Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

米・マクドナルド

台湾の子会社売却

2017年3月29日の日経に、アメリカのマクドナルドが、台湾子会社の株式を売却するというニュースがありました。売り先は、台湾のホテル大手の総経理の個人の会社ということです。

headlines.yahoo.co.jp

中央社フォーカス台湾のYahoo Japan掲載の記事によると、売却額は、約51億台湾ドル(約187億円)での売却ということです。

マクドナルドは、2015年6月に、台湾で直接経営を止め、他社とのライセンス契約をする方針だと発表していたようです。

 

コメント

記事からは明確ではないのですが、今回は100%譲渡のように読めます。

少し前であれば、大切なブランドのライセンスは、100%出資会社か、少なくとも51%超の子会社で、十分に経営コントロールできないところにはライセンスしないというのが、基本的な考え方でした。

特許のライセンスは、資本関係などは関係なしに行うことが基本です。しかし、商標のライセンスは大きく異なっていたのです。

その考えからすると、本件はイレギュラーです。

 

過半を出資する会社(子会社)以外にライセンスすると、結局、資本で経営コントロールができない会社なので、商品の「品質」、サービス(役務)の「質」を維持できず、思ってもみない商品、サービスによって、ブランドの人気が低下する・ブランド価値が維持できなくなる・顧客にも迷惑をかける、という考え方です。よって、法的に経営コントロールができない会社にはライセンスしないとなります。

しかし、最近は、マクドナルドの属する飲食業界や、IT情報通信業界、食品業界などで、資本を前提としないライセンスが、世界的にも増えてきているように思っています。直接進出するとなるとコストやリスクの負担が大きすぎるからでしょうか。(欧、米、日本の電機メーカーの家電事業撤退時のライセンスとは違い、これらの業界は本家の業績が悪くないときにも商標ライセンスビジネスをしていように思います。)

 

資本関係のない(薄い)会社に商標や商号をライセンスするとなると、業務手順のマニュアル化や、品質のすり合わせ、ブランドイメージの評価・ブランド表示のコントロール、ブランドライセンス契約書や、ブランド監査・品質監査など、これらの業務が必須となります。

このあたりは、日本企業、弁護士・弁理士監査法人なども、まだまだ不得手な部分ではないかと思います。

換言すると、折角日本で良いビジネスモデルができても、それを世界で展開する力は、日本企業はまだ高くないと思います。

日本のコンビニエンスストアが、海外でもアジアの合弁先と事業をやっているようなので、このあたりから日本の商標のブランドライセンスのノウハウが蓄積されていくのでしょうか。

 

日本企業も、最終的には、資本関係のない会社でも商標を中心にコントロールするところまで行きたいものです。