Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

韓国商標法

金 良銀 弁理士の講演

2017年6月9日(金)に、商工会館で、韓国のKBK特許法律事務所の金良銀(キムヤンウン)弁理士の韓国商標法の講演があったので行ってきました。

タイトルは、「中小企業のための韓国の最新商標制度及び実務について」なのですが、継続研修の単位認定もあり、内容も網羅的で、弁理士のための韓国商標法の研修会でした。

KBK & Associates

 

●以前の会社の知財部門にいたときに、金先生はLee Internationalにおられたのですが、何回か仕事でお会いし、話をしたことがあったので、お会い出来るのを楽しみにしていました。実際、話しを聞くと、以前とまったく同じでした。

 

●内容は、網羅的だったのですが、面白いと思った点は、次のようなところです。

  1. 韓国の商標出願件数は、18万件(2016年)(14万件(2015年)の日本よりも多い)
  2. 「意匠」という言葉を止めており、「デザイン」という言葉になっている
  3. 韓国企業の商標出願は、化粧品、流通、電機などが多い
  4. 外国から韓国への出願は、サンリオ、ロレアル、LINE、J&J、Kaoなどが多い
  5. 一出願に含める商品の数は、20個までが基本で、追加には料金が必要(200円/商品)
  6. 商品の記載は細かな単位であるが、日本の類似群と同じような排他権がある
  7. 外国からは、マドプロ出願が多い(1万件/年)
  8. マドプロの権利でも、模倣品対策、ライセンスができて、不利はない
  9. デパート業、コンビニ業以外の総合小売りは認められない。個別小売りのみ
  10. 音だけの商標もOK
  11. 匂いの商標の制度はあるが、登録はない(チャレンジしたのは、日本企業のサロンパスユニ・チャームだが、権利化できなかった)
  12. 指定商品(役務)の追加出願の制度がある
  13. 不使用取消審判は、「何人も」請求できるようになった
  14. 権利範囲確認審判があり、訴訟時に活用されている
  15. 特許庁はソウルから100km離れたところにある

内容は網羅的です。審決・判決の紹介もありましたが、判断基準はぶれがあり良く分かりませんでした。

 

コメント

2点あります。

  • 韓国出願は、マドプロを使う時代になっているという点です。韓国の指定商品の記載は、細かい商品記載ですが、マドプロを使うと、(一回は拒絶がでるようですが、)包括表現も受け入れられます。WIPOで認められているレベルなら、OKという感じです。折角、他の国はマドプロを使って、商標権の管理を楽にしているですから、韓国も入れておくと良いと思いました。特に、中国のように、マドプロの権利は模倣品対策やライセンスで困ることがないなら、マドプロしかないと思いました。
  • もう一つは、制度論ですが、確認審判制度で積極的と消極的確認審判があるようです。今、日本でも、ADRとか、裁定制度とか、3倍賠償とか議論されていますが、これらの議論の根底にある課題として、技術の専門家ではない裁判所が特許無効を出し過ぎる点があると見ています。確認審判制度は、日本の判定制度の前の制度で、古い制度ですが、行政庁が侵害訴訟のテクニカルな面を担当して、裁判官に負担をかけないという面で、優れた制度ではないか思います。行政庁への信頼を取り戻すためにも、確認審判制度の復活も選択肢ではないでしょうか。

「新しい商標」や「デザイン」という言葉など、韓国法の方が、日本法よりも進んできていると思います。参考になる点は多いと思いました。

 

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