Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

自民党の三宅伸吾参議院議員

イノベーション促進のための知財司法改革」

2017年4月25日の、自民党の三宅しんご参議院議員のホームページに、4月18日付の提言書が出ています。自民党知財戦略調査会の知財紛争システム検討会(座長 三宅伸吾参議院議員)の提言書です。

www.miyakeshingo.net

日本の知財の損害賠償金額が低く、特許権の保護が十分ではなく、損害賠償を充実されるべき。そのために、特許法の損害賠償推定規定の拡充の他、悪質な侵害には追加的損害賠償制度等を創設する。

この仕組みとして、懲罰的損害賠償制度か、労働法のような付加金か、独禁法のような課徴金などを設ける。

その推進のため、政府の知的財産戦略本部に専門組織を設ける。

というような内容です。

コメント

個人的に感じていた、日本の損害賠償金額の低さを自民党も言っているのだと思いました。アメリカでは、特許権侵害に原則刑事罰がありません。特許侵害の抑止を懲罰的賠償(3倍賠償)で担い、故意侵害のようなものには、実際の損害の3倍の賠償をさせて、懲悪を実現していました。
アメリカは、英米法という中世を引きづった法体系であり、刑法と私法が未分離であるので、このようなものがあると説明されています。

一方、日本には懲悪のために、特許権侵害には刑事罰があるのですが、適用例は聞いたことがありません。故意や悪質な特許権侵害者への制裁が、刑事では実現できないていないという提言書の指摘は正しいと思います(ちなみに、商標では刑事は機能していると思います)。

ただ、懲罰的損害賠償の導入には、一般的に企業は反対のようです。もし3倍賠償をくらったら、何をしていたのかと上司に怒られますので。

実際には、裁判にならない特許権を根拠としたお金のやり取りは、裁判の何百倍もあると思いますので、裁判だけがすべてではないのですが、社会規範の許容度というか、全体の雰囲気を作るのが裁判の役割だと思います。個人的には三宅さんのいうことに一理あると思っていますが、どのように動くのか、注意していきたいと思っています。