Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「響」の偽物

フリマアプリは?古物店に販売?

 

2018年8月22日の日経に、フリマアプリで偽のサントリーウイスキー響30年を販売したとして、三重県警が容疑者二名を逮捕したという記事がありました。

記事によると、商標法違反と詐欺の疑いということです。響30年の偽物5本を、99万円で販売したとあります。本物の瓶と箱を入手して、他のウイスキーをいれていたとみられるとあります。

 

しかし、この記事ですが、日経のWebサイトでは、著作権等ため、本文を表示できないとなっています。

 

一方、2018年9月11日の日経電子版によると、容疑者が古物店に販売したとして、容疑者一人が再度逮捕されたという記事があります。こちらは、古物店への販売です。

www.nikkei.com

 

この記事によると、8月の逮捕については、9月10日に津地検が二人を処分保留としたとのことです。

そして、その内の一人について、今回、三重県警が、同じ9月10日に再逮捕したとあります。

 

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津地検で処分保留になったり、同日に一人が再逮捕されたり、まだ、良く分からない事件ですが、ウイスキーの偽物が、日本のフリマアプリで、出回っているというのは、ニュースになりそうな内容です。

 

以前から、高級ウイスキーは、贈答品などに使われますので、飲まないものは、古物商などにも出回っていたと思います。

古物商はプロですので、騙すことは容易ではありません。

 

一方、フリマアプリでのやり取りとなると、相手は素人になりますので、騙すことも難しくはありません。

 

本物の空瓶や空箱は、フリマアプリで簡単に入手できるようですので、封さえそれらしくできれば、簡単に偽物は作れそうです。

 

フリマアプリでは、模倣品対策を真剣にやっているとアピールしていますが、写真から真贋が判定できるなら良いのですが、取り寄せて開封しないと真贋判定できないものは、鑑定が難しいと思います。

 

消費者とすれば、そのようなタイプの商品はフリマアプリで買わないなどの自衛策しかないのではないでしょうか。

コカ・コーラの最近の話題

ペットボトルとCOSTA

2018年9月6日の日経に、「コカ・コーラ、ヒットに誤算」という見出しの記事がありました。ペットボトルコーヒーが欠品しており、需要を取り込めずに一人負けをしているという内容です。

www.nikkei.com

  • ちびちび飲みが想定以上に広がり、生産が追い付かない
  • 西日本豪雨で、広島の工場が操業停止
  • それ以前から、「ジョージア ジャパンクラフト」「コカ・コーラ ピーチ」が好調で、ペットボトル商品の供給能力不足
  • 缶コーヒーからペットボトルコーヒーへのシフトが想定以上
  • 自販機は利益率が高いが、ペットボトルコーヒーは限られていた
  • 缶コーヒーの方がペットボトルより利益率が高い

 

また、2018年9月1日の日経には、米コカ・コーラが、カフェを展開する英コスタを、5600億円で買収したという記事があります。

www.nikkei.com

  • コスタは英国で2400店舗を展開
  • 中国(450店舗)、中東地域など30ヵ国で事業
  • グローバルな店舗網、コーヒー事業のノウハウを取り込み、外食事業の強化へ
  • 熱い飲料は世界ブランドを持っていない分野の一つ
  • 日本では、缶コーヒーの「ジョージア」がある

というような内容です。

 

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コカ・コーラと言えば、インターブランドランキングで、長期にわたり世界No.1のブランドと評価されていましたが、最近は、AppleGoogleMicrosoftの下の4位にまで、順位を落としています(それでも凄いのですが)。

 

ソーダ飲料は、砂糖の取り過ぎで肥満の原因になるという、健康志向の話が原因だと思います。

 

本業のコーラなどの炭酸飲料を補うためか、日本では、新規事業として、酎ハイを売り出したりしています。 

nishiny.hatenablog.com

 

お酒は世界では展開せず、日本でだけのようですが、コーヒーは日本を含む世界中で、ターゲットになっているようです。

 

