Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

グローバル商標を創る過程で

同意書と共存契約書

グローバル商標を作る過程では、余程、独自の長い名称でもない限り、他人の商標との抵触ということが必ず出てきます。
特に良い名前であればあるほど、誰かが先行して使っているので、必ず引っかかります。

  • そこで諦めると、グローバルで、その商標を使った商売ができません。
  • 相手方と合意せずに、そのまま使うと裁判になり、負けてしまいます。

そこで、同意書や共存契約が出てきます。場合によっては、買収・使用許諾もありえます。この業務をしているときは、商標担当者の血が騒ぐときです。会社の将来に影響を与える、重要な仕事だからです。

- 同意書
国によりますが、商標出願の審査で、第三者の権利に引っかかったとき、その権利者から同意書をもらえば登録してくれる国があります。完全に類似はしていないとか、関心の商品ではない(例:自転車と自動車)とか、もう使っていないが権利は持っているとか、のとき、同意書(letter of consent)をもらうえることが多いと思います。無償がほとんどですが、有償のときもありえます。有償のときは、使用許諾と考えても良いと思います。

- 共存契約
一カ国ではなく、ある相手方と多くの国でも問題を起こすときがあります。そのとき、国ごとに同意書を取るのではなく、まとめてグローバルに共存するために契約することがあります。Co-existing Agreementです。全く同じ商標か、類似の商標が多いと思いますが、A社はこの分野には進出しない、B社もあの分野に進出しないというように、何らかのすみわけをするわけです。このあたりは、役員会議にかける内容となります。

- 商標の買収・使用許諾
どうしても使いたいなら、この方法となりますが、相手も目下盛業中で商標を使用している場合、相手にしてくれません。営業やマーケティングの人は軽く何とかしろと言いますが、相手方があることなので、なんともなりません。間に挟まれ、商標担当者は苦しみます(いい経験にはなるのですが)。

- 相手との我慢比べ
時が解決することを期待して、我慢比べということもあります。10年も経つと相手の事情が変化していることもあります。ハウスマークの権利化は、数十年スパンで面倒を見ないといけません。そのため、入社して、ずっと商標という人が居たりします。

- ちなみに、苦労の跡が認められる、有名なケースとして、コンピュータの米アップルと、ビートルズで有名な英アップルレコードのケースがあります。
アップル対アップル訴訟 - Wikipedia

ハウスマークで抵触問題が発生したときは、商標部門は大変なことになります。創業からグローバルに権利がとれるまでは、この苦労がありますので、相当優秀な担当者を商標担当に張り付ける必要があります。ハウスマークですので、地域ごとに違うものを使うこともできませんので、誠心誠意、相手と話合うしかないと思います。

昔は、欧米企業ぐらいしかハードルになる相手方がいなかったように思います。また、グローバルに権利数が圧倒的に少なかったので商標選択の自由がありましが、これからとなると昔の企業よりもハードルが高くなっています。今登録されているブランドは、宝物のようなものです。