Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その10)

 

商標法の沿革

商標の保護は、万葉集室町時代にあるそうですが、商標制度が整備されたのは明治以降ということです。

  • 明治17年(1884年)商標条例:我が国最初の工業所有権法規。登録主義、先(出)願主義、先使用権、一商標一出願、公示主義、存続期間、更新登録、商品類別
  • 明治21年1888年)商標条例:審査・審判の制度、特別著名(特別顕著)等の概念導入
  • 明治32年法:パリ条約加盟対応
  • 明治42年法(1909年):周知商標、連合商標、不使用による商標登録取消審判制度、抗告審判制度
  • 大正10年法(1921年出願公告、異議申立制度、拒絶理由の通知、再審査制度の廃止、抗告審判請求、大審院出訴の制度、団体標章、権利不要求、商標登録取消審判
  • 現行商標法(昭和34年法)(1959年):商標、登録商標、標章、使用を定義、団体標章制度、着色限定制度、権利不要求制度、権利範囲確認審判制度を廃止、識別力を登録要件に規定、存続期間を20年から10年に、商標権の設定・商標権の移転において登録を効力発生要件に、防護標章を規定、分類数を国際分類の数に合わせた
  • 昭和50年(1975年):商標使用義務の強化(昭和47年から48年次にかけて商標登録出願は20万件近くになり、滞貨が拡大)
  • 平成3年改正(1991年):サービス・マーク登録制度
  • 平成8年(1996年)、10年、11年改正:TLT、マドプロ対応
  • 平成14年、15年、16年改正
  • 平成17年改正:地域団体商標制度
  • 平成18年改正:小売等役務商標制度
  • 平成20年、23年改正

コメント

1884年明治17年)の商標条例は、登録主義と先願主義ですので、ドイツの影響ということでしょうか。フランスは使用主義・無審査主義であり、イギリスは登録により権利が発生するという登録主義ではありません。そうなると消去法的に、ドイツなのですが、ドイツは1894年までは無審査なので、日本の商標も、当初は無審査だったのかもしれません。

 

日本で審査の規定ができるのが、1888年明治21年)で、ドイツが審査主義になるが、1894年からですから、審査はドイツよりも先になります。審査実務は、英国から学んだ可能性が高いようです。

 

法律はドイツから、審査は英国からというのが、自然な流れでしょうか。

 

1902年(明治35年)~1923年(大正12年)が、日英同盟の期間です。明治42年法、大正10年法は、商標法的にも、英国の影響が色濃く出ているように思います。

 

一方、1909年(明治42年法)の連合商標や、1921年(大正10年法)の出願公告、異議申立、権利不要求などを見ていると、相当、英国法の影響があるようにおもいます。

当時最先端だったのが、1905年の英国法ということで、その影響があるのではないでしょうか。

 

1959年(昭和34年法)の制定時は、使用許諾制度の採用など、アメリカ法の影響が多いと思います。

当時、圧倒的に経済力があったのはアメリカですので、それを勉強しないはずはありません。

そも後のサービスマークや、新しい商標もアメリカ法の影響があります。

防護標章登録制度は1959年(昭和34年法)で導入なんですね。この時代、日本でも著名商標の保護が必要になったのだろうと思います。

手元の日経文庫の「商標の知識」(小野昌延、江口俊夫著)のソニーチョコレート事件を見ていると、ハナフジ製菓㈱が「菓子、パン」に、「SONY」を出願したのは、昭和31年8月とあります。

 

 

新・商標法概説(その9)

商標の沿革と発展

<前史>

古代、中世の標識と、近代的な商標の区別ですが、ここは本を、読んでもらうしかありません。

 

中世のギルドの生産標(production mark)は、生産者の利益のための標識ではなく、ギルドの信用を守るための標識であり、同一品質を保証するものではなく、最低品質を保証するものだそうです。

 

近代になり、組合制度が崩壊し、営業の自由が確立して、義務的な標識から、積極的な商品の出所表示としての、近代的な商標に発展したとあります。

 

当初は、偽造罪、詐欺罪だったので、特別刑法的な保護に発展し、民事的な保護になし、そして、今日のような制度になったとあります。

 

<各国の動き>

1.フランス

  • 世界最初の商標法「製造標及び商業標に関する法律」(1857年):使用主義、無審査主義
  • 1964年法:登録主義へ
  • 1991年法:EC統一理事会指令により、相対的登録要件について異議申立てを認めた

