Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

コードが法律になる日

ユーザー規定とソースコード

2019年6月24日の日経に、コードが法律になる日というタイトルの論説がありました。

「コード」が法律になる日 重み増す巨大ITの責任 :日本経済新聞

内容は、

  • フェイスブックのユーザー規定は、法律並の力。現代の立法者(カリフォルニア大学のデビット・ケイ教授)
  • 例えば、テロリズムや暴力に関する投稿を禁じているなど
  • ユーチューブにも似た規定
  • ユーチューブの同性愛をからかう動画の削除が遅れたことに批判
  • ネット企業のソフトウェアでも、(ソース)コードが法律化(ハーバード大学法学部のローレンス・レッシグ教授)
  • 例えば、市販の顔認証システムは、白人男性の精度は高いが、有色の女性は誤った認識
  • 政府が企業と協調してルールを考えるべきではあるが、米国は、政府のネットへの関与を嫌う
  • 現代の立法者への支持が下がると、政府規制強化の現実味
  • コードを書く重みは増している

というような内容です。

 

コメント

プラットフォーマーの力が強くなり、生活に必要不可欠なものとなり、そのユーザー規定や、コードやソフトウェア自体が法律と変わらない程度にまで重要性が増しているようです。

コードの場合は自動的に意図した結論になるのでしょうが、ユーザー規定の場合、規定したことが、実行されているのか?と問題もあります。

 

政府の指針があってもおかしくないのかもしれませんが、通信や医薬や金融の世界のように、政府の許認可が必要というようなことになると、開発スピードが遅れたりして、ネット企業にとっては、マイナスになるのだと思います。

 

先日、ファイスブックで、私のプロフィールの、勤務先が勝手に変わっている出来事がありました。特許事務所勤務なのですが、東京理科大勤務になっていました。夜に、寝ているときに、夢遊病にでもなって、自分で変えたのか?、家族が勝手に変えたのか?といなりますが、そんなことは無いと思います。自分でも、家族でも、東京理科大に何の縁もゆかりもありません。おそらく、書き換えられたのかと思っています。

 

この点、フェイスブックに、問い合わせをしたのですが、調べますと連絡がきただけで、それ以降、特に回答がありません。良く分からないというのが感想です。

 

こんな経験をすると、ユーザ規定やコードが法律になっているという記事も、そうかもしれないと思いました。

金融機関などでは、通信や金融なら、問い合わせをすれば、なんとか答えてくれるように思いますが、一般に、ネット企業は、人が対応しないことが多く、良く分かりません。

 

無料のサービスとして利用しているだけですし、特に、何の情報もないフェイスブックなので、特に、困ることはないのですが、気持ちが悪いなという感じです。

医薬品はブランドがないビジネス

第一三共 中山譲会長

2019年7月1日の日経電子版で、第一三共の中山会長のコラムを読みました。

www.nikkei.com

  • 酒類業界で17年、医薬品業界で23年
  • 医薬品ビジネスは特に分かりにくい
  • 新薬ビジネスにはブランドが無い
  • 新薬ビジネスでは物質探し、その物質の特許化、臨床試験、当局の承認、市場に
  • 会社のブランドでなく科学データのみ
  • 新薬はなかなか出ない(3万分の1の確率)
  • 特許が切れれば、他社の同じ化合物が臨床試験無しで参入
  • ブランドが無いから、価格差しかない
  • 次の新薬が無ければ、そこで事業は終わる
  • 自社内に無ければ社外の化合物を買いに行かざるをえない
  • 他の事業にはない強い喜び「命の輝き」を感じる

コメント

ブランドが重要な酒類業界におられたので、その対比で考えておられるのでしょうか?

