Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「マリカー」の議論(2)

ビジネスの視点

ビジネスの視点から今回のマリカーの問題を考えてみましょう。

① 宣伝効果がある

公道でマリオなどのキャラクターのコスチュームを着た人がカートを運転しています。カートに乗って街中を動き回るので、とにかく目立ちます。キャラクターの露出など、宣伝効果は抜群です。マリカーの人気で、マリオカートのゲームの人気に再び火が付き、任天堂の業績に好影響を与える可能性もありえます。

マリカーが人気になることは、任天堂にとってプラスの面もあると思います。

② 悪い影響もありうる

一方、トラックやバスなどの大型車も走る公道で、小さなカートが走るわけですので、事故が心配です。もし、マリオの乗ったマリカーが交通事故に巻き込まれたら、運転手は危険な状況になります。事故が起これば、マリオカートのゲームの人気に悪い影響がでるかもしれません(事故のあと、任天堂の責任を追及される法的な可能性は別問題としておきます)。

③ ライセンスビジネスの視点

中国の北京で、偽ディズニーキャラクターがいる遊園地として有名になった、石景山遊楽園のニュースがありましたね。これが許されると考える人は、日本には、ほとんどいないと思います。

そもそも、ディズニーの許可を取らずに商業上利用していることも問題ですが、

キャラクターの再現があまりに稚拙で、一目で偽物とわかるレベルであり、キャラクターのファンからすれば、ディズニーの世界観をぶち壊しているともいえ、石景山遊楽園を許せない一つの原因だと思います。

著作権や商標のライセンスでは、誰にライセンスするかということも大事な論点ですが、一番大切なのは、キャラクターの世界観とか、商品・サービスの品質(質)の確保です。今回、事前に任天堂の許可を取っておらず、任天堂の指導も入っておらず、世界観、品質の確保ができていないと考えられます。

④ 真似しようという人達を誘発

任天堂からすると、世界観とか品質とかが違うものが出てくると、本物の自体価値が低下します。

また、偽キャラクターを見逃すと、じゃあ私達もと、どんどん偽キャラクタービジネスが広がってしまい、収拾がつかなくなります。

今回は、東京のマリカーが対象ですが、大阪や名古屋や福岡で、違う業者が同じようなことをしだしたら、もう止められません。

任天堂が黙認し続けたら、最悪、このようなビジネスが、今後は止められないということになる可能性もあります(著作権は、商売とは関係ないので、商習慣は関係ないかもしれませんが。)。

⑤ 任天堂がリアルなマリオカート事業を計画しているとしたら?

任天堂なら、どこかと組んで、リアルにカート事業に参入する選択肢もあります。ディズニーランドのゴーカートのようなものを、どこかの遊園地で事業化する可能性は十分あります。

その時、マリカーが、今のまま、公道を走っているようでは、遊園地の安全なマリカーよりも、公道のマリカーの方が人気になる可能性も高く、任天堂の事業の成功を阻害する可能性もあります。

 

 

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