Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標担当者になったときに読む本(その6)

はじめての仕事

はじめての仕事は商標調査です。新製品が半年後に出るということで、営業部から商標クリアランスへの協力の要請が来ています。

 

この会社では、国内の商標調査では、特許事務所に依頼するのではなく、自分達でする調査する事になっています。

 

商標調査は、特許事務所時代に相当経験しているので、問題なく対応できるはずです。

 

今回、事業部としては相当、力の入った新製品であり、事業部長は従来とは全く違う斬新なネーミングを要請しており、また、プロモーションの効率面からグローパルで通用するネーミングを求めています。

 

製品の機能の名称などであれば、事業部の商品企画やプロモーション部隊で作成することが多いのですが、今回は広報宣伝部も入り、更に外部の広告代理店やネーミングコンサルに依頼してネーミングをしているそうです。

コンペ形式で提案で大まかなコンセプトの提案があり、事業部長がどちらの会社を使うかを決めるとのことです。

 

商標調査を、広告代理店やネーミングコンサルにお願いして、そちらの提携特許事務所に調査してもらうことも可能ですが、それでは。後々、知財部が責任をもって権利取得や契約交渉することができないので、商標調査の仕切りを外部に任せることはありません。

 

商標の採用に当たっての社内の商標担当の権限は絶大で、Cさんの出す商標調査報告書で「使用可否」の判断は商標関係者の間では商標決裁と呼ばれているようです。

品質管理部が、製品の出荷の可否を決定するように、商標担当はネーミングの使用可否を決定します。

出荷停止は、製品審査担当が素案を作り、品質管理部の部長が判断する建前です。

 

これに対して、商標調査報告はCさんが起案して、A課長が検印をすることになっています。

 

この商標調査、特許の人にはすこぶる評判が悪いようです。

特許の場合は、先行技術調査は事業部の技術者が担当しています。何かあればそれは事業部の責任になります。

一方、商標の場合、知財部の判断です。それも使用可能とか、使用不可とか、結論を出します。

もしも調査にミスがあれば、その責任は知財部となります。

特許の人には、ここが理解されないようです。

 

 

 

 

商標担当者になったときに読む本(その5)

挨拶回り

ベテラン商標担当者のCさんが、まずは挨拶回りをしようと言います。

特許事務所では、クライアントの方から事務所に来ていただくことが多く、お客さんのところに行くことはあまりありません。

明細書を書く特許の担当者は、会社の研究所や事業部の発明者のところに行って、発明の内容を聞くことがあるようですが、商標ではクライアントの方から特許事務所に来るか、電話で事が足りることがほとんどでした。

商標調査のデータベースの会社や、システムの会社、翻訳会社など、取引先の方も、事務所に来てくれるので、ほとんど外出は不要です。

反対に、事務所にいて、膨大な書類と毎日格闘することが求められます。毎日、100通ほどのメールは見ますし(自分が返信すべきものは10~20通程度です)、事務所を半日空けると、滞貨が発生して残業が必要になるので、あまり外出を好みません。

 

そのため、同じ会社内で挨拶をするということだけでも、非常に珍しいものに感じました。

まずは、法務部です。法務部からは、M&Aの関係や、模倣品、商標条項の入った契約書の相談などがあると言います。法務部の皆さんに、Cさんが紹介してくれます。

 

「私」は、数年前に弁理士試験に合格した弁理士で、都内の中規模の事務所で、商標を担当していた。今回、縁があって当社に来てくれることになり、Cさんの後任として今後は、この会社の商標を担ってもらうことになりますので、宜しくというような説明です。

 

次は、経理部です。何か新しいことをするときは、稟議書を回して決裁をとり、決裁願には必ず経理部の確認が必要ということでした。アイディアを考えることが好きなCさんは経理の所長とも懇意なようです。

 

そして、総務部です。総務部は株主へ年2回レポートを出したり、株主総会を仕切ったりしているそうです。商標担当と付き合いがあるのは、新会社を設立したりするときということです。

従業員3,000人の会社ではありますが、関係会社は50社ほどあります。最近は、海外で新会社ができることが多いそうです。そのたびに、社名が議論になり、商標担当に確認が来るとのことです。

 

