Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

サマンサ田端

「フランク三浦」の二の舞にならないように

Yahooニュースで、栗原弁理士の記事を読みました。サマンサタバサが、「サマンサタバタ 」を出願したようです。パロディ商品の「サマンサ田端」というバックが売られており、パロディ商品を止めるかどうかは別として、「フランク三浦」のように、近い商標がとられるが嫌なので、自分で出願して、先手で防衛手段を講じたという話です。

news.yahoo.co.jp

この商品なら、出所混同は生じないということで、不正競争防止法なら止められないのでしょうね。

サマンサ田端トートバッグ:戦うTシャツ屋 伊藤製作所

 

コメント

商標の防衛出願をどう考えるという点に着目しました。

例えば、「ビクター」という商標の場合、語頭の「ビ」に濁点のない「ヒ」をつけて「ヒクター」とか、「ピ」をつけて「ピクター」とかの展開があります。技術用語のように長音をなくして「ビクタ」とする展開もあります。戦前までの日本語の表記に従って右横書きして「ータクビ」とする展開もあります。

英語の「Victor」でも、「V」を「B」にする、大文字小文字の配置を変えてみるなど、色々と展開可能です。

あるいは、「G-SHOCK」などは、語頭の「G」のアルファベットを変えて、「A-SHOCK」から「Z-SHIOCK」まで出願することもあります。

 

日本では、商標の権利範囲が、商標の著名性で伸び縮みしないので、商標管理の専門家がいるしっかりした会社は、このような対策を取っています。

 

ただ、このようなものでも、出願すると商標管理の手間も費用もかかります。あまり生産的な作業ではないように思います。

 

海外なら、アメリカなら著名商標なら希釈化(ダイリューション、dilution)理論で保護の拡大ができますし、中国では馳名商標(ちめいしょうひょう)として同じような保護があります。こちらの方なら、このような防衛目的の出願不要となります。

 

制度設計として、どちらが良いのか、一長一短あると思います。

日本のやり方は、予め決めれた類似範囲をきっちり守り、保護範囲を拡大したいときは、新たな出願を求めるものです。予測可能性が高いと思います。

一方、アメリカや中国の制度は、商標の類似も日本よりも多少伸縮するのでしょうが、基本は類似範囲を超えて、商標の保護範囲の拡大をして、具体的妥当性を担保しています。

 

日本の方法は、どうしても防衛出願をしないと仕方ないのですのです。また、担当者の高い意識がないと駄目です。アメリカの方が事実に基づきますので、正義や公平、公正に近いと思います。

 

この問題に対して、企業の担当者でも、好き嫌いがあり、日本の方法が良いという人もいますし、アメリカの方法が良いという人もいます。

 

法律論(立法論)と実務は違いますので、実務家としては、双方の特性を知って、使い分けするしかありません。

 

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