Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ハイセンスに40年間

TOSHIBAブランドのライセンス

2017年11月4日に、ハイセンスが、東芝のテレビ事業を買収した件についてのハイセンスからのニュースリリースがありました。

 

東芝テレビを買収、ハイセンスはグローバル展開を加速 | ハイセンスジャパン株式会社

  • 東芝映像ソリューション株式会社(ToshibaVisual SolutionsCorporation、略称TVS)の発行済株式の95%がハイセンスへ
  • 譲渡額は暫定129億円。2018年2月末に譲渡完了予定
  • ハイセンスは東芝テレビの商品・ブランド・運営サービス等の業務及び東芝テレビのグローバルブランドライセンスを40年間有する
  • 東芝は世界の科学技術ブランド価値において非常に優位な立場に立っている
  • 2016年、東芝はテレビの販売量において依然として日本市場のTOP3に位置
  • ハイセンスは中国におけるテレビ市場のシェアが13年連続NO.1
  • 欧州及び米国市場でも急速に成長
  • 近年、南アフリカとオーストラリアにおいてテレビの販売は1位
  • ハイセンスは2015年、2016年とテレビの販売台数において世界第三位
  • グローバル化を加速する戦略の一環として、2015年に北米市場でシャープブランドの供与を受けた
  • EURO 2016、ワールドカップ2018ロシア大会のスポンサー。グローバル戦略を強力に推進
  • 買収後、ハイセンスは双方の研究開発、サプライチェーン及びグローバルルートの資源を統合して、市場規模を早急に向上し、グローバル化を加速させる

積極的に発信しようという感じの、今後の事業再構築まで踏み込んだ、ニュースリリースです。

40年の長期のブランドライセンス。グローバルにTVについて、TOSHIBAブランドを使える。ハイセンスは、世界3位。南アフリカやオーストラリアで1位。北米のシャープの使用権を持っている。というところでしょうか。

 

これに対して、東芝ニュースリリースは、淡々としたものです。TOSHIBA・レグザブランドのライセンスには、言及されていますが、40年という点までは触れていません。

www.toshiba.co.jp

また、東芝ニュースリリースのページには、適時開示がやたらと多く、驚きました。

 

コメント

この40年という期間ですが、商標ライセンスとしては、極めて異例の長期です。この点から考えてみました。

 

私の経験では、子会社に対するライセンスでも、20年というのを見たのが最長です。子会社で、10年、それ以外の会社は、通常は3年か5年の契約で、契約更改時に条件を見直すというのが一般的だと思います。

今回、40年後に延長があるかは不明ですが(今年53歳の私はたぶん生きていないので、生存中に確認できません。残念です。)、ほぼ、永久契約と理解して良いのだと思います。まるで、香港の99年契約のようですし、昔の日本の和菓子ブランドのれん分け(〇〇風月堂など)のようでもあります。

 

対価の記載がありませんが、想像としては、現在、東芝TVSにライセンスしているものをベースにしているのではないかと勝手に想像しました。よくある、知財の価値の評価で、将来利益を現在価値に割引してという方法では、今、赤字の会社では計算しずらいですので。

 

あるいは、今回の株式譲渡対価にすでに対価が入っているとして、ランニングロイヤルティは無償という方法もありえますが、あまりに長期なので、国税が納得するのかというところはあります。TOSHIBAブランドは、経営の仕方によっては、非常に価値のあるブランドに再生できるように思います。

 

また、法務的には、期間は40年とほぼ永久契約にするとしても、対価などの契約条件は、数年に一度見直しを入れるような条項の契約にすべきと思います。また、技術、品質、流通、ブランドマネジメント、広告などを含めて、数年で変わってくることが、沢山ありそうです。

 

しかし、この点、将来、料率の改定をするとすると、ハイセンスとしては、TOSHIBAブランドを有名にしたのは、美的とハイセンスであり、特にTVは、家電の王様なので、ハイセンスの寄与は高いので、料率は低くと主張するのは当然です。

将来、ライセンス契約の料率を見直すと、ハイセンスには今よりも安く供与しないといけない可能性は高いと言えます。

 

ということで、将来は、高い料率は難しい。今が一番高く、ここで、固定してしまう方が有利。社名とセットで1%なら1%で、固定してしまうのが東芝にとって一番有利かもしれません。住宅ローンの固定金利のような話です。

 

また、ハイセンスが、世界中で、TOSHIBAブランドで、家電の王様であるテレビを、販売をしてくれるとすると、TOSHIBAブランドが世界で名前の通ったブランドであり続け、ブランドの認知を維持することが可能です。これは、東芝本体が、社会インフラ事業などにシフトしたときに、実際、相当有利に働きます。

 

一方、ハイセンスとしては、今回の東芝テレビ事業の買収で、製品の市場シェアが取れ、部品の購入、特許など、いろいろ有利な面があるのだと思います。

 

ブランド論的には、将来、Lenovoのように、ハイセンス・ブランドにシフトするか、TOSHIBAを継続するかは、ハイセンスの認知度次第です。ハイセンスの認知をあげて、また、あの有名なTOSHIBAブランドを傘下に持っているハイセンスは、技術の優れた良い会社(ブランド)というイメージを植え付けることができれば、将来的に、ハイセンス・ブランドに変更しても良い状態にできると思います。

その間、TOSHIBAブランドに、多少のロイヤルティを払っても、宣伝費用と思えば安いものです。

 

冒頭に戻りますが、40年という数字、ハイセンス側から出たのか、TVSから出たのか分かりませんが、25歳の若手が65歳で定年退職になる年齢です。想像としては、TVSから出た数字ではないかと思います。のれん分けの発想です。

 

東芝本体が、これから、ハイセンスや美的と付き合っていくのは、なかなか骨の折れる仕事です。しかし、上手く他人に頑張ってもらって、ブランド使用料や、ブランド認知を確保できれば、自分で事業をするよりも成功なのかもしれません。

 

少し前まで、ブランドのライセンスは、資本50%超の子会社に限るとか言っていた時代がうそのようです。だんだん、発想が、ミッキーマウスなどのキャラクターとあまり変わらなくなってきたように思います

 

 

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