 

中山会長の経歴は、Wikipediaによると、MBA取得後、サントリーに入社サントリー生物医学研究所社長、サントリーファーマ社長、第一製薬取締役、第一三共執行役員、常務、副社長、社長を歴任した後、2017年4月1日より会長兼CEO、とあります。

サントリーなんですね。

 

上の記事は、医療用医薬品のことなんだと思います。一般用医薬品は、サントリーと同様なブランドビジネスです。

 

第一三共株式会社の子会社に、第一三共ヘルスケアという会社があり、その商品を見ていると、

と、良く聞く、薬などの商品ブランドが沢山あります。おそらく、これらは、売上や利益としては小さいのだとうと思います。

 

医療用医薬品は門外漢ですが、特許が切れると、新薬が出てきて、あっという間にシェアを奪われ、価格が低下し、儲からなくなるというのは、そうなんだろうなと思います。

厚生労働省の薬価改定や、健康保険組合ジェネリック医薬品を使いましょうというキャンペーンもあります。

 

面白い業界だなと思います。ジェネリックの会社も、新薬メーカーが新薬を開発してくれないと、自分達の魅力も薄れるという点では、新薬メーカーに依存しています。

 

特許という明確なものがあり、物質特許ですので、医薬品を明確に守れるというのも、特徴です。

 

大学生のころ、特許法などの勉強をしていたのですが、そのとき、渋谷達紀先生の「特許と経済社会ー技術独占の功罪を考える」(日経新書)を読んで、刺激を受けました。大きな図書館などは、持っているかもしれません。 

電気やソフトウェアの業界では、特許制度がなくても、技術進歩は進むが、医薬品や化学の業界は違うというような説明でした。 

特許制度は、医薬品や化学でこそ意味があるんだと思いました。

この本を読んで刺激を受け、大学4年生のときの就職訪問には、何社か製薬会社も行ったのを思い出しました。

 

結局、電機業界に就職し、現在の特許事務所の商標の仕事でも、医薬品自体はあまりタッチしていませんが、医薬品業界は面白いなと思います。チャンスがあればやってみたいなと思います。

スポーツと知財

7月21日(日)、みなとみらいのイベント

図書館で、日本弁理士会関東会のイベントのチラシを見つけました。図書館のチラシのコーナーには、コンサートや落語会のチラシなどが置いてあり、何かないかとみていると、黄色いチラシで、「スポーツと知財」というものがありました。

日本弁理士会関東会 関東会概要・記念事業について

 

弁理士の日記念イベント2019とあります。

タイトル:スポーツと知財

日時:令和元年7月21日(日)10時~17時

場所:みなとみらい クイーンズスクエア横浜1階 クイーンズサークル

内容:ゲスト eスポーツのプレーヤー、プロ野球解説者(齊藤明雄さん、池山隆寛さん)、マラソンランナー(谷川真理さん)のトークショー(各々1時間)

工作等:うちわづくり、eスポーツ体験、VR体験、知財相談コーナー

電子紙芝居:知的財産のことがすぐにわかる!よくわかる!電子紙芝居を上映

とあります。

 

表紙は、書下ろしのイラストでしょうか?ちょっと発明チックな面白いイラストです。

 

発明の日は知っていましたが、弁理士の日というのもあるのかと思いました。

 

発明の日は、特許制度が始まった日で、4月18日ということです。

4月18日は「発明の日」です | 経済産業省 特許庁

 

弁理士の日ですが、弁理士制度が始まった日で、7月1日だそうです。

弁理士の日について | 日本弁理士会

 

さて、弁理士の日のイベントですが、弁理士制度の普及啓発につなげるものであれば、良いのでしょうが、例えば、日本弁理士会関西会ののものは、「知財ふれあいフェスティバル」というタイトルで、講演会(植物工場と知財のような内容)と、イベント(サイエンスショーと発明工作教室など)で、弁理士の日っぽい内容です。

弁理士の日記念講演 | 日本弁理士会 関西会

 

一方、関東会の「スポーツと知財」は、オリンピック前でスポーツが脚光を浴びている時期ではありますが、ゲストが有名人ということもあり、ちょっと集客に振っているなという気がします。

関西会のイベントに比べると、お金もかかっていますし、この企画をしようとすると、広告代理店に企画してもらわないと、弁理士さんだけでは、できないだろうと思います。

 

関東には、関西の3倍強は弁理士がいますので、予算はあるのもしれません。

 

トークショーがメインとして、eスポーツ、VRプロ野球解説者)、ミズノ製ランニングシューズ(マラソンランナー)に、発明的な、弁理士的な内容を、どう語ってもらって、弁理士を知ってもらうイベントにするのかという点です。

 

時間があれば、覗いてみようと思います。

 