日本では、缶コーヒーの「ジョージア」が成功していますが、利益率が缶コーヒーの方が高かったので、ペットボトルへのシフトが遅れてしまったということのようです。

日本メーカーの掃除機が紙パックの利益があるので、サイクロンの採用に躊躇している間に、ダイソンにやられてしまったのと似ています。

 

一方、英コスタは、スターバックスのようなリアルな店舗になり、日本にはまだ展開していないようです。

また、ライバルのスターバックスは、ネスレと契約しています。 nishiny.hatenablog.com

こちらはこちらで、競争が激しそうな分野です。

 

COSTAが日本で展開していないので、COSTAの缶コーヒーやペットボトルが出てくることはないでしょうが、世界本社のグローバルブランド戦略で、COSTAブランドの缶コーヒーやペットボトルが出てくるとすると、日本で独自に展開してきた、「ジョージア」との関係をどのように整理するのなぁと想像します。

 

COSTAの店舗展開が必要ですが、タリーズコーヒーも、ドトールコーヒーも、ライセンスなのか、缶やペットボトルの飲料を見ますので、どうなるのかと思います。

タイムスタンプ 発行1億件

電子文書に時刻情報を付与

2018年9月3日の日経に、2018年の1月~6月のタイムスタンプの発行が、1億700万件となり、前年同期比で28%増加したという記事がありました。

www.nikkei.com

  • 財務省の文書改ざん問題を受け、データの信頼性を担保する手段として注目
  • NTTデータなどの認定事業者が発行
  • 国税庁が電子帳簿の要件としている
  • 行政手続きの電子化(デジタル・ガバメント)にタイムスタンプなどの電子証明技術は必要

というような記事です。

 

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経理の電子帳簿で使われているようですが、知財分野ではどんなところで、タイプスタンプが使われているかについて関心を持ちました。主に、ノウハウの秘密管理と先使用権の立証のようです。

faq.inpit.go.jp

 

●特許化するのではなく、ノウハウとして秘密にする場合、昔の紙ファイルの時代には「秘」と判子を押して、鍵のかかる所に入れておくとか言っていました。

しかし、これは、関係ない社員に見られることや、容易にコピーされて情報が拡散しないようにする効果はあったかもしれませんが、第三者との関係では、あまり意味がありませ

後になって、秘密管理の対象に追加したのではないかと主張されてると、反論できません。

 

重要なものは、公証人役場に持っていき、確定日付をもらうこともできますが、全ての秘密書類にこの対応は無理です。

タイムスタンプなら、存在立証や内容が改ざんされていないことを立証することが可能なようです。

 

●秘密管理と並んで、もう一つは、先使用権の立証資料ということです。特許出願しないと決めたときに、先使用権を立証するためとあります。

 

●さらに、特許無効を主張するための他社情報などを、タイムスタンプで保存しておくともありました。

 

●米国も先願主義に移行したと言うものの、発明ノートを毎日つけていると思います。セイコーの納入事例で武田薬品の事例は、これに近いのかと思います。

 

●このタイムスタンプ自体は、NTTデータセイコーソリューションズが提供しているようです。セイコーソリューションズの場合、年間いくらという比較的リーズナブルな定額制でソフトを提供しているようです。

https://www.pfu.fujitsu.com/tsa/downloads/ssol-kakaku-for-pfu.pdf

 

そして、INPITなどは、タイムスタンプ保管サービスというものをやっているようです。国の機関であり、こちらは無料とあります。INPITのWebサイトには、導入企業の事例紹介がされていました。

faq.inpit.go.jp

 

ということで、オープン&クローズ戦略を実際に推進するためには、タイムスタンプの活用は必要なことのようです。

 

ただ、半期で1億件というのは、まだ、たいした量ではありません。新聞記事にあった行政庁内の文書であるとか、経理の書類とか、本当に電子化が始まれば、このスケールではないんだと思います。

特許の担当の方は、タイムスタンプに詳しいのでしょうが、商標やブランドではタイムスタンプは気にしていなかったのですが、これからは、少し気にしようと思いました。

 

