商社とブランドビジネス
2017年8月11日の日経に、伊藤忠が中国のアパレル企業、ボストン(波司登)に、ブランドビジネスのノウハウを提供するという記事がありました。www.nikkei.com
ボストンは、ダウンジャケットの大手のようですが、総合アパレル化するため、伊藤忠の欧州スポーツブランドを導入するようです。
伊藤忠は、約150の国内外のブランドの販売権などを取得し、展開する実績があるようです。
ボストンは、導入するブランド選定や、交渉、生産面などで、伊藤忠のノウハウを活用するということです。
コメント
商社がブランドビジネスをしている話です。
伊藤忠の繊維カンパニーのWebサイトによると、伊藤忠のブランドビジネスは次のような展開をしてきたようです。
- 1970年代、ブランドの紳士服地の輸入によってブランドビジネスに先鞭
- 1980年代より、総合ライセンスを取得し、優良アパレルメーカーや服飾雑貨メーカー等をサブライセンシーとしてアライアンスを組むライセンスビジネス開始
- スポーツブランドや量販店向けのライセンスブランド、大型インポートブランド等、ポートフォリオを拡充
- 1999年頃からは商権の長期安定化を図るため、商標権の取得やブランドを持つ企業への直接投資
- 「HUNTING WORLD」「LeSportsac」「mila schon」など数々の世界的な有力ブランドの買収
- 「CONVERSE」の日本に於ける商標権取得
- Paul Smith Group Holdings Limitedへの資本参加
- ブランドを切り口にライフスタイル全般へと収益の機会を拡大
- 蓄えてきた実績とノウハウが新たなチャンスを生む好循環を活かし、今後成長の見込まれるアジア・新興国を中心にブランドの海外展開
- 米国バッグブランド「OUTDOOR PRODUCTS」はアジア13地域、中近東4地域、南米2地域で、商標権取得
などとありました。
伊藤忠の岡藤社長の対談記事もます。
岡藤社長は、繊維出身で、アルマーニ、トラサルディをブランドビジネスに育てた方だそうです。
- 5000円の日本の生地が、フランスの洋服の素材になって、そのフランスの服は150万円で販売されている。素材(部品)はよいが、最終製品が作れない。
- 昔、ホテルに泊まるとソニー、シャープ、パナソニックのTVがあったのに、今は、LGかサムソンであり、デザイン力とブランド力の差が出ている。日本はものづくりは一生懸命やるが、デザインとブランド作りが遅れている。
- 日本人のビジネスマンは服装に気を使っていない。ファッションはトレンドであり、それに敏感になることはすべての産業で必要。
- 高くなくてもよいんで、服だけではなく、靴、靴下、ネクタイ、シャツ、眼鏡、時計まで、全体をそろえることが大切。
というようなことを仰っています。
商社は、ファッション系のブランド(ライセンス)ビジネスの中心プレーヤーのようです。知財面では、ライセンス権の取得、商標権取得が関係しますが、資本参加や販売面や製造面のノウハウ提供など、非常に幅広い内容と思います。
以前の会社に入社して間もなく、出身大学の卒業生が学生に仕事内容を説明するセミナーがあり、企業の弁理士として参加したことがあります。そのとき、商社で宇宙ビジネスをやっておられる方がいて、企業の法務部員並の法律知識を持っておられるのが印象に残りました。商社の法務部員は、そのようなレベルの高い社員を指導するのですから、更に高いレベルで、当時の渉外法律事務所以上ではないかと思った記憶があります。実際、知り合った三井物産の法務課長の弁理士さんの知識のレベルは相当高かったと思います。
最近は、法律事務所も巨大化、専門化が進んでいるようですが、商社の法務部を抜いたんでしょうか。