2.イギリス

  • コモン・ロー(普通法)により、詐称通用訴訟で商標の冒用に対する救済
  • 1905年法:フランスに50年遅れて、商標保護のための統一的制度がスタート
  • 1938年法:使用意思で登録できる、審査主義、出願公告制度、連合商標、使用許諾制度、防護標章制度、権利不要求制度など
  • 38年法は、出願は使用意思で足り、アメリカのような純粋な使用主義ではない。一方、登録は設権ではなく、商標所有の推定的証拠となるにすぎず、日本やドイツような登録主義とも異なる。

3.ドイツ

  • 1874年法
  • 1894年法:審査主義
  • 1936年法:近代的な商標制度。出願公告なし。特許庁から先願者に通知、異議がなければ登録する制度
  • 1957年法:出願公告
  • 1967年法:不使用による登録取消など使用強制制度
  • 1979年法:サービス・マーク
  • 1995年法:新商標法(標章法)・・・EC理事会指令に則り改正。出願商標と先願との類否は、異議申立てをあってはじめて審査する登録後異議へ。
  • 周知形態表示の「表装」は、商標法と不正競争防止法の双方で保護

4.アメリ

  • 1870法は憲法違反(違憲)に
  • 1881年に州際通商条項を頼りに、連邦商標法制定
  • 1946年法(Lanham法、ランナム法):使用主義の徹底、使用意思では足りず現実の使用を必要とした
  • 1989年法:出願時は使用意思で良いが、登録には使用が必要とした
  • コモン・ローの保護(パッシング・オフ)、州登録の保護、連邦登録の保護がある
  • 世界で最初に、サービス・マークを認めた

5.CTM(EUTM)

  • 1996年制定
  • 単一の出願により、EU全域に亘って商標登録、独占的な権利を取得できる
  • 絶対的拒絶理由は審査をするが、相対的拒絶理由は異議待ち審査
  • 加盟国に1つにおいて不登録理由があれば登録が認められない
  • 国内出願に変更は可能

 

コメント

各国、色々と変遷しているなと思いますが、使用主義や登録主義は、双方歩み寄る形で、収斂しつつあるなという気がます。

本当は、ドイツ法は、もっと研究すべきなのですが、日本人が出願するときは、EUTMになるので、研究不足になりがちです。

 

1936年法から、先願との関係は相対的だったようです。日本の類似概念の重視は、英国法の影響でしょうか?

 

さて、小野先生は、米国法のことをランナム法と記載されています。発音通りに書くとランナム法です。特に、人名ですので、このように書くのが正しいと関西では言われており、ランハム法という記述は間違いと関西では指摘されます。

 

「ヘイグ」と「ハーグ」のようなことに、将来なるのであれば、できるだけランナム法と記載すべきだなと思いました。

 

 

 

新・商標法概説(その8)

商標の機能

基本的な機能を、識別機能としながら、そこから生じた機能として、出所表示機能、品質保証機能、広告機能があるとします。

強い商標(造語)、弱い商標(品質・性能表示語)とありますが、弱い商標でも永年使用すると強い商標になることもあるとします。

 

1.出所表示機能:

その商品又は役務の出所を表示する機能。

出所表示機能は、商標の識別力に由来。出所表示力により、品質保証機能、広告機能が出てくる。

一定の出所認識があれば良いとされる。

営業者から眺めた場合の機能。

 

2.品質保証機能:

同一の商標には、同一の品質(質)を有しているという需要者からの期待があり、商標はそのような期待に応える作用をする。

購買者から眺めた場合の機能。

一定の品質であるという需要者の期待であり、営業者はその商品の品質の維持改良に努める。

品質保証機能が、広告機能の元になる。

 

●品質保証機能に関して、欧州では、選択的販売制度と安売り店によるイメージの毀損という論点がある。

 

3.広告機能:

商品・役務を広告宣伝する作用。需要者は商標を記憶し、商標自体に一定のイメージを思い浮かべ、その商標を付した商品・役務に愛着さえ覚える。サイレントセールスマン。

広告には多大の費用がかかり、商標に化体した価値も極めて大きい。

商標の財産性(価値評価、ライセンス)は、商標の広告機能にある。

 

●広告機能へのタダ乗り(Free-ride)の防止が必要で、商標の広告価値の希釈化(ダイリューション:ドイツの理論をアメリカが借用)や商標のモチーフ侵害などの法律問題が生じる。

