予算確保とか、方針決定とか、やるべきことがあり、アウトソーシングできるところは、特許事務所に任せた方が良いと思います。

この意味でも、外国商標の得意な特許事務所に有力です。

 

ちょっと解説/Dual base

最近、関与したアメリカのマドプロの出願は、だいたいDual Baseです。Dualは、本国出願ベースと使用意思に基く出願(intent to use)の双方の主張を含むものです。

原理的には、本国「出願」ベースでも、そのうちに、本国が「登録」になるので、ベースが、本国登録ベースに変化するというものです。そういう意味で、アメリカのマドプロは、実は本国登録(テルケルマーク)の考え方が基礎となっています。

デュアルですので、「使用意思に基づく主張」もしておくことで、日本の出願が登録にならなくても、意味がある出願となるメリットがあります。

また、マドプロで本国登録ベースのときは、登録後5年~6年まで、使用証拠の提出が不要というメリットがあります。

ただし、日本の登録証を出さないといけないのと、包含証明をしないといけないことが多いので、結構、面倒ではあります。

この制度は、海外営業の人達に是非、知って欲しいと思いました。

外国商標を特許事務所に依頼する意味(2)

バックアップ

特許の年金管理と商標の更新管理は、一見、似ています。どちらもミスをしたら、おしまいです。企業内の話ですが、年金納付のミスがあったときなど、知財の部長さんが、事業部に謝りに行かれるのではないでしょうか。

しかし、年金と更新は、時間軸がだいぶ違います。特許なら20年というところが、商標なら50年となります。20年なら研究者や開発者はまだ会社にいますが、会社員でおれるのは22歳で入って60歳定年とすると、38年間ですので、商標の時間軸には合致しません。

少し前まで、企業の商標担当になると、新入社員から定年退職の60歳まで商標一筋という方が多くおられました。そして、20年に一度くらい、新入社員をとります。そうすると、経験が一子相伝のように伝わります。

しかし、今の時代、企業で同じ仕事を38年しろと言われることは皆無です。3年~5年程度でどんどん新しい業務にチャレンジせよと言われていると思います。

そうなると、過去の経験が引き継げません。過去の経験は、実は、外部の協力会社に引き継いでもらうのが一番手っ取り早いのです。そういう意味では、特許事務所、特に外国商標の得意な事務所には、しっかりした担当者がおりますので、その企業の外国商標で何が起こったのか、ファイル、資料、データ、経験という形で、引き継がれています。別部署から転勤してきた社員よりも、その会社の商標をよく知っているということが良くあり、企業の商標のバックアップ機能を果たしていると思います。

 

外国出願を念頭に、国内出願にも関与

最近、外国出願では、マドリッドプロトコル出願(マドプロ出願)をよく活用すると思います。マドプロ出願をやらせてもらって思ったのは、将来、外国出願すべきものは、国内の出願段階から関与させてもらいたいということです。

海外は、商品記載が難しいということは、以前、書きました。

グローバルネーミングは、国内と海外をセットで考えますので、グローバルネーミングになったものだけは、当初から一緒に検討させてもらえれば、ありがたいと思います。

海外で通用する指定商品の記載をベースに、その表現を日本語化して、国内の出願の指定商品に記載することが必要です。また、そうすることで、マドプロのメリットも最大化されます。

nishiny.hatenablog.com

 

nishiny.hatenablog.com

 

外国商標を特許事務所に依頼する意味(1)

卸売機能原理

国内出願は、自社でやっている会社が多いように思います。
最近は、弁理士も多くなり、企業勤務の人も多いですし、国内商標の出願件数が多い会社は、自社で商標担当を抱えていることも一般的です。

しかし、外国商標となると、大手の特許事務所や商標の得意な特許事務所に依頼されていることが多いと思います。

 

大学1年生(関西の大学ですので1回生)のときに、商学の授業があり、そのときに聞いた、メーカー支配と流通支配という講義の中で、「なぜ卸売りがあるのか?」という話があり、非常に記憶に残っています。

