Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

富士通携帯電話事業

ポラリス・キャピタル・グループに売却

2018年1月27日の朝日新聞に、富士通の携帯電話事業の売却先が国内ファンドになるという話がでています。

www.asahi.com

内容としては、

  • 携帯電話事業の売却先は国内の投資ファンドポラリス・キャピタル・グループ
  • 売却額は400億~500億円
  • 「アローズ」のブランド名は維持される
  • らくらくホン」の販売も継続
  • 100%出資子会社、富士通コネクテッドテクノロジーズの株式の過半を売るが、一部は富士通が持ち続けて国内の工場や雇用を維持
  • 携帯電話の販売台数は2011年度は約800万台
  • アップルやサムスン電子などに押されて2016年度には320万台に減少

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ファンドが買収したとありますので、会社を健全にして再上場するか、他メーカーなど良い売却先が見つかれば売却するかです。

この種のファンドではKKRが良く出てきますが、今回は、国内のポラリス・キャピタル・グループということです。ポラリスのWebサイトを見てみると、旧興銀出身者が中心におられるようです。

www.polaris-cg.com

どんな会社に出資しているかというと、技術系の会社にも出資しているようですが、あまり知った会社はなく、知っているのは、唯一、キューサイ(青汁?)ぐらいでした。

 

現時点、日本の携帯電話メーカーにあまり希望はないように思います。結局、ドコモやソフトバンクなどのキャリアとiPhoneのアップルだけが儲けるという歪な環境になってしまいました。

私も携帯電話のメーカーに1996年秋~2000年春ごろまで、3年半いたのですが、当時は、非常に調子が良かったので、今から考えると夢のような感じです。

 

当時は、生みの親より育ての親と言って、私の所属していた会社は、取引先のキャリアに仕えたのですが、キャリアは結局、面倒は見てくれませんでした。キャリアは、法律に守られた権益の中にいますので、生きることができますが(キャリアでも競争もあり、撤退もありますが)、キャリアに見捨てられると日本の携帯メーカーは無残な感じになりました。

 

これだけiPhoneが使われているのは日本だけだそうですが、ソフトバンクに始まり、ドコモが最後に参入した、iPhoneを優先した販売政策の結果です。

 

日本の携帯メーカーも、はじめから、韓国企業や中国企業のように、アンドロイドで、世界を相手にすべきだったのでしょうが、キャリアだのみだったので、駄目になりました。携帯からスマホに置き換わるタイミングで、ビジネスモデルが大きく変わり、ノキアさえ駄目になったので、日本企業のやり方では、高コスト体質過ぎた面もあります。

 

私のスマホも、パナソニックから、シャープとなり、今は富士通を使っているのですが、そろそろ買い替え時期です。しかし、ドコモショップに行っても、iPhoneの展示ばかりで、面白くありません。2月発売の二つ折れの携帯は久しぶりにいいなと思いますが、中国のZTE製のようです。

www.nttdocomo.co.jp

 

トランプ大統領のTPP残留示唆

インタビュアーもびっくり

トランプ大統領が、ダボス会議出席のためスイス滞在中に行われた、CNBCとのインタビューが反響を呼んでいます。

www.asahi.com

2018年1月26日の朝日新聞夕刊の記事によると、トランプ氏は、

「私は二国間(交渉)が好きだ。問題があればやめることができるからだ。TPPのように多くの国と一緒なら、同じ選択肢がない」としながらも、「大きなニュースをあげよう」としたうえで、「もし以前よりずっといい協定が得られれば、私はTPPをやる」と述べ、再交渉に意欲を示した。

 とあります。

 

CNBCのWebサイトで、トランプ大統領のインタビューが見れます。インタビュアーも非常に驚いたようで、二の句が出てこない感じです(トランプ大統領が、まくし立てているので、割り込めないのかもしれませんが)。

www.cnbc.com

この中で、トランプ大統領は、NAFTAのことを批判しています。NAFTAの交渉が思うようにならないような感じです。NAFTAとTPPの関係はよくわからないですが、いっそ、TPPを米国に有利に改訂して、NAFTAを破棄してTPPに参加するということなのでしょうか?