次に、デザイン部です。商品デザインは、会社の製品のデザインは、こちらでやっているようです。ドラフターなどはなく、コンピュータに向かってデザインしています。3Dプリンターがあり、考えた造形を直ぐに形にできるとのことでした。

意匠資料などもそろっていて、意匠出願は熱心にやっているようです。デザイナーなので、商標のロゴマークのデザインなどもするのかと質問しましたが、それはグラフィックデザインの仕事であり、こちらはプロダクトデザインで専門分野が違うといいます。

デザイナーというのも、専門分野が分化しているんだなと思いました。

 

最後に、広報宣伝部です。広報宣伝部は、花形のセクションで、ショウルームを運営し、企業広告を出し、マスコミ対応をします。また、会社のWebサイトを運営したり、ニュースリリースを出したりしているようです。

新しい商品が出るときのネーミングは、事業部門の営業部門が、商品の販促(プロモーション)の一環として商品宣伝等を担当しており、各事業部門の営業部門が、独自に商品ネーミングをすることが多いということでした。

 

これまでは、特許事務所の担当者だったので、企業の方というと商標担当者とばかりお付き合いをしていました。サービス業の会社などは、技術者がいないため、知財部そのものがなく、法務部が商標の仕事をしていることも多いのですが、法務部員はそれなりの専門家です。

 

会社に入ると、多くの人達とネットワークを組まないといけないんだなと感心しました。

特に、広報宣伝部門の方や、営業部門の方は、今までお客さんだと思っていた企業の商標部門の、その先のお客さんであり、商標の源流に少し近づいた感じがします。

 

 

商標担当者になったときに読む本(その4)

ベテラン商標担当者とのはじめての対話

B知財部長の話は、30分ほどで終わりました。来週あたりで、部で「私」の歓迎会をしてくれるとのことです。

B部長は経理に説明することがあるとのことで、時計を見ながら退出しました。相当、忙しそうです。

 

替わりに、直属の上司になるA特許出願課長とC嘱託社員が入ってきました。A課長からはパワーポイントを使っての説明です。ここ数年の国内外の特許出願件数の説明、重点技術分野、主要な係争事件など、主に特許の話の説明を聞きました。

A課長は入社以来ずっと知財部で、今は50歳代。特許のことは相当詳しいようです。契約や事件関係は別のD課長がいるのですが、A課長は、昔は契約もやっていたようです。

ただ、商標は畑が違うので、自分では指導できないと言います。

 

Cさんからは、国内外の商標出願の状況と、この会社の商標(ハウスマーク)の歴史についての話がありました。この会社は、戦後に出来た会社ですが、すでに70年の歴史があります。その間に、数回、ハウスマーク(ブランド)の変更があったようです。また、現在のブランドになって以降も、ロゴは数回変更しています。ただ、そのロゴの変更は1973年を最後にストップしていると言います。

ロゴマークの変更があるときは、予算がついて、国内外に広く商標出願するチャンスなのです。それがブランド変更やロゴ変更のある時期は出来ていたのですが、1973年以来は、大型のブランド出願が出来ていないというのです。

そのため、必要な国で、必要な権利取得が出来ていないときがあり、ここは課題だと言います。

この会社は、ある程度多角化に成功しており、以前の主力事業以外に、複数の事業が成長してきており、それらの事業はサービスも絡んでいると言います。この成長事業の外国でのブランドの出願が十分ではないようです。

 

また、Cさんは、ハウスマーク以外のペットネーム(ネーミング)にも、意見があるようです。アイキャッチの高い、駄洒落ネーミングや、国内では通用するが海外では通用しないネーミングが多く、本格ネーミングが少ないと感じているようです。ネーミングにも、品位品格が必要と考えておられるようです。

 

さらに、最近、広報・宣伝部門とは拠点が異なり、違う街にオフィスがあるので、意思疎通が十分でないという言います。以前は、本社にすべての部門がいたので、商標の話になると相談が直ぐに来たし、ネーミングの会議などがあると、会議に来てくれと言われたようです。ところが最近は、書面やメール中心の連絡になり、血の通った関係になっていないと言います。

 

このあたりが課題なのかなとなんとなく思いながら、知財部の導入受け入れが終わりました。

 

 

商標担当者になったときに読む本(その3)

はじめての知財

3日間の集合研修で、途中入社なので、年齢、性別はさまざまな同期とも親しくなりました。

さあ、企業における実際の仕事です。

 

