Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

車のエンブレム投影機器

千葉県警が男を逮捕

2017年5月17日の朝日新聞の夕刊で、商標権侵害事件で逮捕があったという記事を見ました。これで逮捕するの?と思いました。

www.asahi.com

内容は、JAFIRSTという店名で通販をしている会社の社員が、勤務先の会社経営者や同僚と共謀して、ホンダ、マツダメルセデス・ベンツといった会社のエンブレムを映し出すための小型プロジェクターを客に販売し、200万円の売り上げがあったという案件です。

この小型プロジェクターは、車のドア下部に取り付けて、ドアを開けると地面にエンブレムが映し出される仕組みです。オリジナルデザインも受け付けていたようですが、180種類のエンブレム、車種名、アニメの人気キャラクターの製品があったようです。価格は、1万円ということです。

県警のネット上のサイバーパトロールで見つかり、昨年12月に会社事務所を捜索し、資料や商品を欧州しており、近く同じ容疑で経営者や同僚も書類送検されるとの記事でした。

 

コメント

商品は小型プロジェクターであり、小型プロジェクターの本来の商標は、JAFIRSTなどだと思われます。ホンダなどのエンブレムは、コンテンツとして、ブランドロゴが映し出されるだけです。コンテンツとしてのブランドロゴを映すことが商標権侵害になるとすると、商品としてのTVやPCやスマホは、全部商標権侵害になってしますのでは(でもそんなことはない)と考えてしまいました。

 

今回の商品ですが、投影するエンブレムの設定まで、この男なり会社がやっており、さらに、エンブレムが映せることを売り物(広告等で訴求)にしていたのなら、全体として、商標権侵害というのもわかります。この男なり会社が、エンブレムのブランド価値にただ乗りしているといえるためです。顧客が価値を見出しているのは、ただの小型プロジェクターではなく、エンブレムを投影することのできる小型プロジェクターという理屈です。

一方、映し出すコンテンツを、顧客のオリジナルデザインだけとし、顧客が自分で投影する対象をネットから取ってくるという商品企画をしていたなら、最終的にはブランドロゴを映すことがあったとしても、この男や会社は、侵害にならないと思います。顧客の個人の趣味の世界であり、この男なり会社は、ただの自動車用のプロジェクターの製造販売業者でしかなくなるためです。

まあ、実際は、ちょっとやり過ぎがあったのだとは思いますが、これを商標権侵害というのは良いとしても、12月に家宅捜索して、5月に逮捕まで必要だったのか?という気はします。

在宅起訴でも十分だったのではないでしょうか。それとも、逮捕をしておくべき理由があったのでしょうか。

 

ホームページをみていたら、他の商品のパッケージに各社のエンブレムが出ており、こちらは、これはやり過ぎと思いました。ここまですると、メーカー純正と勘違いしてしまうのではないでしょうか。

jafirst.net