高収益で再課税
2017年3月10日の日経に、財務省が、海外への知財移転を活用した過度な節税策に対して、対策を検討するという話が出ていました。特許や商標を海外の子会社に移転するときには課税できますが、金額を過小評価した場合はそのままになることが多かったようです。今回は、海外移転後に大きな収入を上げた場合に、当該国ではなく日本から課税できるようにするようです。具体的には、5年後に見直すスキームを設け、20%以上の差額がある場合、再度課税できるようにする案のようです。米国やドイツに同様な制度があるとのことです。
コメント
AppleやGoogleが、タックスヘイブンを活用した所得税(法人税)の節税対策をしており、アイルランドやオランダを活用するので「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」などと言わる方法をとっています。グループ会社からの知財権使用料を考えるときに、制度設計上、気になる話題です。
知財権を所有する財産管理会社を、タックスヘイブン国に作って、世界中の売り上げからロイヤルティを吸い上げてタックスヘイブン国にお金をプールしておき、資金が必要なときはタックスヘイブン国からの投資とするという形態です。各企業としては、実行税率をさげて経営の安定度を図ることが目的です。
一方、当該企業が活動している本国としては税収不足ということになり、今回のような対策が必要になります。OECDも、タックスヘイブンを使った節税対策の規制には賛成のようです。自国の課税権の強化は、多少保護主義的な制度のような気がしますが、当面のトレンドになりそうです。
しかし、日本企業で、AppleやGoogleのような方法を採用している例はあまり聞きません。日本企業はグローバル企業ほど儲けていないからか、国際的なスキームを構築する国際税務や国際法務の能力がないのか、日本に税金を納めるべきという考え方があるのか、他社横並びが好きな国民なので同業他社がやっていないことには手を出さないのか、日本に対する愛着があるのか、理由は良くわかりません。
でも、グローバルで戦うなら、ある程度の節税策はとるべきなのだと思います。少し前のニュースで、トヨタが5年間も法人税を免れていたという話がありました。いろいろあって、そのような制度になっているのでしょうが、AppleやGoogleの節税策の方が考え方としてはシンプルで理解できる気もします。