でも、この「日本弁理士会 関東会」という名称は、違和感が残ります(特に、関東会)。ネーミングのプロに検討を依頼したら、この名称はないと思います。以前の日本弁理士会 関東支部の方がましです。

 

通常なら、関東弁理士会、関西弁理士などとなって、上部組織に、日本弁理士会です。

弁護士会と違って、現状は一つの弁理士会なので、独立しているように見える名称にできなかったのだと思いますが、少し気にし過ぎなように思います。

 

〇〇支部というと、他士業との会合等で、軽く見えてしまうので、「〇〇会」としたかったとは聞きましたが、なんとかならないものかと思います。 

日本弁理士会について | 日本弁理士会

トヨタが独見本市から撤退

他業界も縮小

2019年7月1日の日経に、トヨタが、独見本市から撤退という記事がありました。

トヨタ、ドイツ自動車ショー撤退 SNS普及で効果薄く (写真=ロイター) :日本経済新聞

  • 企業が見本市から相次いで撤退
  • トヨタはフランクフルトモーターショーを見送り。BMWも規模を3分の1に
  • トヨタは、最大市場の中国のショーにシフト
  • 大手メーカーのショーの設営費は1億円
  • 時計や宝飾品でも、バーゼルワールドにスウィッチが見送り
  • ジュネーブサロンでは、高級時計メーカーが取りやめ
  • 欧州のITのCeBITは、ハノーバーメッセと統合したが、人は増えず
  • 米家電見本市のCESには、自動車業界が進出
  • 伝統的な見本市は曲がり角
  • SNSなど情報収集の方法が多様化し、費用対効果が小さい
  • PwCの調査で、消費者の買い物の情報収集では、SNS、小売りサイト、価格比較サイトの順

というような内容です。

 

コメン

コミュニケーションの職場では、大きな見本市からの撤退となると、大事件だろうと思います。予算がない会社なら分かりますが、儲かっているトヨタですのでニュースにもなります。

 

ブランドマネジメントの職場にいたとき、電機業界だったので、秋のCEATECには良く行っていました。同じ本部のメンバーが展示会の担当だったので、見に行くのが当然という感じでした。

ただ、2時間程度でざっと見るだけで、今は何が流行っているのかを確認しておく程度の感じです。別件と絡めて、米国のCESにも、一度、行ったことがあります。

 

ブランドマネジメントの職場の前の、知財の職場のときは、ほとんど展示会に行きませんでした。商標担当ですので、アンテナを広く張っておくことは重要ですし、行くべきだったと思います。

場所が大阪だったので、出張費をケチったからかというのかというとそうではなく、単に関心がなかったのです。

 

知財協会の委員会や、商標協会の委員会、研修会、特許庁の行事をやっていると、それが自分の世界になってしまい、誰でもいけるCEATECにさえ関心を持ちませんでした。

これでは、商標担当者失格だなと今は思います。是非、商標担当者は、展示会や見本市に関心を持ってもらいたいなと思います。

 

それはさておき、冒頭の記事ですが、左前の会社がモーターショーに出品しないことは理解できますが、トヨタのように儲かっている会社なのに、ちゃんとメリハリをつけているんだなあと思います。

 

市場としては、重要国の中国にシフトするのは分かりますし、日本の「トヨタイムズ」などSNSで、相当リッチな番組コンテンツを流しています。

トヨタイムズを見ていると、SNSは、すでにテレビの代用だなと思います。

 

一点、良く分からなかったのは、PwCの調べです。

消費者がSNSで商品購買を決めているとあります。

ツィッターで、「おすすめ 掃除機」などと検索すると確かに、色んな情報が出てきます。

まとめサイトのキュレーターサイトは、批判的精神をもって読むことが重要な感じですが、こちらのツィッターは、ざっと眺めることが重要な感じです。なんとなく、色んな意見があるなというのがわかります。人のうわさ、口コミが、文字になったものという感じです。

FaceBookでも同じ「おすすめ 掃除機」で検索してみましたが、どちらかというとツイッターの方が、さっと読めて、いろんな意見が見える感じでした。

 

ツイッターで、「トヨタ エコカー」「トヨタ 自動運転」で見ても、まあまあ、色んな話しが出ています。SNSでの情報収集っていうのは、こんな感じなのでしょうか?