 

安倍総理は、11ヵ国でまとめたものなので、今からの修正は難しいと考えているようです。

headlines.yahoo.co.jp

 

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トランプ大統領は、目的に合致していれば、自分が言ったことをひっくり返すことも平気な人なのだと改めて思いました。

上の人になればなるほど、その言葉は重みをもち、一旦言ったことは取消すことはできないといいますが、トランプ大統領の場合、その考え方は当てはまらないようです。

反対に、君子豹変を実践しているようです。

 

彼の思いはなんとなくわかります。しかし、その言葉をそのまま信じる訳にはいきません。これぐらいではないと競争の激しいビジネスの世界で生き残れないのかもしれません。

 

一方、対照的なのは、英国のメイ首相です。EU離脱国民投票について、再投票をすべきという主張が、離脱推進派と残留派の双方から要請されているようですが、あくまで国民投票の路線を進めるようです。メイ首相は、2016年の国民投票に参加した英国民への裏切りになるとして、国民投票の再実施には否定的とあります。

www.nikkei.com

トランプ大統領と比較して、こちらは、杓子定規すぎるような感じもします。

もともと、メイ首相は、EU残留派だったと記憶しているのですが、国民投票の結果には従うという考え方のようです。

あるいは、今国民投票しても、どちらにしても国が二分するだけなので、国民の意見が明確にどちらかになるのを、じっと待っているのかもしれません。

 

米国のTPPやNAFTAの問題も、英国のEU離脱も、どんな形で決着するのか分かりませんが、リーダーの個性が出ていると思いました。

殺虫剤の名称

虫エア用品

2018年1月26日の朝日新聞に、アース製薬が、殺虫剤のことを「虫ケア用品」と呼ぶという話の紹介がありました。

www.asahi.com

記事によると、

  • 市場拡大を狙い、殺虫剤業界は、ソフト路線化を進めている
  • アース製薬は、殺虫剤はマイナスイメージがあるとして、虫ケア用品とする
  • 虫からケアする(守る)という意味
  • すでにホームページは変更。ポップなどが3月ごろから変わる予定
  • 小売店や同業他社にも賛同を呼びかけている
  • 調査では、殺虫剤という呼び名に「人体に有害なイメージを持つ」人が34%、「使うのが怖い」という人が17%
  • 小売店からも「殺」という字を店内に掲げたくないという声

確かに、アース製薬のWebサイトでは、「虫ケア用品(殺虫剤)」となっていました。

www.earth-chem.co.jp

 

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ITメディアによると、アース製薬は、次のように説明しています。

www.itmedia.co.jp

他にも呼称の候補はあったが、『口臭予防』を『ブレスケア』と言い換えるのと同様、ネガティブな事象をポジティブに言い換えるための手法として“ケア”という表現にした」と説明。

「『虫ケア商品』というネーミングには、『虫を殺すことよりも、顧客を守ることを重視する』という当社の姿勢も反映した。顧客の殺虫剤に対する抵抗感を軽減し、ジカ熱やデング熱など、虫を媒介とした感染症にかかる人を減らしたい」と話している。

 

化学調味料」という言葉が、自然由来でないイメージがあり、売上にも悪影響があるという理由で、「うま味調味料」と変えたというのは理解できるのですが、殺虫剤がNGワードというのは、行き過ぎのような気がします。

 

小売店が、店内に「殺」という字を掲げたくないということについては、安全や買い物をする楽しさを売り物にするお店には似合わない漢字であるということは、なんとなく理解はできます。

しかし、殺虫剤のことを虫ケア用品というのは苦しいと思います。

 

ヘルスケアとか、ヘアケアとか、ケアという言葉は、その言葉の前に記載しているものを大事に取り扱うということですので、虫を大切にする=ペットの昆虫用の栄養剤のようなものか?と思っていしまいます。人間を虫からケアするなら、別の言葉がよさそうです。

(除虫剤あたりが候補と思います)

 

また、業界をあげての、統一名称でないといけないように思います。業界統一のためには、業界で知恵を出し合って、新しい家庭用殺虫剤の普通名称を考えるべきではないかと思います。

フマキラー金鳥などの他社が殺虫剤の言葉を使い、アース製薬だけが虫ケア用品となるとすると、強い効き目の商品を望む消費者も多そうですので、フマキラー金鳥に流れる可能性があります。

