「やせすぎ」などの防止方針
2017年9月7日の朝日新聞に、LVMHとケリングが共同で、モデルについての方針を発表したというニュースがありました。
- LVMHとケリング(グッチやイブ・サンローラン)が、共同で、ファッションショーに「やせ過ぎモデル」を起用しない方針を発表
- モデルが無理なダイエットで健康を損なう問題があり、モデルの福利のため
- すべてのブランドで、男女ともモデルの募集要件から小さい服を着られるよう求める項目をなくす
- 廃止されるのは女性服だと米国のXXSにあたるサイズ
- また、ファッションショーに参加する大人服のモデルは16歳以上とした
- 16~18歳のモデルは、学業に支障がないように午後10時から午前6時までの仕事を認めない
- モデルの健康への配慮について、業界のリーダーとして特別な責任がある
- この方針がブランドをさらに1段階、高めることになる
●VOGUEに、次の記事がありました。
朝日新聞にあった以上の情報としては、次のような方針があるようです。
- 2018年の春夏ショーのシーズンから適用
- 6ヶ月以内に、医療機関の発行した健康であることの証明書が必要
- 仕事時間に臨床心理士などを配置
- 問題があるときは、医療機関・配役監督・会社に直接、通報できる
- 午後8時以降は自宅にまでの移動手段を提供する
- 仕事当日を通して健康な食事をする情報と共に、食事や飲料を提供
- 撮影や着替えのために裸になるときは、制作担当や写真家と一緒のところでは、決して一人にしない
- 16歳~18歳のモデルは、付き添いや保護者が必須
- アルコールは配役や撮影のときは提供されない
そして、背景として、次のように説明しています。
- モデルエージェントのジェームズ・スカリーが、ケリングのバレンシアガで発生したモデルの虐待問題を非難したことが背景
- ケリングとLVMHという業界の代表によるモデルの仕事環境改善となった。今回の改善を業界全体に広げていきたい
コメント
バレンシアガで発生した事件は、少女たち150人を、暗い吹き抜け階段に閉じ込めて、監督たちがランチに行き、3時間帰ってこなかったというもののようです。
これが問題になったので、バレンシアガは問題への急遽対策をとることを通知し、そして、今回、親会社であるケリングが、LVMHも巻き込んで、業界全体として、対策をとることになったようです。
朝日新聞の記事では、やせすぎモデル問題にフォーカスしていますが、問題の背景には、ショーや撮影現場の過酷な環境や、監督の態度など、劣悪な労働環境があったようです。
企業で問題が発生したときに、PR部門が危機管理能力を発揮して、しっかりした対策を立案し、それをTOPが発信して、危機を乗り越え、ブランドの棄損を最小限にすることが重要とされています(危機管理広報)。
今回は、虐待問題とは全く別の論点ともいえる、やせすぎモデル問題を前面に出ているように思います。
本来、マイナスでしかない話を、モデルの健康を含めた包括的なモデルの福祉のための提案にすることで、ブランドや業界の活動をプラスに持っていっているように見えました。
マイナスをプラスに持っていく、上手いやり方なのかもしれません。