あまり議論されていないのですが、将来は日本での先使用権から、周知の要件が削除されても良いはずです。

そうなると、このタイムスタンプは、一気に商標でも意味が出ています。

他者に使用されても問題ないが、クレームされるのは嫌だから出願しておく程度の商標は、タイムスタンプで十分となります。

 

 

欧州報道機関とネットニュース

対価の請求と法案

 

2018年9月6日の朝日新聞に、欧州の18の報道機関が、グーグルやフェイスブックなどの大手インターネット企業に対して、ネット上で流されるニュースに対価を求める共同声明を出したという記事がありました。

 

グーグルなどが、他人が作った記事で、多額の広告収入を得ていることで、報道機関の広告収入が減っているという主張のようです。

 

また、欧州議会では、ネット企業に記事使用料の支払いを義務付ける法案があり、12日に採決をするとあります。

 

欧州は、米IT企業に対抗するため、個人情報についての新しいルールを作ったという話は、よく聞きますが、この話は初めて聞きました。

 

検索してみると、数年前から議論があったようです。

2015年9月10日のロイターの記事に、インターネットで、ニュース記事の見出しや本文をまとめて表示するグーグルなどに対して、記事の配信元に使用料を支払う制度が議論されているとあります。

 

しかし、ドイツで同様な法案が施行され、アクセルシュプリンガーがニュースをグーグルに表示させない実験をしたところ、閲覧数が激減したので、断念したということです。

 

また、2015年3月4日のHUFFPOSTに、スペインでも、ニュースのアグリゲーション(収集)サイトから使用料徴収を法制化したようですが、グーグルが対抗策として、グーグルニュースを閉鎖したため、トラフィックが途絶えたという影響があったようです。

www.huffingtonpost.jp

 

ちなみに、無断リンク自体は著作権侵害ではないものの、欧州では、著作権侵害と知りながらのリンクは、著作権侵害で違法という判決があるようです。

「侵害コンテンツへのリンクは著作権侵害」とのEU判決 - BUSINESS LAWYERS

 

グーグルは、フランスでも裁判を抱えていたようです。これは和解になり、グーグルから、新聞・雑誌業界向けの支援基金を作ることを引き出したとあります。基金の規模は6000万ユーロ(約76億円)です。

欧州新聞界ラウンドアップ 「グーグルとの付き合い方」、「無料紙」、「デジタル課金」(上)(小林恭子) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

今回の著作権の法案改正も、これらの流れの延長線にあるようです。

 

新聞社の主張が理解しにくいのは、グーグルが収益をあげている検索連動広告は、検索エンジンに関係するものであり、検索エンジンとニュースサイトとは、別のページです。

グーグルのニュースサイトを運営するのは、読者へのサービスを通じた集客のためではありますが、ニュースサイトのページに広告がある訳ではありません。

これで対価を請求されるとなると、グーグルや日本でいうとYahooも大変だなという気はします。

 

リンク先のマスコミ各社は、記事自体は無料で公開していることが多いのですが、各社のページにはバナー広告はあります(クリックしている人がどれだけいるかは不明ですが)。

 

しかし、新聞が売れなくなり、新聞社が潰れると、グーグルも困るでしょうから、グーグルとマスコミには、一定の持ちつ持たれつの状態があり、グーグルが、なんらかの協力をするというのは理解できます。

 

有料記事を増やしていくことや有料閲覧者を増やすことが一番ですが、何でも無償の時代にこれは、簡単ではありません。

マスコミのサイトを見た人が、サイト内の広告を見るというようにしないといけないでしょうが、それをするには、個人属性などのビックデータをマスコミが活用してターゲット広告をする必要がありそうです。

技術的な協力で折り合いがつけば良いのです。しかし、欧州のマスコミや議会も、よく言うなという感じはします。

陰徳か陽徳か

ブリヂストン美術館の名称変更

2018年9月6日の朝日新聞で、ブリヂストン美術館が、アーティゾン美術館に名称変更するという記事を見ました。

内容は、

  • 2019年7月に入居するビルが建て替え完了
  • それに合わせて、館名を「アーティゾン美術館」に変更
  • アートとホライゾン(地平)を組み合わせた造語
  • 従来のイメージから脱却する意図