タイトルに記載した、「卸売り機能原理」です。これは、「取引数量最小化の原理」「不確実性プールの原理」に分かれるようなのですが、メーカーと小売りしかない状態と卸がある状態を比較して、卸があることで、取引先が少なくて済んだり、在庫が少なくすんだりするということになります。

www.jmrlsi.co.jp

 

外国商標は、世界200ヵ国地域となりますので、各社が全世界の200ヵ国の代理人(本当は、間接代理があるので、それほど多くはありません。半分程度で良いのではないでしょうか。)と取引関係を結ぶのは、本当に大変です。メーカーで、それをやっている某S社は、ある意味、尊敬に値します。

外国商標に強い特許事務所を使うことで、この卸売りのメリットと同様のメリットを受けることができます。

費用が廉価であることを謳っているインターネット事務所では、現実問題として、海外の案件は難しいでしょうし、大手の法律事務所でも商標のプロのいるところは別として、本格的に外国商標をやっていると胸を張って言えるところは少ないように思います。

卸売り機能原理に従って、理論上も外国商標は、経験豊富な特許事務所に出すべきとなります。

イーグルスの曲の商標権侵害?

ホテル・カリフォルニア

2017年5月4日(木)の日経に、人気ロックグループの「イーグルス」のヒット曲である「ホテル・カリフォルニア」のモデルであるかのように営業しているのは、商標権侵害であるとして、ホテルに損害賠償を求める訴えが、カリフォルニア地裁に提起されたという記事がありました。

www.nikkei.com

記事のポイントは、次のようなものです。

イーグルス側の主張は、

  • 館内でイーグルスの曲を流している
  • 売店で関連商品を販売した
  • 商標活動の停止やこれまで得た利益の支払いを求めている

という内容でした。訴訟について、より詳しくは下記を見てください。

news.yahoo.co.jp

 

コメント

私が気になったのは、曲にも商標権があるのか?という論点です。

昨年、商標審査基準の3条のところが改正されていますので、ちょっと見てみました。ちょっと省略をしています。

1)「書籍」「レコード」等の商品又は役務について、商標が、需要者に題号等として認識され、かつ、当該題号等が特定の内容を認識させるものと認められる場合には、商品等の内容を認識させるものとして、商品の「品質」又は役務の「質」を表示するものと判断する。

2)題号等として認識されるかは、需要者に題号等として広く認識されているかにより判断し、題号等が定の内容を認識させるかは、取引の実情を考慮して判断する。

例えば、次の①②の事情は、商品の「品質」又は役務の「質」を表示するものではないと判断する要素とする。

① 一定期間にわたり定期的に異なる内容の作品が制作されていること 
② 当該題号等に用いられる標章が、出所識別標識としても使用されていること

  1. 小説の題号や、曲のタイトル、映画のタイトルなどは、原則として、商品や役務の(品)質を示すとして、拒絶になります。これは、思想感情の創作的表現者である著作権者の作品は、商業ベースではなく小規模であり、また、商標調査や商標出願の手間をかけないためと解釈しています。
  2. しかし、単なる題号を超えるものがあり、その基準があります。    
  3. ①で、定期的に異なる内容の作品が制作されているというものがあります。例えば、寅さんの「男はつらいよ」シリーズでしょうか。このようにシリーズされるものは、商品や役務の(品)質を示すものとは考えず、商標登録が可能です。アメリカなどでもそのように運用していました。
  4. ②は当たり前のことを言っていますが、商品化権のようなことを想定しているのなら、今回のホテル・カリフォルニア事件に近いですね。

どちらにせよ、財産的価値が発生したものは、マネジメント次第で、単なる題号ではなくなり、商標登録を得ることも可能なものになることが明確になっています。

このあたり、昔の商標審査基準より、良くなっていると思います。

芸能人の氏名やグループ名を商標登録したり、楽曲タイトルを商標登録したり、本気でマネジメントをして、財産的価値を高めようとすると、やるべきことは沢山あります。