口コミの電子版ですね。

 

どういうアルゴリズムで、その検索結果が表示されているのか、良く分かりませんが。

光触媒マスク

花粉分解に、措置命令

2019年7月5日の日経に、消費者庁が、「光触媒マスク」が、花粉やウイルスの体内への吸入を防ぐかのような宣伝は、合理的根拠がないとして、景品表示法違反(優良誤認)で

大正製薬Dr.C医薬アイリスオーヤマ玉川衛材に再発防止を求める措置命令をだしたという記事がありました。

「光触媒で分解」根拠なし マスク販売4社、違法宣伝 :日本経済新聞

  • 光触媒には有機物の分解作用
  • 4社はマスクの包装に「花粉を水に変える」「光触媒で分解!」「しっかり吸着 光で分解」などと表示
  • 消費者庁は裏付けとなる根拠を求めた
  • 使い捨てマスクを着用するような短時間で表示の効果を実証する資料は提出されなかった
  • 消費者庁は、現在の表示を速やかに取りやめることも求めた

これについては、各社で対応が分かれたようです。

「花粉を水に分解するマスク」への措置命令、各社の反応割れる:日経ビジネス電子版

  • 花粉を水に変えるマスク」(DR.C医薬
  • 「光の力で分解するマスク」(アイリスオーヤマ
  • 「しっかり吸着 光で分解」(玉川衛材
  • 光触媒で分解!」(大正製薬
  • 4社のマスクの効能は微妙に異なる
  • 消費者や専門家からは効果に疑義を呈する声。消費者庁も注視
  • 措置命令を受けての反応は各社で割れた
  • アイリスオーヤマは、すでに販売終了
  • マスクをつけて直ぐに効果のあるものではなかった。効果は誤認だった
  • 玉川衛材は、効果は否定しないが、消費者庁からの指摘は認めた
  • DR.C医薬も、効果は否定していないが、より誤解のない表現で対応する
  • 大正製薬消費者庁の措置を批判
  • 今回の措置命令の指摘事項は、消費者庁に提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものではないと考えている。法的措置も検討中
  • 記者は、誇張表現は消費者を逆に遠ざけてしまう可能性もある

とあります。

 

大正製薬のリリースは、次です。

消費者庁による措置命令について | 大正製薬

  • パブロンマスクの光触媒の効果に関する表示について問題があるとして、措置命令
  • 光触媒が有するウイルス、細菌、花粉の除去の効果に関する科学的根拠に基づいて製品開発を行い、その合理的な根拠に基づいて製品パッケージ表示している
  • 消費者庁から措置命令が出たことは誠に遺憾
  • 消費者庁に提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものでない
  • 法的に採り得る対応・措置を検討中

コメント

光触媒自体は、花粉の分解効果があるとしても、マスクに使用したときに、どれほど、効果がアップするかです。

 

消費者庁の排除措置命令自体は、次にあります。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2019/pdf/fair_labeling_190704_0012.pdf#search=%27%E5%85%89%E8%A7%A6%E5%AA%92%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AF+%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8%80%85%E5%BA%81+%E6%8E%92%E9%99%A4%E6%8E%AA%E7%BD%AE%27

 

各社は光触媒の科学的な有効性は証明できているのだと思います。

ただ、消費者や消費者庁は、このマスクを使って、従来品よりも花粉が体内に吸入されることを防ぐ効果についての優良誤認を言っているのに対して、この点までは証明できないということだと思います。

 

4社のうち、大正製薬だけが争うようです。

 

消費者庁の措置命令には、行政不服審査法行政事件訴訟法で争うことは可能と記載していますが、争うこともあるんだというのが、感想です。

本当に、微妙なところで、戦っているんだなあと思いました。

 

以前であれば、公正取引協議会で、民間同士で議論していた、行き過ぎた宣伝のようなものが、消費者からのホットラインでの苦情・相談を受けて、消費者庁がダイレクトに動くという感じです。

薬事は、昔から厳しい世界ですが、マスクは医薬部外品でもないようです。

消費者としては効果を期待するので、消費者庁が厳しく見るのも、ありがたいと思うような気がします。

 