とあります。

 

同美術館のサイトを見ると、現在、建替えにより長期休館中とありますが、建替えの様子が早回しのビデオで見られて、建替えの様子自体がアートになっています。

ブリヂストン美術館

 

ニュースリリースによると、名称変更の理由は、次のように説明されています。

今回の館名変更は、新たな方向へ踏み出す決意の表れであり、当財団の基本理念である「世の人々の楽しみと幸福の為に」を実践するために、名実ともに全く新しい美術館を目指します。

また、次の記載があります。

  • もともと開館当時から、同美術館は、石橋コレクションを公開するとともに、同時代の欧米の作品を紹介する意図
  • 今回、建替えにより展示面積が2倍になり、大規模な企画展とコレクション展が同時開催可能に
  • コレクションも、印象派を中心から、古美術、日本近代洋画、20世紀美術、現代美術にまで大きく視野を拡げる
  • 2020年1月に、オープン

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タイトルに記載した、陰徳(人に知られないようにひそかにする善行。隠れた、よい行い)か、陽徳(あらわに人に知られる徳行)が良いのかは、難しいところです。

日本では、かつては、陰徳が好まれました。また、「陰徳あれば必ず陽報あり」と言われるように、陰徳こそが、プラスになるという考えもありました。

 

しかし、海外では、この陰徳は通じません。通常は、良いことをしているなら、良いことをしたとしっかりと主張しないと、伝わらないと考えます。

 

ネーミングライツなども、スポーツ施設などの支援をする替わりに、その功績を称えてで、施設の名称に企業名やブランド名を冠するものです。冠コンサートが多いのも、同じ理由です。

 

公益財団法人 石橋財団と、企業としてのブリヂストンの現在の関係は、よく知りません。しかし、両者は、基本的には、別物です。

ブリヂストンの商標は企業側がもっており、財団がその名称をPRする必要性はありません。しかし、現在、折角、ブリヂストンのPRができているのに、名称を変更するのは、企業としては、もったいないなと思いました。

 

このような美術館は、普通の企業が持とうと思っても、なかなか持てるものではないと思います。また、ブリヂストンのブランド価値に非常にプラスとなるものですので、なんとか、企業からネーミングライツ的に支援をするなどして、現在の名称を続けることはできなかったのかという気がします。

 

あと、「アーティゾン美術館」の名称ですが、石橋財団の美術館館ということなら、非常に普通なのですが、石橋美術館ということもできたように思います。

この点は、「出光美術館」の出光とちがって、石橋はブランドではないので、英語の造語になったというところでしょうか。

 

なんとなく、折角のブランド戦略が、もったいないというのが、感想です。

 

特許行政年次報告書 2018年版

商標の外国出願に注目

先日、特許庁に行ったときに、特許行政年次報告書があったもので、ハーグ協定の資料と一緒にもらってきました。

www.jpo.go.jp

すでに、2018年6月28日に発行されていたものです。

相当立派な資料であり、以前なら、白書として2,000円ぐらいで本屋さんで販売していたような冊子がタダでもらえるなんて、特許庁はお金があるんだなという感じがします。

 

今回は、明治150年ということで、明治期の特集があります。大きな冊子ですので、色々なことが書いてあります。辞書的に使うのが正解でしょうか。

 

第1部の知的財産をめぐる動向、その第1章の国内外の出願・登録状況と審査・審判の状況を見ていて思ったのは、P.9(特許)、26(意匠)、35ページ(商標)の表です。

これらのぺージは、5極(日本、アメリカ、欧州、中国、韓国)の出願のやり取りを示した表で、だいぶ前から特許庁が出しているものです。

https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2018/honpen/0101.pdf

 

●特許と意匠と商標を比較して見ていると、だいぶ傾向が違います。

1.特許では、

  • 特に、日本からアメリは、日本の出願超過
  • 日本から中国も、日本の出願超過
  • 日本から韓国も、日本の出願超過
  • 欧州は、イーブン

2.意匠では、

  • 特に、日本から中国が出願超過
  • 日本から、アメリカ、欧州、韓国も出願超過

3.しかし、商標では、

  • 日本からアメリア/欧州は、出願が少なく、反対に、アメリカ/欧州から日本へが出願超過
  • 日本から中国/韓国へは、日本からの出願超過

となっています。

 