9時始業なので、少し早めに会社に到着し、本社の人事部に立ち寄りました。

人事の課長から、本社事業場の説明と、本社の人事ルールの説明があります。従業員3000人の会社となると、事業部や営業所が複数あり、拠点ごとに独自の決まりがあるようです。

説明も一通り終わり、10時半ごろ、知財部に案内してもらいました。

 

知財部では、皆さんと簡単にご挨拶して、知財部長との話からスタートです。知財部長Bさんとは、入社時の面談のときに会っています。

 

知財部長は、技術出身の方ですが、事業部長経験もある方であり、広い視点で知財を見ることができる方です。

知財部長からは、「私」に何を期待しているかの話がありました。

 

嘱託社員のとなっている、商標担当のCさんは、もともとは営業出身の方で、流通の販売施策などを担当者していた方のようですが、40歳ぐらいに知財部に来たということです。それ以来、20年間ほど、この会社の商標を一人で担当していました。

英語は得意ではないようですが、営業経験があり、新しいアイディアを考えることが好きなので、施策を考えるのが上手であるとのことです。

部長の「私」への第一の期待は、Cさんから商標の業務知識を吸収して、一人で商標業務を担当できるようになってほしいということでした。

これは想定内の話です。

 

B部長から、知財部全体の話がありました。近年、会社は成長軌道にのり、特に海外事業が活性化しています。海外売り上げ比率も5割を超えているのすが、国内特許権の取得はいい線であるものの、事業規模に見合った外国特許権の取得が出来ていないと言います。

以前、アメリカで特許権侵害裁判の被告になったことがあり、アメリカ向けの製品輸出がストップするかと会社中が心配したということです。

この事件は、事業部の技術者が見つけてくれた先行技術のおかげで、相手の特許権の無効を裁判所が認めてくれ、事なきを得たということですが、社内の知財部を見る目は厳しいものになっているということです。これは期待の裏返しともいえます。

 

B部長は、知財部の目指すべきものとして、3つの考え方を提示してくれました。一つは徹底した知財調査による「事業の安全確保」、二つめは職務発明制度の適切な運用による「創作の奨励」、三つ目は「知財制度を経営に生かす」ということです。

一つ目は、アメリカの特許事件のようなものを起こさないということで、理解しやすでしす、二つめの創作の奨励も知財は特許=発明・考案についてのものですので、理解できます。三つめがポイントであり、日本や海外の知財制度は日々進化しており、新しい制度や他社の優良事例を見つけて、経営者に提言し、会社の仕組みを変えて知財制度のメリットを最大限会社に注入するということのようです。

 

B部長は、技術には明るいのですが、営業や商標には不案内ということで、「私」に対する期待として、ベテランのCさんが完全にリタイヤするまでに、Cさんの話を聞きながら、「商標」について「私」なりの考え方をまとめて欲しいと言います。

このような考え方があると、会社の他の部門の人々を説得したり、知財部員をまとめるのに、非常に有効であると言いことです。

大きな宿題をもらった感じです。

 

 

富士ゼロックスが契約更改せずこ

社名は「富士フィルムビジネスイノベーション」に

2019年1月5日22:00の日経電子版に、富士フィルムホールディングスは、ゼロックスとの販売提携を解消するという記事がありました。

富士フイルム、米ゼロックスに販売提携解消を通知 (写真=ロイター) :日本経済新聞

  • 現在は販売地域やブランド使用に関する契約を5年ごとに更新
  • 2021年3月末で契約終了(契約更新せず)
  • 2021年4月からの新社名は「富士フイルムビジネスイノベーション
  • ブランドは「富士フィルム
  • 今後は、欧米市場にも参入
  • 毎年100億円のブランド使用料は必要なくなる
  • ゼロックスへのOEMは当面継続
  • 富士ゼロックスは、これまではブランド契約の更新をする予定だった
  • ゼロックスが米HPに買収提案し、販売提携の解消を示唆する場面もあった
  • これを受けて自ら契約解消を打ち出した

とあります。

 

コメント

2021年3月末というと1年3ヶ月しかありません。新ブランドを考えて、使えるようにするのに、5年あれば何とかなかるかなと思いますが、1年3ヶ月という短い期間にグローバルで新ブランドを立ち上げるのは不可能です。日本の商標の審査のファーストアクションも、最近は12ヶ月かかると言いますので、商標の手当には全く時間が足りません。マドプロ出願でも18ケ月かかる国が多数あります。