効果がないことはないし、表現も穏当なものであれば、大正製薬がクレームすることも分からないではないのですが、さて、どうなるのかなあと思います。

《大正製薬》 パブロンマスク365 ふつうサイズ (3枚) :4987306048652:ドラッグ 青空 - 通販 - Yahoo!ショッピング

送料無料 DR.C医薬 花粉を水に変えるマスク+4 ふつう 3枚 ポスト投函 代引不可 :5020115:IDKだれでも健康ショップ - 通販 - Yahoo!ショッピング

玉川衛材 フィッティ 吸収分解マスク スーパーフィット やや小さめ ホワイト 5枚 ポスト投函 代引不可 :5020212:IDKだれでも健康ショップ - 通販 - Yahoo!ショッピング

【アイリスオーヤマ】光の力で分解するマスクふつう 5枚 :vt-4967576373265:エナジードラッグ - 通販 - Yahoo!ショッピング

パッケージの外観を見た感じは、どの会社も、50歩100歩です。

 

ただ、大正製薬のマスクは、パブロン365と薬の商標(パブロン)を使っています。ここは、少し気になります。

医薬品ではないものに、医薬品の商標(分類は違う、商品は違う)を使うと、医薬品の安心感のようなものがあり、公的な認証を受けたもののように感じます。

おそらく、大正製薬としても、単なるマスクではなくパブロンのマスクに排除命令というのは、影響が違うのだと思います。

パブロンのファミリーを作って、ブランドの強化するのは分かりますが、問題がないと見極めるまでは、別のブランドとすべきだったのかもしれません。

 

商標登録表示Ⓡ再考(3)

ⓇとTMと虚偽表示

先日、ⓇやTMを検討する必要があり、近くにある資料を見直していました。以前書いた、商標登録表示Ⓡ再考の、続きとなります。特に、注解商標法を再読しました。 

新・注解 商標法〈下巻〉第36条~第85条 事項索引・判例索引

新・注解 商標法〈下巻〉第36条~第85条 事項索引・判例索引

 

 

73条(商標登録表示)、74条(虚偽表示)のところです。

日本の商標法(というか、ほとんど全世界中の商標法)で、商標登録表示Ⓡは、励行することが推奨されています。

理由もほとんど同じです。権利があることを明示して、侵害者に警告を与え、侵害行為を思い留まらせるということです。

 

ただ、例えば日本では、商標登録第〇〇〇号と記載しないといけないとなっています。海外でもRegistered Trademarkとか、その各国語の表示が各国毎に決めらています。

 

アメリカを中心に、発達したⓇ表示は、日本では正式な商標登録表示ではありません。(規則を変えて、米、中、その他の国のように、Ⓡを正式な商標登録表示にすべきという論点は残っています。)

 

では、日本で、登録がないにも拘わらず、Ⓡを表示した場合に、これが虚偽表示になるかどうかですが、従来の説明では、Ⓡを商標登録表示から外したのは、海外(主にアメリカ)から、日本では商標登録が取れていない商品が入ってきた場合にそれを虚偽表示にしないために、Ⓡを商標登録表示から除外したと説明があり、これがⓇを商標登録表示としなかった立法理由とあります。

虚偽表示にはしたくなかったようです。

 

しかし、注解商標法の説明では、74条の虚偽表示の説明のなかでですが、主に、平成4年のKRISPIES事件(民事事件)の傍論を引用して、現在の日本社会ではⓇはすでに商標登録を取れているものとして理解されており、商標登録がない場合にⓇを付けるのは、虚偽表示ではないかという記載がありました。

(この点は、良く見ると、以前の注解商標法からそのように記載していました。)

 

Ⓡを商標登録表示から外したのは、(海外からのⓇのある流入商品を)虚偽表示にしないためであり、一方、Ⓡを付けると虚偽表示なるという判例(民事ですし、傍論なので、先例的価値はなさそうですが)があるというのは、明らかに矛盾しています

 

もちろん、虚偽表示が、虚偽表示の罪に、必ずなる訳ではありません。刑事ですので、故意が必要ですし、違法性阻却自由が沢山ありそうです。

そもそも、間違ったⓇが理由で、虚偽表示の罪になったとは、日本で聞いたことがありません。

 