●商標の出願件数に注目しました。

外国商標は、日本からの出願件数がすくないのが、日本の課題です。

日本のGDPが世界の6%あるとして、一応、5極のアメリカ、欧州、中国、韓国での出願人の内訳をみて、その中の日本の出願人のパーセンテージを見ると、

  • アメリカ:1.2%(日本からの出願比率)
  • 欧州:0.6%(日本からの出願比率)
  • 中国:0.4%(日本からの出願比率)
  • 韓国:2.6%(日本からの出願比率)

ということです。

日本自体に比較的大きな市場があるためでしょうが、世界GDP6%の国なのに、この数字は低いなと思います。

 

一方、

アメリカへの出願中、欧州からは12.5%、中国からは6.5%、韓国からは0.9%

欧州への出願中、アメリカからは3.4%、中国からは2.4%、韓国からは0.3%

中国への出願中、欧州からは1.7%、アメリカからは0.9%、韓国からは0.6%

という数字です。

 

アメリカは欧州で、欧州もアメリカと中国で、中国はアメリカと欧州で、韓国は中国で、相当頑張って出願しています。

特に、アメリカと欧州の結びつきは非常に強いのと、中国と欧州の結びつきも強いというところでしょうか。

全体的には、日本からの外国への商標出願は、伸ばす必要がある感じです。

 

特許で日本からアメリカや欧州への出願が多く、意匠でも中国への出願が多く、負けている感じがないのですが、商標はボロ負けです。ここは、しっかりと考えないといけない点です。

 

●特許は、欧米との競争があるので、対抗上、欧米が多く、意匠は、模倣品対策で、中国に多いのだとは思います。

 

商標の出願がないということは、どういう理由でしょうか?

 

日本企業はコーポレートブランド中心で、その出願は高度成長期に一巡して、更新ばかりだと言う声が聞こえてきそうです。

 

大企業は、実は、自動車は別として、欧米での事業が上手くいかず、電機等、撤退気味なところが多いので、このような結果になっているのかもしれません。そうであれば、より大きな施策が必要です。

 

また、商標登録をとる必要性が十分理解されていない気がします。

 

税務上、子会社に無償ライセンスするなど、ありえないのですが、まだまだ。何らの手当て無しに、子会社に無償の商標ライセンスをしている会社も多いと思います。

 

日本企業は、コーポレートブランド中心の運用で、事業ブランド、商品ブランド、技術ブランドの使い方が下手なので、こうなってしまったのかも知れません。

 

更には、企業の知財部が、特許中心であるため、こんな結果になってしまった可能性もあります。

 

このあたり、分析してみる必要があるように思います。

 

現在は、日本の食料品やお酒などの輸出など、主として、中小企業が念頭に置かれた外国商標出願推進の取り組みはあると思いますが、これは本筋の話ではなさそうです。

 

日本の外国商標出願が増えることは、日本企業の事業事業が順調に推移していることを示すバロメーターだと思います。

 

アメリカ、欧州、中国企業並みに、外国商標出願を増やす必要があり、そのための課題や施策を考えるのが、各企業はもとより、経産省特許庁の仕事ではないかと思いました。

経産省は、日本企業の外国商標出願が少ない原因を探り、日本経済との関係を考えて、政策を実施して欲しいと思います。

仮説としては、日本人の商標についての考え方の整理が必要だと思います。

また、日本の商標制度が、非関税障壁となって日本人を甘やかした結果が、この結論なのではないかと推測します。

 

特許庁は、マドプロ出願を3倍程度に伸ばすこと目標にすべきと思います。

知財実務と機械翻訳

その利用と影響

2018年9月7日の13:30~17:50に、弁理士会とニューハンプシャー大学法科大学院の共催セミナーが、弁理士会館であり、参加してきました。

参加の理由は、ロースクールとの共催というのが面白そうだったのと、AIや機械翻訳(Machine Translation)に興味があるのと、生きた英語を聞ける機会(同時通訳なし)、という3点です。