 

ちなみに、下記のサイトによると、フマキラーは、最近、強烈な商標を出願しているようです。「ヤブ蚊キラー」「ハチアブキラー」「ムカデキラー」「ボウフラキラー」「コバエキラー」「ケムシキラー」「ゴキブリキラー」「害虫キラー」を出願しているとのことです。フマキラーという企業ブランド、ハウスマークを守るための防衛出願と思いますが、キラーの前の語が虫を具体的に記載している点で、強烈な商標となっています。

 

もしフマキラーが、虫ケア用品と名乗っても、商標が強い効き目のありそうなので、殺虫剤というのと、さして変わらないようなものになっているように思います。 

 

虫ケア用品という名称は、それほど、長持ちしないような気がします。

 

 

 

AMAZON GO

話題の無人コンビニが開業2018年の1月23日の日経夕刊に、以前からYouTubeのプロモーションビデオで話題になっていた、アマゾンの無人コンビニがついに開業したいう話題が出ています。

www.nikkei.com

  • アマゾンは、シアトルで、レジのないコンビニエンスストアAMAZON GO(アマゾン・ゴー)」を一般向けに開業
  • 100人並んでも待ち時間は10~15分
  • スマホのアプリに表示されるQRコードをゲートにかざして入場
  • あとは、商品を棚から取って店の外に持ち出すだけ
  • 会計は、自動的スマホ決済
  • 店の天井に、カメラが確認できただけで130台以上設置
  • 誰が何を取ったかを追跡し続し、 商品を棚に戻せば、それも反映する
  • 日本のコンビニとほぼ同じ約170平方メートル

ということです。

上記の日経電子版では、日経の記者が、体験レポートの動画をアップしています。

 

アマゾンのWebサイトには、このコンビニを紹介するイメージ動画があります。

www.amazon.com

アマゾンの説明によると、AMAZON GOは、一言でいうとチェックアウトが不要なお店ということです。言い換えると、レジにならぶ必要がないということになります。no lines and no checkoutです。Just Walk Out Shoppingという言葉が出ています。

技術的には、自動運転や、コンピュータビジョン(ロボットの目)、センサー、ディープラーニングの技術を使っているとあります。 

営業時間は、7AM-9PMで、月ー金のようです。

 

コメント

この無人コンビニは、以前から話題になっていたものです。ポイントは、カメラなのですね。過誤請求を避けないといけないので、130台以上という多くのカメラで撮影しているのだと思います。請求のために処理すべき情報量≒後々の証拠として蓄積しておくべき情報量も半端ではないですね。

 

このコンビニが普及すれば、万引きが無くなる可能性もあると思いました。入るときに、スマホをもっている段階で、本人確認ができています(スマホを盗まれたときは、どうしようもないですが)。それにこのカメラの数です。日本のコンビニの監視カメラとは全く違うボリュームです。

また、アマゾンとしては、スマホ決済ですので、レジも不要で人件費は少なくできそうです。

 

アマゾンが、次に狙っているのは生鮮食料品事業で、そのためにホールフーズを買収していますので、 本気でリアルな店舗を展開するのだと思います。AMAZON GOが日本に上陸してくれば、日本のコンビニも大変だなと思いました。特許も取られているのではないでしょうか。

 

カメラ設置と情報分析、蓄積にコストはかかりますが、上述のレジの人件費や、万引きの引き当てが不要になりますので、コストメリットがあるかもしれません。

 

基本的に、もはやコンビニやスーパーでは単純な万引きができなくなると思いますので、この社会に与えるインパクトは相当強いものがあると思います。スーパーマーケットの悪いところは、地元の商店をつぶしたことと、もう一つ、万引きを誘発してしまったことだと思います。AMAZON GOの技術で万引きが無くなれば、だいぶ社会が変わるのではないかと思います。社会学の先生で、研究されている方がいるのではないでしょうか。

 

