Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

韓国の商標制度

異議申立の勝率が高い

2017年11月17日の特許ニュースに、「韓国の商標制度の概要」が出ていました。RIN IP Partnersの弁理士の宮田佳代子さんのまとめです。面白いと思った点に適宜コメントします。

特許ニュース

  • 韓国の商標制度は、日本と似ているのですが、権利付与後異議申立制度を採用している点と、指定商品の追加登録出願制度を有する点、それと、商標の類否判断が広く判断される傾向にあるのが、日本との相違点のようです。

 

  • 出願件数は、2016年で170,347件とに日隠の161,859件よりも多く、アジアでは、中国、インドについで、3番目の出願件数ということです。

人口が、5,125万人で、日本の半分以下ですので、比率的に考えると商標出願はだいぶ多いと思います。

  • 特許庁の中に、特許審査1局から3局まであり、それと並列で商標デザイン審査局があります。

韓国は、商標デザイン局という一つの局を持っている点は、進んでいます。本当に産業政策を考えるなら、売れる商品を奨励しなければならず、特許も重要ですが、商標・ブランド、デザインは重要です。

なお、外国商標をしていて、USPTOのように、特許と商標を並列で記載するか、IP〇〇と、Intellectual Properrtyという言葉を使っている国が多いのに、韓国と日本はまだ、特許庁です。著作権文科省ということで、遠慮しているのだと思いますが、いい加減変更しても良いのではないでしょうか。企業で、特許部と言っているのは、少数派だと思いますし、特許の人気低迷の理由の一つかもしれません。

  • 2016年の商標デザイン局の審査官は、162名ということです。

 

商標法と運用の特徴は、以下のようなものです。

  • 商標の定義には、自己の商品と他人の商品を識別するために使用される標章となっています。自他商品識別という本質的なところを定義に入れています。
  • 新しい商標では、匂いの商標が制度に入っています(まだ登録例はないようです)。
  • 審査では、商品の類似について、「日韓類似群コード対応表」というものがあるようです。
  • ファーストオフィスアクションまでは4.8ヶ月、審査期間は平均9.6ヶ月です。
  • アルファベット、漢字だけでなく、日本語のひらがな、片仮名も図形ではなく文字商標として扱われるようです。
  • 商標の類似は日本よりも厳しく、類似範囲は広く判断されるとあります。
  • 同意書制度はされておらず、替わりにアサインバックが可能とあります。
  • 出願中、登録後に指定商品の追加出願が可能ですが、元々商品だけだったのに、役務の追加というのは出来ないようです。
  • 一番の特徴と思ったのは、異議申立です。権利付与前の異議申立制度で、3名の審査官による合議体で、職権審査が可能です。異議申立件数が、2,278件で(日本は396件)、異議申立で拒絶決定される割合は43.8%と非常に高率です(日本は18.6%)。

これは、付与前異議か付与後異議かが大きく影響しています。日本の付与後異議で維持の決定がでたときは不服申立ができず無効審判となるのですが、反対に取消決定が出たときは知財高裁に出訴が可能です。知財高裁に上げて欲しくないという忖度が取消決定を少なくしている実際の理由のようです。

異議は、商標制度にとって根本的な制度であり、欧州のように抵触審査をせずに異議だけでも良いぐらいなので、異議の勝率が20%を切るのは問題のある制度設計です。異議申立が減り、企業の商標への関心を低下させます。早期権利化を優先したためと思いますが、韓国のように50%程度であるのが自然であり、早急に日本の商標法の制度改定が必要な点だと思います。

以前の法改正の時、早期権利化の方が重要と思いましたが、間違っていました。

  • 不使用取消審判における同一性は弾力的に評価されるようです。
  • あと、最近話題になっている権利範囲の確認審判制度があります。侵害訴訟を起こす前には、利用するもので、頻繁に請求するもののようです。

特許で検討しているような、標準化にからめるのが良いのかは分かりませが、日本の知財高裁のメンバーは法律家であり、技術やブランド・デザインに詳しくないので、この制度は参考になります。

確認審判制度は、もともとは、日本の制度だったのが、韓国に残っているものです。

韓国の制度にも、定義、異議申立、確認審判と、台湾同様に見えるべき点があると思いました。

 

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