 

 

さて、機械翻訳ですが、ニューラル翻訳が出て、格段に進歩したのですが、知財業務にどれだけ使えるのか?という内容です。この部分のメインスピーカーは、サヤガタ知的財産事務所の稲葉滋弁理士でした(Webで経歴をしらべると、私と同じ時期に同じ会社におられたようですが、存じませんでした。こんな優秀な方がいたのかと思いました)。

 

講演の内容

  • この30年で特許事務所の仕事は、日本語タイプ→ワープロ、郵送→電子出願、手捲り調査→オンライン調査、telex/Fax→email、紙ファイル→ソフト管理と、生産性が向上している
  • 機械翻訳は以前からあるが、Neural機械翻訳が2014年に出来て格段に精度が向上
  • 中国専利局が、WIPOのPATENTSCOPEに、中国出願とUSPTOへの翻訳を提供
  • EPOが、Googleに数百万の人間が翻訳した、特許資料を提供
  • 先行技術調査でグローバルな特許情報が必要
  • 日本特許庁は、日本語と中国語・韓国語の機械翻訳を推進中(※今や、日本と欧米だけの先行技術調査では、正確な審査ができないようです)
  • J-PLAT PATの英語版で日本語の明細書を英語で提供
  • 機械翻訳は、機密保持の論点がある(Googleの約款)→機密部分を除いて使用するなど
  • 実験したところ、日本語→英語、韓国語→日本語は得意。中国語⇔日本語は得意でない(得意、不得意がある)
  • 訳し不足、訳し過ぎがある
  • 機械翻訳しやすい日本語にする https://www.tech-jpn.jp/tokkyo-writing-manual/
  • 事後編集が重要
  • 完全に人間の翻訳に置き換わるわけではないが、翻訳のコストを下げ、翻訳の生産性を向上させる
  • 中小企業が外国出願を検討する契機になることが望まれる

という内容です。

 

実演もありました。Internet explorerではなくGoogle Chromeを使う必要があるのですが、WIPOのデータベースではHTMLを選択し、Google Chromeの日本語に翻訳をすれば、一瞬で明細書や、商標情報が、翻訳されます。

詳しくは理解していませんが、Google patentという調査ツールがあるようで、これとGoogle翻訳を組み合わせデモをされていました。

 

中国、台湾の方も、このテーマで話をされたのですが、中国語⇔英語はだいぶ使えるようです。一方、台湾の方は、難しい面もあるように言っていました。

EPOは、域内でも多言語で、その障害を改善する必要性に迫られているようであり、Googleと組むなどの背景のようです。

 

法科大学院 

ちなみに、今回の講演会は、ニューハンプシャー州大学法科大学院を紹介することが目的のようです。

もともとのFranklin Pierce Law Centerは、1973年にニューハンプシャー州の最初の法科大学院として設立、知財に力を入れていたようです。この名前は聞いたことがありました。

2010年からは、ニューハンプシャー大学に入り、Franklin Pierce Center for Intellectual Property at University of New Hampshre School of Lawとして、ニューハンプシャー大学の法科大学院の一部?となっているようです。

 

世界中の企業やローファームに、アルムナイ(卒業生)がいるようです。今回の講演会もアジア地域にいるアルムナイが企画したもののようです。北京、台北、ソウルなどを巡回する感じです。アルムナイに結束力があるなと思いました。

 

講演会の後、簡単な懇親会があったので、ある質問をしたのですが、今は答えがないが、INTAの総会がボストンであり、ニューハンプシャー州のコンコードは1時間と近い、興味があったらそこに来てくれたら、沢山のアルムナイがいるので、解るのではないかという回答がありました。

 

法学部出身なので資格上は1年コースのL.L.M.に行けるのですが、学力(英語力を含む)が伴わないのと仕事があるため、1年間実際に行くのは難しいかと思いました。

頑張って、Summer Courseかなぁという感じです。