Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

Drive your Ambition

三菱自動車の新ブランド・メッセージ

2017年10月25日に、三菱自動車が次の100年に向けた新しいブランドメッセージ”Dream your Ambition"のリリースを出していました。 

ニュースリリース | MITSUBISHI MOTORS

 

リリースによると、次のような記載がありました。

  • クルマづくりを始めて100年
  • 三菱自動車の強みや三菱自動車らしさを確認し、今後目指す姿を示す
  • 10年ぶりに新しいブランド・メッセージ“Drive your Ambition”を策定
  • 日本初の量産乗用車「三菱A型」の製作以来100年の伝統
  • クルマづくりの特徴は、独自の技術やデザイン
  • グローバルにビジネスを展開
  • 歴史、技術、グローバル展開、そしてお客様の存在こそが、三菱ブランドの本質
  • MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPTが革新を引き出すヒント 
  • 新ブランド・メッセージ“Drive your Ambition”は、進む道を示すメッセージ
  • より安全で安心、かつ便利なクルマ社会が実現されようとしている
  • 「行動範囲を広げたい、さまざまなことに挑戦したい」 という志をもったお客様をサポートし続ける
  • また、“Drive your Ambition” は私たちの決意でもある
  • 大きな志を持つことで生まれる、独創的で存在感のある商品・サービスを通じて、世界中のお客様とともに成長していく

ブランド・メッセージ / Drive your Ambition | 三菱自動車のクルマづくり | MITSUBISHI MOTORS

 

コメント
これまでのスローガン(コミュニケーションワードと言っていたようです)が、Drive@earthですので、ダイレクトに環境よりのスローガンだっとのを、もう少し抽象度をあげ、意思を重視した表現になっています。
新しいブランドメッセージにも、Driveがありますが、earth の部分がyour Ambitionに替わっています。
 
環境も重要ですが、自動運転などが脚光を浴びています。環境一本のスローガンは確かに苦しいと思いますので、スローガン変更は必要なことだったのだと思います。
 
Ambitionは、大志であり、環境も安全もそれ以外も入ってきます。リリースによると、yourの部分はお客様一般を指し、ひいては社員までというという論理構成のようですが、yourをなぜ入れたのかは、少し分かりにくいように思います。何か冠詞が必要だから、語呂が良いからでしょうか?
 
しかし、このスローガンを聞いて思い出いだしたのは、三菱自動車のDrive@earthではなく、トヨタDrive your Dreams.でした。トヨタの宣伝の刷り込みのためだと思います。トヨタは、2011年からは企業広告キャンペーン「FUN TO DRIVE, AGAIN.」に変えていますが、Drive your Dreams.はまだ記憶に残っています。

 

 

自動車会社が、Driveという言葉と密接な関係があります。

 

Drive your Ambitionと検索すると、BMWアイルランドが、"Drive your ambition today"というCMをしていました。BMWのUKは、"Ambiton,Raised"と言っています。企業スローガンでもないですし、国・地域で若干違っているようですが、Ambitionという言葉が気になります。

どうもAmbitionが、BMWのブランドのプロポジション(propositoin)となっているようです。プロポジションとは、耳慣れない言葉ですが、考え方のキーワードのようなもので、それを市場に応じて、適切に広報や宣伝が変化させながら使用することで、最適なコミュニケーションを実現しようというものと理解しています。広告などの説明文書や、マスコミなどへの説明で使用され、じわじわと効いてくるものです。

ブランドの直下につけるブランドスローガンは、表現が硬直的であり柔軟性がないですし、商標権のクリアランスが大変です。プロポジションは文章中に入り込むので、商標権のクリアランスの問題を避けることができます。但し、運用するには、関係者のブランドの理解をだいぶ高めておく必要があり、多少、難しそうです。

 

BMWが先端的な方法で、欧州などでAmbitionという言葉を使っているとして(欧州に住んでいないので良くは分かりません)、ブランドメッセージとして、Ambtionを使うというのは、BMWの二番煎じの印象が出てしまいます。

 

結局は、宣伝投下量という面はあるので、日本でのトヨタやホンダぐらいの宣伝があれば、後からの使用でも、勝つことは可能ですが。

 

ちなみに、ブランドスローガンやブランドメッセージですが、日本の自動車会社では、商標ではないという解釈があると聞いたことがあります。

各国の商標審査基準も、スローガンについては、商標と認める国と認めない国が、半々だと思います。

本来的には、その言葉に識別機能があれば商標で識別機能がないなら商標ではなく、コピー・文章なのだと思いますが、長さや構成などから、微妙なところです。

 

日本のある大手企業が「.」(ピリオド)があれば、文章だと言い切っておられるのを聞いたことがあります。ある面、スパッとして気持ちが良い解釈です。現実にズバリでなければ、大きな商標問題にはならないと思いますが、ちょっと荒い考え方です。

今後は、グローバル統一というのは、不可能、あるいは無用と割り切り、プロポジションを活用するのも方法だと思います。