一方、怖いのは、プライバシー侵害です。通常この種のビッグデータ系のシステムでは、プライバシー侵害にならないように、顔のデータを消すとかいう発想に行きますが、それでは棚に戻したときの本人確認ができません。たぶん、自動でデータ処理をして基本的にはAMAZONの社員も記録している画像を見ることができないとか、クリーンルーム的なものを導入しているとか、第三者機関を入れているとか、何かの方法でプライバシー侵害の問題を、別途、回避しているように思います。ここは、法律と技術が融合した議論がありそうなところです。

 

あと、ネーミングは、AMAZON GOなのですね。Pokemon GOとか、Thunderbirds Are Go! とか、GOは流行りの言葉のようです。

 

今年の5月のINTAの総会は、シアトルであるようです。シアトルには、スタバの1号店とか、AMAZON GOとか、商標やブランドの方には見るべきものが多そうです。 

大阪メトロ

海外の人の分かり易さから

2018年1月26日の朝日新聞に、大阪地下鉄の愛称が、Osaka Metroに決まったというニュースがありました。www.asahi.com

  • 大阪市営地下鉄は、4月に「大阪市高速電機軌道株式会社」として民営化
  • その新会社の愛称が「Osaka Metro(オオサカ メトロ)」に決定
  • 海外の大都市と同じ名称にし、観光客にも分かりやすくする狙い
  • 地下鉄は東京、パリ、アテネ、ドバイなどでも「メトロ」と呼ばれる
  • 海外の方に一目で分かってもらうため、「東京メトロ」と違い、英文表記
  • ロゴはらせん状の立体的な図形で、前から見るとメトロの「M」、横から見ると大阪の頭文字「O」に見える
  • 動きのある図形で「走り続けるエネルギー」を表現

コメント

第一印象は、「東京メトロ」の二番煎じのような名称で、大阪らしくないと思いました。

大阪市営地下鉄のときは、英語でOsaka Subwayと言っていたようですので、Subwayで通しても良いように思いましたし、ロンドンのTubeのような独自性のある名称を考えても良いのに良いのにと思いました。

 

Metro、Subway、Underground、Tubeの使い分けは、次のページにあります。

english-hanasitaino.seesaa.net

 

Wikipediaにも、説明がありました。

メトロ - Wikipedia

ロンドンのTube、Underground、アメリカのSubway以外は、Metroが多数派のようです。

 

ただ、最近の大阪は海外の観光客に大変人気となっており、海外の人に分かり易い名称ということで、Metroを選択したとあります。それなら理解できると思いました。

 

大阪市ニュースリリースに、ネーミングの意図やロゴの説明があります。

www.city.osaka.lg.jp

ブランドコンセプトは、「走り続ける、変わり続ける。」

このブランドコンセプトが、コーポレートスローガンにもなるようです。

 

社名は、

日本語社名が、大阪市高速電気軌道株式会社

英語社名が、Osaka Metro Co., Ltd

とあります。職員の皆さんは、大阪市の文字が欲しかったのかもしれません。

しかし、この日本語社名、実際は、あまり使われそうありません。JR各社と同じです。

日本語と英語の不一致は良くないので、その内、日本語社名も大阪メトロ株式会社すべきと思いました。

 

また、社章は大阪市交通局の「局章」を「社章」とするとあります。大阪市の澪標(みおつくし)のデザインが一部に入っています。

折角の民営化のチャンスですので、社章は変えるべきではないかと思いました。

 

日本語社名と同様、政治的な妥協があるように思いました。

 

ロゴは良くできていると思います。蘊蓄もありますし、デザインも綺麗です。

ブルーがブランドカラーのようです。

横からみると、大阪のOの字を含んでいるとありますが、それは立体にして初めてわかります。いっそのこと、看板を立体(立体商標)にしてはどうでしょうか。

商標登録表示 Ⓡ

論理の逆転

 

商標登録表示のⓇは、商標登録が取れているときに表示することができるマークで、registered markと言ったり、日本ではマルアールと言ったりしています。

 

商標権があることを、積極的に社会にアピールし、商標権侵害の発生を抑制するためのもので、商標権者の義務といわれることもありますし、Ⓡを表示できるということは、商標権の権利とも整理できます。

 

商標法を正面から活用して、ブランド戦略を立案し、企業の成長を図り、消費者の利益を図るときは、商標登録表示Ⓡは、侵害の罪の次に重要な条文です。ただ、日本ではデザイナーがⓇをゴミのようだと言ったりして、あまり人気がありません。企業の相談でも多いものの一つです。