 

記事によると、出てきた結論は、ブランド(商標)を「FUJIFILM」にするというものです。社名(商号)も「富士フィルムビジネスイノベーション」とあります。この時期に判断するなら、この名称しかないというところでしょうか。

 

社名が少し長いので、「富士フィルムビジネス」でも良いかと思ったのですが、現在の富士フィルムのスローガンが「Value from Innovation」で、「イノベーション」という言葉を大事にしていると思いますので、思いの入った社名ということもできます。

 

記事には1月5日にゼロックスに通告とありますが、正月休み中ですので、ニュースリリースも出ていません。富士ゼロックスの社員も、この記事には驚いたのではないでしょうか。

 

一方、ゼロックスに対し、OEM供給は継続するとあります。

しかし、ゼロックスが自分よりも大きなHPを買収できたとすると、製品調達のルートが変わり、ゼロックスが直接アジアでも販売するということがありえます。

そのような話もあったと記事にはあります。

 

ゼロックスとしても、HPなどの別の会社と提携できなければ、製品調達は今後も富士フィルムゼロックス(ビジネスイノベーション)頼みとなります。何か、まだまだ、動きがありそうです。HPなどとの提携が上手くいかないと、ぐるっと回って戻ってくるかもしれません。

しかし、その頃には、富士ゼロックス富士フィルムビジネスイノベーションとして、やっていると思いますので、今更、ゼロックスでも無い状態になっているはずです。

 

やはり、他人のブランドで商売するのは危険です。この先も、ドタバタがありそうです。その間にも、ライバルは先に行ってしまいます。

そう考えると、キッパリと「富士フィルム」にするのは、正しい選択であるように思えます。

 

それと、ブランド使用料100億円という記事に、注目しました。富士ゼロックスの2019年3月期の売上が、10,056億円とありますので、対売上比で1%です。

技術的な対価は、別途、支払っているのかもしれませんし、これ単独では評価し辛いのですが、それでもなかなかの金額です。

商標担当者になったときに読む本(その2)

導入研修を受ける

 

途中入社ですので、はじめから配属先は、知財部と決まっています。知財部長には入社時の面接でも話をしており、入社後は商標担当になることを知らされています。

 

導入研修は、3日間の座学の研修で、技術や営業や管理部門に配属されるすべての社員が受ける必要がある研修です。

知財部長から、導入研修は重要なので、注意深く聞いておくように釘をさされています。

 

新入社員でも、途中入社でも、研修担当からその会社のことを教えてくれる研修のようなものがあると思います。会社のルール、人事や経理のシステムの説明などです。

 

その会社の歴史であるとか、創業者の考え方、経営理念、子会社や関係会社、商品やサービス、販売先の話、収支の状況、業界の動向、注力している商品、今年度の経営方針や収支目標などを教えてもらえます。

このような話は、一般的には退屈な話に思えるのですが、知財部長の薦めもあり、商標担当者になった私は、一生懸命聞きました。

 

また、この種の情報は、商標管理やブランドマネジメントに関係しそうで、商標担当者になることを考えると、後々、非常に重要な情報になりそうだなと直感的に思ったためです。

 

実際、歴史や創業者の考え方、経営理念(企業理念)、子会社などの関係会社との関係は、商標管理やブランドマネジメントにおいて、核となる事項です。

 

ハウスマーク・ブランドは、歴史的に言葉自体変遷していますし、マーク(標章)も、数回、変わっているようです。商標管理では、案外古い商標が権利として残っていて、それが重要な権利だったりします。

商品やサービスの話は、商標はマーク(標章)と並んで核になる概念ですので、こちらも他人に説明できるぐらい熱心に聞きました。

 

関係会社は同じハウスマーク・ブランドを使っているようです。それをライセンスをいう方法で関係会社全体が使用できるようにしているので、何らかの商標契約がありそうです。このあたりの契約も、商標の担当にもなりそうです。

 

一方、創業者の考え方や経営理念は、ブランドの考え方(コンセプト)を決めるときに、重要な役割を果たします。ブランドロゴや、フォントといった外面的なところもありますが、