 

コメント

ここでは、通常の説明と同様に、出所表示機能が出ています。本のはじめの方で、識別機能、品質保証機能、広告機能だけだったとのとは違います。

 

それはさておき、機能論は、侵害論だなと思いました。登録要件論に、多少は絡むのかもしれませんが、侵害判断の理由になる感じです。

 

通常の出所混同を中心とした侵害(25条、37条)は、出所表示機能に絡むものですね。

同意書を認める国は、基本は当事者が混同しないから同意書を認めるのであり、混同するなら、同意書が発行されるようなことはありません。

 

さて、本の後ろに説明があるのですが、

「選択的販売制度」とは、化粧品とかの豪華な製品を、特定の店だけで販売して、一定の良いイメージを維持する制度だそうです。

真正商品を安売りされると、商標のイメージ、広告機能が害されるとあります。そのため、選択的販売制度下の真正商品の安売りは商標権侵害なるという主張があるそうです。欧州では、有力学説が支持しているとあります。

 

タダ乗り、希釈化は分かるとして、モチーフ侵害というのは、何かな?と思いました。

「モチーフ」ですが、物品と離れた単なるモチーフの侵害は、意匠権侵害ではないとか、あるいは著作権で見る言葉のようです。

商標の場合は、BOSSとBOSU、PUMAとKUMA、フランク・ミュラーとフランク三浦、このあたりのことでしょうか?

 

出所混同は生じないが、商標のイメージを借用している、イメージを害するということで、品質保証機能や、広告機能の侵害と構成することができるのだろうと思いますが、原告が出所混同を中心に立論すると、負けてしまう可能性が高いように思います。

商標の財産的価値の毀損も、立証が困難ですので、品質保証機能を害するあたりが証明できないと苦しいのかもしれません。

 

選択的販売制度は、重要な論点かもしれません。アップルのやっている家電量販店への契約などは、まさにこれではないでしょうか。 

 

ダイリューションが、元々はドイツ法理論であり、よって、日本法にも容易に適用できるものという話は知りませんでした。

新・商標法概説(その7)

商標に隣接する標識

ここでは、商標と用語が混同されやすいものについて、比較をして説明しています。

  1. 商標と意匠
  2. 商標と著作物
  3. 商標とスローガン
  4. 商標と商品の形態
  5. 商標と氏名
  6. 商標と商号
  7. 商標とサービス・マーク

 

重要だろうと思ったのは、商標と商品の形態です。ドイツ商標法は商標法において商品の形態を保護し、イギリス法はゲット・アップ、アメリカ法はトレード・ドレスで保護するとあります。

これらは、物品の外形について、商品それ自体、その包装、容器などの外形のみならず、商標に関する広告看板等の形状なども場合により保護し、平面的なものであると、立体的なものであるとを問わず、商標と同様な保護をするとあります。

 

そして、商標法に規定された商品形態の保護と不正競争防止法における保護について、ドイツ法は、「優先の原則」で抵触関係を決定するとしています。

すなわち、商品形態が取引上で適用するに至った日と登録商標の出願日といずれが先であるかによって、両標識間の優劣が決せられる。

不正競争防止法における周知の商品形態の保護と立体商標登録との抵触関係については、わが国においては、なお議論が統一されていないとします。

 

コメント

立体商標と、不正競争防止法の周知の商品形態の保護の優劣ですが、本の記述ではドイツ法では不正競争防止法は、「商品形態が取引上で適用するに至った日」とあり、商品形態が取引上で周知・著名になった日ではありません。

周知・著名でなくとも、使い始めれば、その日が優先日になるとすると、商品形態については、立体商標の出願日と使い始めた日の、優先順位で決することになります。

 

ドイツ法は登録主義といいますが、この部分は使用主義との折衷です。

 

実際の商品発売日と、商標出願日をする日とでは、業種にもよりますが、発売の3ヶ月~1か月前には、商標形態も特定され、商標出願を出せる状態にあると思います。

そういう意味では、発売日と出願日は近接しつ日付の争いです。

 

日本では、商品形態は、意匠で出願して、商標出願するのは周知になってから後追いで出願することもある、という程度の運用が多いと思いますので、ドイツ法の想定する状態はめったにない話なのかもしれませんが、ドイツ法の「優先の原則」は、面白いなと思いました。

 