Ⓡに対する立場を、積極的に変更することは、付与後異議を付与前異議に戻すことと並んで、日本の商標法再生の鍵の一つだと思います。

 

日本では、商標法第73条で、商標登録表示は付するように努めなければならないと訓示規定(努力義務)となっています。省令では、商標登録第〇〇〇〇〇号というように記載するのが正式な商標登録表示とされています。そのため、コカ・コーラのボトルに「登録商標」とあるのは、番号記載がなく、正式な商標登録表示ではありません。当然、Ⓡも商標登録表示ではないとされています。

また、商標法第74条の虚偽表示の禁止では、商標登録がないのに、商標登録表示やこれに紛らわしい表示をすることは虚偽表示となり、罰則の対象になります。

 

 

Ⓡを、正式な商標登録表示とする国は多いようです(米国、英国、ロシア、中国、その他)。

外国産業財産権制度相談 事例 QA集

 

有名なのは米国ですが、Ⓡを付けることで、商標権侵害時に商標法のメリットを享受するにはⓇが必要です。米国商標法第29条によると、次のようにあります。

特許商標庁に登録された標章の登録人は,「Registered in U.S. Patent and Trademark Office」若しくは「Reg. U.S. Pat. & Tm. Off.」の文言又は R を円 で囲んだ文字,即ち,®を標章に表示することによって自己の標章が登録されている旨の告知 をすることができる。そのような登録告知をしなかった登録人によるこの章に基づく侵害訴訟においては,被告がその登録を実際に認識していた場合を除き,この章の規定に基づき利 益及び損害賠償の回復をすることができない。

最近は、著名商標の場合は、当然、皆知っているということで、Ⓡがなくても、商標権侵害時に不利に扱われないときもあるようですが、条文は上記のようになっていますので、米国ではつけるのが一般です。

 

注解商標法の第73条の説明によると、昭和34年の現行商標法制定時に、Ⓡを正式な商標登録表示にするかどうか議論になったときに、①すでに日本にⓇを商標権をとして使用している者はどうするのか?、②日本には商標登録がない商品が、米国から入ってきた場合に虚偽表示となるが良いのか?、という点で、日本では商標登録表示にⓇを採用しなかったようです。

また、同じく注解商標法の第74条の説明には、Ⓡは正式な商標登録表示ではないものの、昨今のⓇの認知からすると、商標登録表示に紛らわしい表示となり、虚偽表示になる可能性があるとあります。

 

法制定当時は、(特に、輸入品について、)目こぼしするために、Ⓡは商標登録表示からわざと外したことと、現在は、Ⓡは実質的には商標登録表示と解されていることとの、整合性がつかない状態になっているとあります。寛容な法律を作ったつもりが、寛容ではない状態となっています。たぶん、余程悪質で被害があったようものでない限り、このようなもので警察、検察、裁判所が動くことはないと思います。

 

立法論としては、①商標法第73条の商標登録表示の条文に、Ⓡを正式な商標登録表示とする、同時に、②第74条の虚偽表示の罪の条文に、商標登録があることを装って需要者を欺瞞し、または、不当な利益を得る目的をもってと、いうような主観的意図を入れる、という方法が良いと思っています。

 

商標法の虚偽表示の禁止違反で、摘発されたということは、聞いたことがなく、相当ルーズに運用されているのですが、商標担当者の中には、商標登録がないのにⓇを付すと虚偽表示になり、罰則の対象になるという理由で、商標登録表示をしないように指導している商標担当者も多いようです。

 

海外では、米国の商品が国内市場を席捲しているのを嫌う国が多く、Ⓡに厳しいときがあるようです。以前、ペルーがそのような法律になったと聞いたことがあります。運用が厳格化は分かりません。弁理士の中には、Ⓡについて、否定的な意見をいう人が多いのですが、それは、日本市場しか見ていないドメスティックな発想です。

 

しかし、ポイントは、商標権取得の推奨や、商標登録表示の大切さにありますので、虚偽表示の些末な議論で、商標登録表示としてのⓇ表示が委縮するのは、本末転倒の大問題だと思います。

 

