Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

外国商標のTIPS(1)

中国における商標の色彩の判断

先日、中国における商標の色彩の件を調べたいことがあり、検索をしたら、下記のWebサイトに載っていました。

工業所有権情報・研修館(INPIT)の新興国知財情報データバンクです。外国実務をされている方は、活用されているのだと思います。

www.globalipdb.inpit.go.jp

今回、調べたかったのは、カラー(色彩をつけた)商標があったとして、中国では、モノクロ(白黒)で商標出願すべきか、カラーで出願すべきか?という話です。

 

中国では、A.色彩を指定しない商標と、B.色彩を指定する商標に分かれています。

資料では、色彩を指定しない商標として、マクドナルドの「M」の文字、昔のデザインの中国向けのスタバのロゴ、ブリヂストンの「B」のロゴがあがっています。

一方の、色彩を指定する商標には、中国石油(CNPC)のロゴなど、現地のロゴがあがっています。

 

審査では、文字や図形が類似すれば、色彩が違う(別の色、あるいは、白黒)に対しても類似となるようです。後願排除効という面では、色彩の有無にさほどこだわる必要はないようです。

 

日本と違いがあるのは、登録商標の使用となるか否かで、色彩を指定しない商標の権利は、色彩を変えても登録商標の使用となるのに対して、色彩を指定する商標の権利は、別の色彩にすると登録商標の使用とならない点です。

  1. 不使用取消審判をかけられたときに、色彩を指定色彩をしない登録商標は、どのような色彩を付しても登録商標の使用であるのに対し、色彩を指定した登録商標は、異なる色彩を付して使用しても「不使用取消」を免れないこととなる、とあります。
  2. また、色彩を指定した商標で、色を変えて使用しようした場合に、商標登録表示のRマークをつけたら、登録商標を許可なく変更した行為に該当し、中国商標局が、商標法44条1項に基づき、期間を定めて是正を命じ又はその登録商標を取り消すことがあり得るとあります。

日本の場合、商標法70条で、色彩はほぼ完全に捨象して権利を考えるので、不使用取消審判で色の違いで不利益はないですし、また、Rマークは付記的部分としてこちらも無視します。日本では気にしないことを、中国では気にする必要があることになります。

 

資料では、結論として、使用による特別顕著性を主張するようなケースを除き、モノクロ出願が望ましいとあります。

 

ただ、このあたり、ちょっと突っ込んで考えると、色々と論点があります。単なる文字商標は、確かにモノクロでも良いのですが、カラーに特徴のある図形商標は、カラーで出すのが常識に適います。

  • 色彩とは、白黒が入るのか、入らないのか?通常、色彩というときは、白黒は入りません。色彩学的に、白黒は、色ではないのです。どうしても、二値でしか表現できないもの(例えば、業界紙の新聞広告)があり、色彩だけの商標を取得して白黒で表現せざるを得ず、不使用になる、あるいは、Rマークで虚偽表示になるといってしまうと、あまりに理不尽です。たぶん、中国でもそうは判断されないと思います。イエローの色彩に特徴があり登録されたマクドナルドの「M」の文字を、グリーンで使用するという特殊ケースではないでしょうか?
  • もう一つ、お金のある会社は、白黒とカラーの双方の権利が取れます。そうすると、白黒のメリット(上述)とカラーのメリット(本来、使用している商標ですので、ライセンス、権利行使で、イメージがビジュアルに伝わり、説得力が高い)の双方のメリットを得ることができそうです。

個別ケースで、検討も必要な感じの話ですが、外国商標は、色々とTIPSがあると思いました。このレベルのTIPSを200~300程持って、自由に駆使できるようになると、何となく外国商標の専門家のようなイメージがします。

 

INPITの新興国のデータベースは、非常に参考になるものがありそうです。ただ、検索性がもっと良くなればと思います。