この「優先の原則」を、小野先生は立体商標のところで、紹介していますが、もし、通常の平面商標でこの「優先の原則」を持ってきたら、どうなるのかと思いました。

同じ商標が、一方は、2020年6月24日に出願して、もう一方は、2020年6月25日に発売するというのではあれば、出願した方が勝ちます。

しかし、出願日は同じで、発売日が2020年6月23日なら、先に発売した人が勝ちます。

 

衡平の感覚としては、先に発売した人を勝たせても良いように思います。これを当事者間だけの話にするか、より強い効力を発売に与えるかはありますが。

ドイツ法では、平面商標については、実際、どうしているのかなと思いました。

 

ドイツ 商標法 2 | 経済産業省 特許庁

特許庁の訳を見ると、4条ですが、登録を取得するか、あるいは、取引において商標を使用すれば(二次的意義を獲得している場合に限る)、商標が保護されるとあり、商標登録と先使用に、商標保護に優劣はなく、どちらでも商標の保護が発生するようです。

 

登録と先使用間の優劣は、一般的に、登録は出願日を基準に、先使用は先使用日になるんでしょうか。

ドイツは、登録主義と習ってきましたが、ここ次第によっては、登録主義と使用主義の折衷制度のようです。

 

使用義務違反の商標は違法であったり、不使用では権利行使できなかったり、ドイツ法は深いですね。

新・商標法概説(その6)

商標の種類(分類)

商標の種類は、1構成、2機能、3使用主体、4その他から分類できるとしています。

1 構成上の分類:商標法の商標の定義(構成要素)に沿った分類です。

  1. 文字商標
  2. 図形商標: 歴史的には最も基本
  3. 記号商標: 三井、島津のマーク、ルイ・ヴィトンのLVマーク
  4. 色彩商標
  5. 立体商標
  6. 結合商標

2 機能上の分類:何を対象物にしているかに沿った分類です。

  1. 商品商標: 商品標(マーチャダイズ・マーク)だが、営業標(ビジネス・マーク)になるときもある。「ソニー」のように、当初、個別商標だったものが、営業全体を示す、企業商標(ハウス・マーク)になることもある。
  2. 役務商標(サービス・マーク)
  3. 営業商標: 社章(ハウス・マーク)のような営業を示す標章が、営業商標の典型。営業商標は、営業を示す企業標でもある。個別商標が企業標に発展した例は、ソニーシチズンサントリー大関
  4. 団体商標・地域団体商標: 大正10年法では団体標章、昭和34年法で使用許諾制度の導入で廃止。平成8年に国際的調和の観点で、団体商標として再導入。平成17年に地域団体商標制度導入
  5. 等級商標: 例として、サントリーのトリス、サントリーレッド、サントリーオールド、サントリーリザーブサントリーロイヤル、インペリアル。サントリーの付いたものは、サントリーの派生商標でもあるし、ファミリー・マークでもある(※今のサブブランドの用語に通じるものです)

3 使用主体による分類:使用主体に着目した分類です。

  1. 製造標: 販売標のみのときよりも、製造者に有利。商標採択における製造業者と販売業者の主導権争い
  2. 販売標: 販売業者による商品の選択を示す。一定の品質保証機能あり。時に、1つの商品に製造標と販売標が併記されることがある(ダブル・チョップ/double chop)
  3. 役務標
  4. 証明標: 米国法では証明標(collective mark)は、通常の商標とは別に規定

4 その他の用語

  1. ファミリー・マーク
  2. 造語商標:coined markの他に言い方として、arbitorary mark。1986年改正前の英国法では、防護標章は造語に限定されていた
  3. 貯蔵商標(ストック・マーク): ドイツでは、商標の使用義務違反であるから、不使用猶予期間を超えたストック商標は違法としている。日本では審査が長期なので、商品開発のいざというときのため、ストック商標が極めて多いが違法という認識は薄い。
  4. 広告商標: キャッチフレーズ、スローガン
  5. プライベート・ブランド: かつては商品商標は、メーカ・ブランド優位であった。卸売り業者や大型小売業者のような販売業者が力をつけてきた。製造業者の製造標を付さず、販売標だけを付したもの。販売標の一つ

