通信と車 異業種での紛争
2017年11月6日の日経によると、IoTの普及で、通信と車など、異業種間での特許紛争が増えているようです。この関係を説明している記事がありました。
記事は、大略、次のような内容です。
- 従来は、パテントトロールが課題であったが、パテントトロールは日本を避け、欧州に
- 特に、ドイツは審理が速く、権利者に有利な判決が出やすい。トロールが好む
- トロールの代わりに、IoT関係の特許紛争が増加
- 一例として、「アバンシ」。エリクソンやクァルコムや一部日本電機メーカーも入っている、パテントプール団体
- コネクティッドカーやスマートメーターが標的
- IoTによって、通信関係の特許を車メーカーも使わざるを得ないが、その必須標準特許を通信(のパテントプール)が保有
- 車メーカーとしては、クロスライセンスが効かず、対象製品の解釈も、部品とするか完成品とするかでもめている
- また、複数特許をまとめて話合うかどうかでも、もめている
- 車メーカーは、BMWやVWが、「フェア・スタンダーズ・アライアンス」という業界団体を設置し、ロビー活動
- 欧州委員会は、2017年初めに、IoTに関連する標準特許の扱いについての指針作りを開始し、11月末に公表する予定
- 日本もガイドライン作りに着手
横に、宗像長官のインタビューも出ていました。
コメント
記事には、通信とありますが、通信サービス事業者というよりも、エリクソンなど、通信サービス事業者に機器を納入していたような通信機器事業者ですね。クァルコムは通信機器の半導体の会社です。
通信機器事業者も、こちらはこちらで、競争は非常に激しい業界です。通信サービス事業者は免許制で、法律で守られているので、経営は安定していますが、エリクソンも、携帯電話を撤退したり、また最近はクァルコムが買収されそうなど、淘汰のニュースを良くみる業界です。
IoTに入っていくなら、避けては通れない話だと思いました。電機では昔からある話ですので、今更何を言っているの?という感覚かもしれません。IoTでつながるためには、必須特許化は使わざるを得ないと思います。
そもそも、一つの製品に何件の特許が入っているのか?という点で、電機は圧倒的に多いと思います(自動車も多いですが)。イメージですが、車の特許は、機械もので、機構的なものが多く、部品単位で成立しており、また、車であれば設計変更で、回避できるものが多いのではないかと思います。一方、電機の特許はシステム全体に関係するような取り方をしてきたように思います。自動車でもEVのプラグの形状など、標準化ではもめていたと思いますが。
車は、なんとかグローバルで活躍出来ている業界なので、こちらが特許でケチつくようなことがあれば、日本経済にとっても打撃になるので、ガイドライン作成など、できえることはしようということなのだと思います。
記事で気になったのは、トロールが日本を避け、ドイツに行ったという部分です。2010年に8件だったトロール関連訴訟が、2015年には52件になったという記載があります。一方、日本は、トロール関連訴訟は、年間0~4件とあります。
これを、喜ぶべきかどうか考えてしまいます。ドイツの訴訟は、速く、権利者有利の判決が出る点が説明されていますが、2010年~2015年というと、日本は調子が悪くなり、ドイツは調子が良かった時期です。
トロール訴訟に巻き込まれる企業にとっては大変なことですが、裁判所が素早い判断をして、多少権利者有利に判断することは、産業政策としては、正論ではないかと思います。
職務発明やトロールでも感じていたのですが、IoTなどでも、あまり企業の特許部門の意見を聞きすぎることは、国家の力を強化する産業政策として正しいとは限らないのではないでしょうか。
今年の知財訴訟は件数が多くなっているようです。1月から9月までで、500件という昨年の数が来ているようです。少しづつですが、訴訟を起こす社会になってきたのかもしれません。