インターブランドランキングでも、日本企業が中国企業に抜かれるのは、時間の問題ですが、少しでも、日本ブランドを強化するなら、この問題も避けて通れません。

 

TMなら違法にならないからそれで良いという人もいますが、TM表示には、米国法のⓇのような魅力がありません。模倣品大国ではありますが、中国が正面からⓇを採用したのは、正解だったと思います。日本も正面からこの問題の解決策を考えるべき時期ではないでしょうか。

商標とネーミング

ネーミングプロセスの研究

知財管理のVol.67の12号に、「商標及びブランディング観点を踏まえたネーミングプロセスの研究という論説が載っていました。

www.jipa.or.jp

知財協会の商標委員会の第2小委員会のテーマということです。抄録は誰でも見れるところにあり、詳細は冊子なりで確認が必要なようです。

大略は、次のようなものです。

  • 商品・サービスの名称は、事業部などのネーミング部門が開発
  • 権利の観点から、商標部門による商標調査をクリアする必要がある
  • 名称の採択可否の判断でしばしば両部門間の意見衝突が生じる
  • 委員自身がネーミングプロセスを体験し、ネーミング部門の視点の理解を試みた
  • 商標部門は、名称の重要度を考慮し、リスク対応を提案し、調整が必要
  • 商標教育という解決手段から、効果的なネーミングプロセスのあり方を提言

 

詳細は、知財管理を読んでいただきたいのですが、まず、ネーミング部門にはその名称へのこだわりや愛着があり、駄目だと言っても説得が容易でなく、その原因を探ろうとネーミングを実体験したということです。

 

ネーミング部門は、ターゲットへの訴求力のある名称を求め、商標部門は商標の使用の安全性を求めるので、認識のズレが生じる。調整が必要になるが、名称の重要度と商標リスクを共有して、調整する必要がある。また、当該企業におけるブランド体系やブランド理念などに反する場合は、商標部門からも指摘が必要となる。

 

そのため、当該ネーミングのポジショニングの明確化が重要で、マップ化の提案があり、名称の寄与度、商標の重要度、企業のブランディングの方針のほか、当該ネーミングについての情報や、経営情報まで入れて、検討することが必要であり、商標部門には十分な情報が必要であり、ネーミングの当初から情報を共有できるスキームが必要と締めくくっています。

 

コメント

商標部門が、ネーミングの実務を体験したということだけでも意味があると思います。貴重な経験になったと思います。

一方、ネーミング部門が、商標調査をすることは、最近ですので比較的簡単です。調査の費用もかかるので、調べ方を宣伝担当者などに伝授すると、案外ちゃんと調べてくれます。

 

そういう意味では、ネーミング部門には商品情報、事業の情報、商標情報がありますので、商標部門だけが純粋に商標登録だけを見ているということになりがちです。

 

この論文では、あまり言及されていませんが、商標部門の良いところは、全社の関所になっているところだと思います。ネーミングを開発する部門が、マーケティング本部に集中しているような場合はまだ良いのですが、事業部に分かれ、各部門がバラバラに、ネーミングができるとすると、コーポレートブランドや、ブランド体系、ブランド理念と抵触する可能性が非常に高くなります。

ブランド部門が調整するのであれば良いのですが、ネーミングのチェックをブランド部門でやっていない場合は、商標部門がその役割を担うしかありません。

 

ブランド部門がなどがない時代でも、商標部門と宣伝部門だけの会社でも、上手くやっている会社はいくらもありましたので、商標部門がその気になれば、ブランド部門なんて不要です。しかし、そのためには、単に商標登録の知識だけではなく、宣伝部門やマーケティング部門に負けないブランド論や経営学理論武装をして、丁々発止やりあう必要があります。

 

この論文には、商標部門は商標リスク対応部門とありますが、全社の商標を良くする責任がある部門と位置付けることもできます。

ブランド部門ができてしまい、商標部門の地位は相対的に低下しました。ただ、ネーミングまで手の回っていないブランド部門が多いと思いますので、商標部門としても攻めるチャンスがあるように思います。

 

商標部門は、商標法的に問題はなくても、企業の矜持のために、NGを出しても良いのです。その部分が、現代的にいうと、ブランドマネジメントと言っているだけだと思います。