アサヒビールは欧州強化へ
2017年10月13日の日経に、アサヒグループホールディングスが、中国のビール2位である青島ビールについて、保有する20%の株式の売却を検討すると発表したという記事がありました。www.nikkei.com
記事によると、
- 売却先や規模は今後決定
- 中国は世界最大のビール市場
- 1997年に青島ビールと提携して、広東省・深圳に合弁会社を設立し、スーパードライと青島ビールを生産
- 2009年にアンハイザー・ブッシュ・インベブから青島ビールの株式の20%を約600億円で取得
- 目的は中国でのアサヒブランドの浸透
- 青島ビールの販売網でアサヒビールを販売したかった
- しかし、尖閣諸島問題などの日中関係の悪化の影響で実現しなかった
- 今後は、経営資源を欧州の高級ビール事業に投入
- アサヒは合計1兆2000億円でインベブから西欧と東欧の事業を相次いで買収
- 欧州を成長分野に位置づけ、資産の見直しなどを進める方針
コメント
Wikipediaの青島ビールの解説を見ると、もともと、アサヒビールと青島ビールには、戦前の大日本麦酒の時代から関係があるようです。
山東省はドイツの租借地で、そこに青島ビールができたのを、第一次世界大戦後、日本が山東省を租借することになり、青島ビールを大日本麦酒が買収し、青島ビールの工場で、札幌と朝日の両ビールを製造していた(戦後、接収された)ようです。
さて、2016年12月14日付けの日経ビジネスオンラインに、インベブからSABミラーの欧州事業買収に関してのアサヒ泉谷CEOの話が出ています。
これを読んでいると、グローバルなビール業界の大再編の中での対応ということが分かります。
インベブが、SABミラーを買収して世界シャアが30%、営業利益のシェアで50%の巨大会社となった。インベブが事業を展開していない主要国は、日本とベトナム程度。日本のビール会社には、インベブからの買収の可能性がある。
その中で、アサヒは、SABミラーが切り離すことになった西欧の高級ビール事業を(イタリアのペロー二、オランダのグロルシュ)買収し、また、東欧でも有名なチョコのピルスナーウルケルなどを含む事業を買収。
複数の高級ブランドを持つ会社として生きる道を選んだ。プレミアムで生き残るとあります。
インベブから買収されないためには、規模を大きくしておくか、インベブの興味のない事業をやっている会社になっておくかですが、量を追いたいインベブとしては、高級ブランドを複数持つアサヒは方向性が違う会社になるということだと思います。
よくM&Aや資本参加で、販路(ルート)を買うという言葉が出てきますが、販路を買うのは、実は、なかなか難しいことだと思います。被買収会社(あるいは資本参加先の会社)としては、自社の製品の販売が第一に重要で、自社の製品を買収会社のルートで売ってくれるならうれしいとは思いますが、自社のルートは自社製品を売ること精いっぱいで、例え親会社の製品でも他の製品を売る余裕などないはずです。
余程、革新的な経営手法でもセットで導入するなどしないと、他人のブランドを販売するようなことは難しい話です。
長期的には、親会社の製品を売ることが、その会社のメリットになるという状況を創れれば一番良いのですが、相当時間がかかると思います。
一方、自社に日本を含め世界的な営業ルートがあり、買収した会社の商品が世界に通用する商品なら、自社のルートで販売することは可能です。特に海外の有名な商品を日本に持ち帰るビジネスは、短期的にも成功の可能性が高いと思います。
アサヒの関係で見れば、青島ビールとしては、青島ビールとして世界的なプレーヤーになりたいと考えるはずですので、100%超出資でもないのに、そのルートを使ってアサヒの製品を売ろうと考える方が難しいと思います。そもそも合弁工場運営が良いところだったのではないでしょうか。
一方、欧州の高級ビールで考えると、商品価値の高いビールですので、それを世界でどう売るかを一緒に考えるということになると思います。手始めに日本で導入して成功することは、被買収会社にやる気になってもらうために、絶対必要と思います。
アサヒが本気なら、これらの会社のブランドの商標権を一か所に集めるべきです。物理的に名義変更が簡単に出来ないとしても、商標の決裁権をもつべきです。どうも、JTは被買収ブランドの商標権をJT名義にしています。被買収会社に、こちらの本気度が伝わります(将来的にその会社を売ることを考えるなら別ですが)。
グローバルなM&Aの成功の鍵の一つに商標権の取り扱いがあると思います。