コメント

法的に重要だなと思ったのは、ストック商標はドイツでは違法であるという記述です。小野先生は、ドイツ法に通じている方ですが、違法というのは、どういう意味でしょうか。

ドイツでも不使用取消で取消されるまでは商標登録はあります。ただ、権利行使は不使用ではできないと規定されているので、日本以上に空権です。

それで十分であり、違法とまでする必要があるのか?と思いました。

使用義務を、本当の義務と考えないと、違法にはなりません。

ここは、ちょっと気になります。

 

一つの商品に、製造標と販売標の2つがつけられる、ダブル・チョップという言葉は、営業の人から良く聞く言葉ですが、商標法の教科書にもあるんですね。

商標部門では、ダブルブランドと言っていました。

チョップという言葉ですが、空手チョップの「チョップ」は、「手刀」を指すようです。そもそも、動詞で「(斧で)たたき切る、ぶった切る」という意味のようです。しかし、それでは商標の上の意味では、意味を成しません。

おそらく、「chop」は、多義語のようですが、「(インド・中国で)官印、免許状、許可証。(英略式)品質(quality)」の、こちらの意味ではないでしょうか。

結局、調べた範囲では、不明でした。

 

30年前に大学の一般教養の商学の授業で、卸有利の時代から、交通・広告の進歩に伴ってメーカー有利の時代になり、また流通有利の時代になりつつあるという話を聞きましたが、商標制度は19世紀・20世紀的な面があり、メーカーの時代の雰囲気がします。

21世紀になり、ユニクロのようなSPA(製造小売業)の時代になりつつあります。時代は卸有利の時代にもどるのか、あるいは、ダブル・チョップが増えるのでしょうか。

この点、商標法は、何の調整もしていません。小野先生のいうように、弱肉強食の世界です。

新・商標法概説(その5)

立体商標

標章は、標識の一つであり、標識には、視覚を通じて捉えらるものの他、聴覚、嗅覚・味覚・触覚で捉えらるものも標識としての機能を果たすことができる。しかし、動的商標や音響商標はまだ商標法上の商標とは捉えられいない(※当時)。

 

米国からスタートし、欧州各国など立体商標を認める国が増え、書評制度の国際的調和のために、平成8年で立体商標制度が導入された。

 

立体商標の運用には、識別性が重要であり、商標審査基準には、「指定商品の形状(指定商品の包装の形状を含む。)又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない商標は、本郷の規定に該当するものとする。」としている。

 

商標法の保護が永久権であるのに対して、製品等と相対的な特徴がある程度で立体商標登録を認めると、現実には意匠法と重畳保護され、意匠法による保護制度そのものの存在意義を問われかねない。指定商品やその容器の機能的・不可避的な立体形状そのものである場合には不登録とする厳しい運用が必要不可欠をしないと、産業発展の邪魔になり、公正かつ自由な競争秩序をかえって訴外するおそれがあり、商標法1条の立法目的に反するというのが、理由のようです。

 

そのため、商品の形状等の場合は、3条1項3号に該当するとされるものも多く、審判でも認められずに、審決取消訴訟に継続し、裁判で登録になった例が多数あります。

登録にならなかったものとしては、

  • ギター用駒の形状事件
  • ひよ子事件

などです。

 

立体商標のための規定も多数あります。

  • 特別な不登録理由として、4条1項18号(不可欠な立体的形状のみからなる商標」を不登録理由とする)ができ、3条2項で識別力が生じても登録できないと解釈しています。
  • また、商標権の効力が及ばない範囲が改正され(26条1項5号)、不可欠な立体的形状のみからなる商標は、使用しても侵害追及されることもありません。
  • 権利調整規定も、従来の意匠や著作権のみならず、特許や実用新案まで及んでいます(29条、意26条)。
  • 特許権存続期間満了後の立体商標の使用をする権利(33条の2)の規定もできました。

 

立体商標の類否判断は、立体商標同士の類否の他に、立体商標を特定方向からみたものと平面商標でも類否判断するとあります。

 

コメント

この本の初版の出版時は、いわゆる新しい商標はまだ登録できず、立体商標の登録は可能という時期でした。そのためか、立体商標については丁寧に説明があります。

 

小野先生が、「標章」の前に「標識」を認識しているのは、立体商標の説明のためだったようです。

 

平成8年の法改正のときは、知財協会の商標委員会のメンバーだったので、議論なども聞いたことがあります。

最近の新しい商標の法改正に比べると、立体商標は、非常に丁寧に、立体商標の条文を作っているなという印象があります。

 

