Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「からやま」と「からよし」

仮処分の差止請求

2017年11月16日の朝日新聞の電子版で、とんかつ専門店の「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングスが、大手のすかいらーくに対し、から揚げ専門店の看板などの表記を使わせないよう求める仮処分を東京地裁に申し立てたというニュースがありました。

「かつや」は近年大成功した業態ですが、から揚げが次の主戦場になっているようです。

www.asahi.com

記事によると、

  • すかいらーくのから揚げ専門店の看板やメニューが、アークランドが開発した新業態のから揚げ専門店と酷似
  • アークランドは2014年から、から揚げを扱う新業態として「からやま」を展開
  • 10月末現在、首都圏や愛知県、海外などに28店舗
  • 白地に黒のひらがなで店名を表現した看板が特徴
  • すかいらーくも今年10月、から揚げを扱う専門店「からよし」を出店
  • 3店舗目は「から好(よ)し」の店名
  • アークランドは「からよし」などの看板が「からやま」の色使いや字体と似ていて、「お客さまが混同する」と指摘し、不正競争防止法違反と主張
  • 同社は定食メニューも酷似していると主張
  • 「からやま」の「からやま定食」はから揚げ4個、5個、6個入りの3種類。「からよし」の定食も、から揚げを4~6個から選べて価格も同じ
  • 「からやま」はイカの塩辛や大根の漬物をテーブルに常設し、客が自由に食べられる。「からよし」なども同様
  • アークランドは「明らかに模倣している」として、提訴も検討中

このようなニュースです。

 

私は行ったことがないのですが、実際の定食の内容がよくわかるブログがありました。

kabumatome.doorblog.jp

 

コメント

とんかつの「かつや」は知っていましたが、から揚げの「からやま」は知りませんでした。

2017年1月に、大阪の京橋に単身赴任していたときに、明太子で有名な「やまや」が京橋のガード下で、お昼にから揚げ定食を出していて、いつも満員なのは見ていたので、知っていました。こちらは、明太子と高菜が食べ放題です。

tabelog.com

 

さて、本題に戻って、「からやま」「からよし」の件は、仮処分案件ですが、今回は、アークランドサービスホールディングスが、ニュースリリースまで出しています。東京証券取引所の適時開示がされています。売上等に影響が大きい仮処分ということだと思います。

 

名称だけでみると、商標の類似という狭い話になり、非類似でお仕舞いですし、看板も白地に黒でとか、ひらがなでといっても、難しいと思います。

 

メニューも、唐揚げは唐揚げですので、似たり寄ったにはなります。しかし、定食の構成や、無料で大根の漬物とイカの塩辛というところまでまねると、ここまでまねるのかとアークランドが怒るのもの分かります。

 

特に、すかいらーくは大企業ですので、資本力によってあっという間に、現在28店舗の、からあげ専門店業界TOPの座を、ひっくり返すことは十分可能と思います。

 

コメダ珈琲のケースでは、店舗外観、メニュー構成が良く似ており、フランチャイズになるならないといった経緯もあり、東京地裁で和解となったのだと思います。nishiny.hatenablog.com

 

本訴の提起もありえるでしょうが、どこかで和解するとして、双方納得のいく、あるいは、社会が納得する和解案は、メニュー構成の変更や、無料の大根の漬物やイカの塩辛を、別のものに変えるという点なんでしょうか?

今回の話は、トレードドレスというよりは、大昔からある議論である、料理に特許が与えられるのか?、というのが、知財の議論の本質に、一番近そうです。

 

もう一つは訴訟戦略です。

すかいらーくも大企業ですので、仮処分や訴訟を起こされたぐらいでは、驚きはしないと思いますが、フランチャイズ化をしようとするなら、仮処分や訴訟でケチのついた状態では、フランチャイズに支障がでるような感じもします。

 

そうなると、仮処分や訴訟を活用した、アークランドは、ある意味、目的達成となります。これも一つの知財戦略・法務戦略だと思います。

 

nishiny.hatenablog.com