ちなみに、注解商標法では、以前の版も、最新版も、刑事での適用は罪刑法定主義の関係で疑問なしとしない。今後の検討がまたれるとしているだけで、明確な答えがありません。

 

Ⓡのような多くの商標使用者に多大な影響を与える論点を、放置しているのは、商標立法者の怠慢と云われてもしかたないなと思います。

 

方法としては、1)昔とどうように、Ⓡはゴミみたいなもので無視するとするか、2)Ⓡを正式な商標登録表示とするかです。

 

おそらく流れは、後者の正式な商標登録表示とする方だと思います。そうなると、正式なものですので、間違ってⓇを表示してしまうと、明確に、虚偽表示にはなります。

次は虚偽表示の罪になるかどうか(警察・検察があまり沢山ある微罪を追求できるのか?特に、海外からの個人輸入品やそのネット販売をどうするのか?)などの論点になります。

 

●次に、まった違う話題ですが、最近、時々見る「TM」の扱いです。

日本では、アメリカ的に理解して、TMは出願中のもの(コモンロー上の商標権の主張)と理解している人が多いのですが、海外、特に欧州ではTMとⓇを区別していない感じです。

 

ルクセンブルクが本社のDennemeyerのWebサイトに説明があります。

Dennemeyer

https://www.dennemeyer.com/de/insights/overview/news/the-trademark-symbols-r-and-tm-why-when-and-how-to-use-them/

これによると、ドイツでは、Ⓡはではなく、TMも「商標登録」を取得したあとでないと、つけてはいけないという判例があるとしています

商標登録を取得している点について、紛らわしいのは、ⓇもTMも同じという考え方です。そうかもしれません。

 

また、アメリカのTitan Blogにも、国際的なMarkingでは、TMでも商標登録が必要な国がある(例、フランス)という記載があります。

U.S. and International Trademark Marking: Use TM, SM, ®…or None of the Above? - Trademark Titan™ Blog

 

こうなると、出願中だからTMでとか、事実上の使用だからTMでいう、逃げはできません。正確に実際に必要な商品について、必要な商標をとらないとⓇもTMもつけられないとなります。

 

ⓇやTMと虚偽表示の関係は、いままでは各国ともそれほどシビアに運用していなかったのですが、今後、シビアな国が出てくるような気配もあります。

 

そうなると、方向性は、2つで、1)ⓇもTMもつけない。あるいは、2)徹底的に、商品単位での権利取得に拘って、商標登録の取得に励む(類似群コードに守られてきた、日本企業の不得意なところです)。

 

①については、日本でⓇを正式な商標登録表示として採用するのは大変よいこととしても、さらに、②については、Ⓡを外す方向ではなく、全世界で徹底的に商品単位で権利を取ることをするのが、一番筋が良いように思いますが、どうでしょうか?

 

企業の商標担当者としては、②については、いっそ表示しないと選択したくなりますが、そらは、逃げでもあります。

Ⓡを表示しないと、アメリカ、フィリピン、スイスなどの国で、損害倍書を得られない可能性がある等もあり、悩ましいところです。

商標権の棚卸を徹底して行い、敢えて困難な②の道を取るのが、強い商標管理につながるように思います。

 

AppleNIKE等に触発されたのか、一部の著名商標は、Ⓡを敢えて外しています。(米国判例で著名商標は、Ⓡがなくても、損害賠償を認められることがあるようです

著名商標なら、それもひとつの方法です。

これは、今始まった話ではないですが、大きな商標管理上の論点です。

 