新しい商標では、他の法律との調整がすくないという点が、立体商標との違いでしょうか。

 

昨年、話題になっていた「店舗の外観・内装の保護」が立体商標をベースに運用されるようですので、このあたりが現代的な論点でしょうか。

https://www.jpo.go.jp/faq/yokuaru/trademark/rittai_faq.html

 

しかし、コメダ珈琲の店舗を商標出願するとして、アワリーで検討費用はもらうとしても、本気で取り組んだら、数十時間で済むかなと思います。

商標だけでも、先行事例調査、特徴の把握、出願する商標の決定、図面の書き方(実線と破線)、商標の詳細な説明の記載、などがあります。

 

意匠で出すか、商標で出すか、双方で出すなら、双方の法律に従った準備が必要になります。

 

これは、大変だなと思います。

出光の給油所ブランド

アポロマーク+apollostation

2020年6月20日日経新聞に、出光興産の全国6400ヵ所の系列ガソリンスタンドのブランドを2021年4月から「apollostation(アポロステーション)」に変更するという記事がありました。

 

  • 給油所のブランドは「apollostation(アポロステーション)」
  • 旧出光のアポロマークをロゴに
  • 太陽神の顔
  • 会員カードも共通化し、消費者の利便性を高める

 

出光興産のWebサイトにニュースリリースが出ていました。

当社ブランド(コーポレート及びSS)を刷新 | ニュースリリース | 出光興産(出光昭和シェル)

 

  • 一連の系統統合プロセスに目途がついた
  • コーポレートブランドの刷新は7月から
  • SSブランド(給油所、ガソリンスタンド)の刷新は2021年4月から

アイコンについては、

  • 「人が中心の経営」を標榜するため人を象徴するものであること
  • ブランド資産を継承するものであること
  • 「新しさ」「エネルギッシュ」「カッコよさ」「洗練」といった要素を加味して、新たに開発
  • アポロは理想の人の姿との意を持つ。目指す姿に合致すると考えている

 

f:id:yoshikeke:20200621094108p:plain

とあります。

二つのマークで、赤の色が少し違うようです。

 

コメント

3ヶ月ほど前に、日経の記事で、アポロ―マークを軸に検討中とあったので、社名ごと「アポロイル」にしてはどうかと考えて案を書いたのですが、やはりそうはなりませんでした。

 

nishiny.hatenablog.com

 

社名は出光興産から変更せず、アポロマークを単純化して、コーポレートブランドは「アポロマーク+idemitu」、SSブランドは「アポロマーク+apollostartion」というのは、現実的な選択肢であると思いますが、斬新的にとどまる面があります。

 

アポロマークは、相当、単純にしたようです。過去にも単純化しているようですが、今回は、相当単純化しています。

 

アポロマークを生かすなら、給油所のブランドが「アポロステーション」になることは良いと思います。アポロマークと「出光」「IDEMITSU」の不一致という問題が解決しますので、「ENEOS」と戦えるなという気がします。 

 

確かに、海外でも、プロの間には「出光」「IDEMITSU」は有名なのだと思います。国内でも「出光」「IDEMITSU」は、一般消費者にも相当有名ではあります。

 

しかし、社名は「出光興産」、コーポレートブランドは「アポロマーク+idemitsu」、消費者に最も身近なSSブランドが「アポロマーク+apollostation」では、イデミツとアポロステーションの不一致問題が起こります。 

 

これから、出光興産は、消費者に対するCMを積極的に流すと思いますが、そのときは「アポロマーク+apollostation」を露出し、「アポロマーク+idemitus」のコーポレートブランドを極力、露出させないことが大切です。

アポロマーク+idemitus」のコーポレートブランドは、IRや名刺の世界に止めるべきです。

あくまでも、消費者に覚えてもらうのは、「アポロマーク」と「apollostation」で十分です。

 

ENEOSは、さすがに一周先を行っており、2020年6月の株主総会での承認を条件に、JXTGホールディングスから、ENEOSホールディングスに社名変更するようです。おそらく、10年程度で、その時が来ると思います。

 

アポロ株式会社、アポロホールディングス、アポロ●●株式会社にするかは分かりませんが、将来的には消費者に知られた言葉に、変えないといけない時期が来ると思います。

 

apollo」の場合、普通の辞書に載っている、良い言葉なので、商標登録取得の問題もあるかもしれないので、「アポロイル」はすべてを解決する案だと思ったのですが。。。