Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

外国商標 指定商品・役務の考え方(2)

商品・サービスの粒度

以前の会社の、当時の実務の特徴としては、アメリカやカナダ、英国のような具体的商品を記載する必要のある国だけではなく、一般的にはクラスヘディングで十分という国まで、具体的商品・サービスを記載していた点です。単に使えれば良い程度なら、大概念(クラスヘディング表示など)で十分ですが、模倣品対策やライセンスに主眼をおいたため、個別商品指定が望ましいと考えたのです。WIPOのアルファベティカル・リストよりは、ずっと細かい粒度でした。

今から考えると、模倣品対策やライセンスする国は、ある程度決まっているので、その国だけ個別商品指定を徹底すればよかったのかしれません。アジアや中国で、模倣品やライセンスの時、具体的商品が指定されていないために苦労をしたので、反動でこのような状態になってしまった面があります。

実際の個別商品は、アルファベティカル・リストに記載のない商品名ばかりですので、カタログやWebページを準備し、いつでも提出できるようにしていました。商標なのか、商品の普通名称なのか、判別できないものも多かったと思います。

この点は、視点を変えると別の見方もできます。時代とともに、会社の商品・役務が変化しますので、個別商品というのは、事業感覚にも合致する面もあるのです。TVやエアコンなど時代を超えて不変の商品もありますが、部品などを中心に、全社では毎年数%程度の商品の入れ替わります。10年もすれば商品・サービスがごっそり入れ替わるイメージです。

下手にクラスヘディング表示や、アルファベティカル・リスト程度の「粒度」で商品・サービスをまとめるよりも、徹底的に個別の商品・サービスにこだわるのは、この事業の感覚には合致するのです。

なお、出願にあたっては、3Mのように新しい商品・サービスだけを追加で出す方法もありますが、前の会社は、すでにある商品・役務を含めて、全部取り直す作戦でした。

これを徹底すると、理論上は、商標権の更新出願は不要ということになります。すでに同じ国、同じ分類で、多くの権利があるような状態では、権利関係が重複・錯綜しており、このような置き換え出願に合理性がありました。(特にローカル分類から国際分類に再分類された国などは権利が細かくなり過ぎ、整理が必要でした。)

ライセンスで権利番号を特定していない限り古い権利は放棄すれば良いのです。更新制度よりも新規出願の方が費用は高いのですが、最新の権利があれば最新の商品・サービスに最も近い権利があるのはメリットです。