創業者の考え方や経理理念は、商標のライセンスと並んで、グループを統治するためにも使われたりします。

 

一緒に研修に参加した人は5名。配属先はバラバラです。配属先は、技術部に2名、営業部、法務部、人事部に各1名です。3日間という短い期間ですが、一緒に昼食をとり、夕方は飲み会をやって打ち解けました。

あとあと、この人達から、有形無形の助けを受けることになります。

 

 

商標担当者になったときに読む本(その1)

シチュエーション説明

企業の商標担当者になったばかりの方を対象にして、数十の小テーマからなる「商標担当者になったときに読む本」を書くとして、このブログで、一度プロトタイプを作ってみようと思います。

 

小野昌延先生、江口俊夫先生のように商標の体系書・入門書のように書く方法もありますし、木村三朗、先生、大村昇先生のようにビジネス書として書く方法もあります。

 

この点、実際の商標管理上の判断は、文脈の中で微妙に変化します。そのため、ありそうなシチュエーションを設定して、登場人物の経験を通して商標管理を描く方法が適しているようにおもいます。

ちょっと難しですが、こちらの方が、リアリティがあるので、こちらの方法を取ってみたいと思います。

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1.シチュエーション 

主人公は、実際の知財部に配属されました。

 

会社は、数十年前に設立された会社で、ある分野では日本のトップシェアを有しており、名前を聞くと皆が知っている会社です。

 

商標業務の規模は、商標権が日本において500件ほどあり(1年で20~30件の新規出願、年50件の更新案件)があり、海外でもハウスマーク(ブランド)を中心に、1,000件ほどあるとします(年100件の更新対象案件)。

 

知財部に商標課がある会社なら、商標課長がいたり、商標担当の先輩上司もいるので、その指導を受けることができます。しかし、残念ながら、この会社には十数名程度の陣容の知財部があって知財部長もいるのですが、商標課はなく、商標の先輩社員が一人いるだけです。 

 

商標の先輩社員は、すでに定年退職を迎えた方で、現在は嘱託社員として、週4日勤務していますが、数年後には完全引退することになっています。

現在、実務はこの嘱託社員の方が回していますが、次の世代が必要ということで、採用の募集がありました。

 

ここで主人公の「私」の自己紹介です。私は、大学の法学部を出て、特許事務所に就職して、商標担当をしていました。10年が経過したところでした。数年前、難関の弁理士試験にも合格しています。

今回、転職サイトで、この企業の商標責任者候補募集という記事を見つけて、応募し、入社しました。

 

特許事務所に勤務した理由は、大学の講義で聞いた特許法の授業が、法律の中では実学的であり、技術も関係して面白そうだったので、特許業界に狙いを定めて就職活動をして、同じ大学の先輩の弁理士が経営している特許事務所に入りました。

その特許事務所では、特許の仕事は、エレクトロニクス中心で、文科系出身者には、少し技術理解が難しかったので、商標・意匠の担当になりました。

 

商標の案件は多く、更新や調査、新規出願、意見書作成、審判請求書の作成などを担当し、国内顧客のみならず、海外からの出願依頼などにも対応していました。

日本から海外に出願する業務も、200ヵ国地域とはいきませんが、数十カ国は経験しました。

特許事務所の商標・意匠の業務は一通りは経験したと思っています。

更に、経験を積むために、一度、企業の知財部で勤務したいと思っており、今回、転職したということになります。弁理士ということで、専門家として期待されており、将来は商標課を作る予定ということで、当面、会社に慣れるまでは、ベテランの出願課の課長付きの係長待遇という処遇です。

 

入った会社の直属の上司は、特許出願を担当しているA課長です。A課長は特許のことなら権利取得から事件まで、何でも知っているのですが、商標のことは不案内であり、商標の類似判断など難しくてできないと言っています。

会社生活では頼りになる課長ですが、商標管理については嘱託社員と相談しながら、「私」が主体的に進めていく必要があります。

 

知財部長は、技術者出身の事業部長経験もある方で、社内調整や社長をはじめ会社幹部との折衝などを得意としています。

知財については、大所高所からのコメントをしてくれますが、基本的には権利取得と事件関係の2つの課の課長に任せています。商標や知財法の細かいことは良く知りません。

 

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こんなシチュエーションではどうでしょうか。