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マツダが車名をMAZDAと数字に統一

MAZDAを強化する

2019年7月4日の産経ニュース(電子版)に、マツダが車名を、MAZDAと数字に統一するという記事がありました。

マツダが車名を一新へ 「MAZDA」と数字で統一 ブランド強化 知名度まだまだ - 産経ニュース

  • マツダが国内向けの車名を変更
  • 海外で使用している英数字を組み合わせた名称に統一する
  • 英数字の車名を基本とするのは、日本の自動車メーカーでは初めて
  • セダン系の「MAZDA」シリーズとクロスオーバー系の「CX」シリーズに統一
  • アテンザ」を「MAZDA6」
  • アクセラ」を「MAZDA3」
  • デミオ」についても「MAZDA2」
  • ロードスター」は、「国内のみの愛称であり、ある意味財産なので残していく」(例外扱い)
  • 車名に愛着をもつオーナーたちの意向にも配慮
  • このブランド戦略は、企業名と一体とすることでブランドをより鮮明にし、強化していく狙い
  • 独自技術群である「SKYACTIV」や「魂動デザイン」で国内でもブランド力を高めてきた
  • 同社にとって2019年度は、創立100周年(20年1月)を迎える節目
  • 新型マツダ3など新世代商品群の投入を機に、国内向けの車名を刷新し、ブランド力の一層の強化につなげていく構え

コメント

グローバル商品、特に自動車では、ブランド名+アルファベットや数字、の組合せは、商品名を作るときに良くあります。

BMWの1~7のSeriesや、Mercedes BenzのA-E Classなども、同じです。TeslaのModel 3、Model S、Model Xも、同じ系統です。

 

車の世界では、一般的な方法ですが、これまで日本では、独自の車名に拘ってきました。

トヨタでいうとカローラから始まって、コロナに乗り換えて、クラウンに乗り換えるというような車のアップグレード推奨戦術があったためだと思います。

また、一つの車メーカーが複数のデーラー網を持っていたので、基本は同じ車なのに、少しデザインを変えて、違う車名をつけることも一般的でした。

これは、国内市場の売り上げのためのネーミング戦略、ブランド戦略です。

 

しかし、車メーカーにとっては、国内の市場規模は大きなもののではく、海外の方が重要です。マツダのグローバル販売台数は、156.1万台で、日本は21.5万台とあります。圧倒的に海外比率が高いようです。

ここまでくれば、海外の車名に合わせた方が、コンセプトを伝えるにしても、販促ツールを共用するにしても、圧倒的に有利です。海外と同じ名前(グローバルネーミング)にすべきです。

 

グローバルネーミングにするとして、車種ごとに独自の名称を付ける方法はあるのですが、もう一つの方法が、この品番的商標です。

 

マスターブランド自体が、個性を持っている場合は、独自のネーミングを出すと、マスターブランドの個性と、サブブランドの車名の個性が混ざってしまいます。

欧州のBMWや、Mercedesが品番的なネーミングにする大きな理由は、これだと思います。できるだけマスターブランドの個性を生かすことが、有利という戦略に基づいています。

 

デミオですが、将来、MAZDAブランドが強化され、BMWのようなブランド力を得たときは、無くなるのかもしれないなと思いました。

 

この場合、他社との差別化は、技術ブランディングの「SKYACTIVE」や、デザイン原器を使った「魂動デザイン」などの技術ランディングが重要になりそうです。

マツダの「魂動デザイン」とは一体なに? 好評なマツダデザインの根幹に迫ります - newcars.jp(ニューカーズ)

 

もし、独自のネーミングをつけるとすると、

まず、ネーミングの問題があります。アテンザアクセラデミオとあって、これらが、海外で意味的に、好意的に捉えられるのかが、まず、問題です。グローバルに適したネーミングにできるかどうかです。ここは、インターブランドなどに頼るべきところです。

 

次に、商標権です。アテンザアクセラデミオが、第三者の既存の商標権に抵触して、使えない国がある可能性は高いと思います。これが得意な特許事務所、法律事務所を活用するという方法です。

 

使えない国は、使わないという方法もありますが、車種のコンセプトも国毎に考えないといけませんし、カタログも大幅に作り直す必要がありますし、当該国の売上減につながる要因が沢山あります。

 

結論、勢い、識別性のない、数字などになります。グローバル企業としては、正しい選択ということではないでしょうか。

 

ただ、1-7のSeriesや、A-EのClassや、Model〇〇も、ちょっとは違いがありますので、どのようなシステムを採用するか、検討が必要です。

また、海外では、英文字1文字でも商標登録されていることがあり、また、数字3文字も商標登録されていることがあります。同業他社を良く見て、それらと少し差別化する必要があります。

最近、ここでの商標の戦いが多くなっているような気はします。

 

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