Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

富士ゼロックスの偽造防止技術

Yoctrace(ヨクトレース)

2017年7月28日の日経で、富士ゼロックスの新しい偽造防止技術の記事を見ました。本件については、富士ゼロックスニュースリリースがまとまっているようです。

news.fujixerox.co.jp

リリースをまとめると次のようなものです。

  • 画像処理により、物体表面のパターンを識別する、「一意識別技術」
  • 工業製品などの物体表面に偶然生成された固有のランダムパターンを識別
  • 商品券やIDカードの真贋判定や偽造防止、ブロックチェーン技術と組み合わせた仮想通貨のセキュリティー強化に貢献
  • OECDによると、模倣品や海賊版の被害は、世界総貿易額の約2.5%に相当する5,000億ドル。高級ブランド品から医薬品、電子部品、航空機・自動車部品、農薬、食品にまで。偽造品製作技術の発達に伴い、巧妙化・悪質化
  • 名称は、「Yoctrace(ヨクトレース)」国際単位系で一番小さい単位を示すYoctoと、追跡を意味するTraceを組み合わせた造語
  • 印刷業などにライセンス提供
  • 具体的には、対象製品の物体表面をスマートフォンデジタルカメラで撮影、または、スキャナーで読取り、その画像情報をサーバーに事前登録。照合したい物体の同じ箇所を撮影し、登録した画像と照合。同じ物体か識別
  • 指紋認証のように特徴点を抽出して照合するのではなく、ランダムパターンをもった画像全体を照合。精度が高い照合
  • タグ付けが難しい錠剤のような小さい物体の識別も行える
  • 製造工程の品質管理や物流の効率化のためのIoT技術としての利用検討も進める

 

コメント

ここ20年ほど、中国をはじめとして、模倣品が問題になっており、モグラたたきのような模倣品対策が続けられています。

模倣品対策は、民事・刑事の法的対応や、行政罰がメインになる分野なのですが、もう一つの可能性として、技術でなんとかできないかという話があります。

 

物品の模倣品の保護というと、シリアルコード、ホログラム、ICタグといったものになりますが、シリアルコードやホログラムはそれ自体が真似されたり、ICタグはシステムとして高価であったりして、それぞれ一長一短があり、技術的な模倣品対策として決め手に欠けるように思います。

 

今回の技術は、大量の画像データをサーバーに蓄えておく必要がありますが、一意識別可能というのが、面白いと思いました。また、サーバー利用料も、どんどん安くなっていくと思いますので、実現可能性がある技術のように思います。

 

レジスタのバーコード読み取り機のような端末で、模倣品の真贋判定ができれば最高です。

 

以前の会社で、商標の®部分に、模倣防止の技術を入れる特許出願をした方がいました。

 

また、工場の生産ラインで、チップや基盤などの画像を高速で撮影して、不良品かどうかチェックする工程がありますが、あれを思い出しました。

 

なお、名称が、「良く」「トレース」できるので、「ヨクトレース」という駄洒落なのかと思ったのですが、富士ゼロックスのWebサイトには、次の説明がありました。

  •  Yoctrace (ヨクトレース)は、国際単位系で一番小さい単位10-24 (一秭(じょ)分の一)を示す"Yocto"と追跡を意味する”Trace”を組み合わせた造語で、本技術の一意識別精度が極めて高いことを表しています。