Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

中国における模倣品対策(講演会)

中国はダイナミックな発展

2017年10月17日に発明会館の地下のホールで開催された、中国における模倣品対策の講義に行ってきました。日本弁理士会の貿易円滑化対策委員会の主催で、講師は中国の恒峰法律事務所の取締役副社長の李蕾さん、代理副社長の丁海聡さんです。www.hfgip.com

李さんは、女性の弁護士で中国語で話をされ、男性の丁さんが逐次通訳してくれました。丁さんは、中国の日系企業を3社ほど経験されている日本語のプロのようです。非常にレベルの高い分かりやすい日本語を話されていました。

3時間という長い研修でしたが、事例紹介が沢山あったので、分かりやすかったと思います。事例は、オランダの電気機器メーカーの電動歯ブラシ・照明器具、ニューバランスのスニーカー、ドイツのスポーツウェアなどです。

通常、中国の模倣品事件というと行政罰中心で、調査会社が行うものと思いますが、この事務所(会社)は、法律事務所ですが、調査会社顔負けの調査能力があるようです。

そのうえ、警告や民事や刑事の裁判もできるので、費用をかけてでも徹底的に行うべき模倣品対策なら、こういう事務所が候補になるということだと思いました。

  • 統計データ

まず、中国の経済発展の状況ですが、都市部の一人当たりの可処分所得が伸びており、2012年が42万円だったのが、2016年は57万円で、目標の2020年には、82万円(習近平さんがTOPになった2012年が基準で、その倍)になるとのことです。

商標出願は、2008年に50万件/年だったのが、2016年には341万件/になり、特許・実用新案・意匠がセットになった専利も2007年に60万件/年だったのが、2015年に264万件/年となっています。著作権登録の伸びがすごく、2015年には135万件/年となっているようです。

知財の民事事件の数は、特許や商標よりも、著作権、技術契約(ノウハウ)、不正競争が多いようですが、合計10万件以上と、日本の200件に比べると、500倍の数です。

知財の刑事事件の数は、2015年で、合計1万件程度です。刑事事件だけは、横ばいのようです。現場の公安の人手がかかるためでしょうか。

いづれにしても、人口比(10倍)で考えても大きな数字です。特許出願も中国100万件、日本が40万件となっています。

  • なぜ模倣品が多いのか?

OEMで培った製造能力が高いからと、模倣品は儲かるからです。

特に、中国の物価が高騰しており、正規品が高くなり、一方、模倣品は安く製造でき、差益が非常に大きいので、模倣品が出てくるようです。

物価高騰の一例として、李さんが食べている事務所近くのお弁当が、2012年に200円だったのが、今は500円と説明していました。この5年で2.5倍の物価高騰です。

  • 日本語

丁さんの日本語に感心しました。非常に分かりやすい日本語でした。中国の法律事務所や特許事務所は、内外で料金が違うと聞いていますので、日本など外国顧客は儲かるので、積極的なのですが、日本語サービスが行き届いています。

日本の事務所が、海外に出かけて、中国語サービス、ドイツ語サービス、をやっているかというとそうでもないので、この点、学ぶ点ではないでしょうか。日本の事務所では英語が精いっぱいの状況ではないか思います。

  • パワーポイントの作り方(特にフォントの選択)

上記に関係しますが、パワーポイントの作り方も上手です。特に、日本語フォントの選び方など、下手な日本のプレゼン以上です。あか抜けていると思いました。

ひと昔前なら、日本では見ないようなフォントがありましたが、今はそんな時代ではないですね。

 先日のフランスの大学教授や弁理士よりは上手です。

 

模倣品対策の内容としては、中国ではネットで流通しており、情報もあるので、その対策が重要とのことでした。

特に印象に残ったのは、著作権が活用されているのと、証拠をすべて公証人認証をとっているのが、驚きでした。

商標の異議申立でも著作権をベースにするようですが、著作物はどんな案件があるのか興味を持ちました。