Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

インドのプリウスの社名

インド会社が勝訴

2017年12月17日の朝日新聞に、インドにおける、プリウスの社名の裁判で、トヨタが敗訴したという記事がありました。

www.asahi.com

  • プリウス」の社名を認める判決
  • インドの自動車部品メーカーが「プリウス」を社名に使っていた
  • ニューデリーの「プリウス・オート・インダストリーズイ」
  • 同社は2002年から、社名を登記
  • トヨタ車の交換用の部品も製造
  • トヨタ側は、訴訟で、「プリウス」名称の使用差止を求めていた
  • インド最高裁は2017年12月14日、トヨタの訴えを退けた
  • トヨタ側は、プリウス社が社名を登録した後の2009〜2010年にインド市場でプリウスの販売を始めた
  • しかし、日本では1997年から販売しており、すでに広告やニュースなどで「プリウス」の名前はインドを含む世界で有名になっていたと主張
  • 最高裁は1997年にニュースになってはいるが、インド市場で(プリウスの)ブランド名が確立しているとはいえないと指摘
  • インドでは販売台数も相当限られ、(部品メーカーが社名を登録する前の)2001年以前に広告はなかったとして、トヨタ側の訴えを退けた

サンガムIPのインド知的財産ニュースレターの2017年7月3日号に、第二審までの動きの説明がありました。

www.sangamip.jp

ニュースレターによると、二審でも、トヨタ側は負けていたようです。

良く理解できていない部分もあるのですが、商標と商号の2つの話があるようで、商標は、商号は2001年4月から使われており、一方、自動車部品の「PRIUS」商標は2001年7月から使われて2002年に商標登録されているようです(現在、無効審判のような手続に入っているようですが、今回の判決でプリウス社のものであると確定するのではないかと思います)。

 

プリウス社の設立以前に、トヨタプリウスが有名だとする記事が一つあるだけで、その程度では、プリウスが海外で有名とは認定できないという話のようです。

2001年の時点で、トヨタプリウスが国際的名声を得ていると立証できていれば、トヨタが勝ったようではあります。

強い証拠を、提出できなかったことが敗因のようです。

 

コメント

判決やその判例評釈を見たわけでもなく、新聞記事とニュースレターからだけの情報ですので、不明確な点がありますが、ご容赦ください。

まず、感じたのは、PRIUSが誕生したのが、1997年頃のようであり、当時はインドはまだ輸出先でもなかったのだと思いますが、商標出願していなかったことが一番の問題となります。

 

それと、PRIUSは造語のように思いますが、日本でも日立のパソコンに同時期にPRIUSという機種があったように(すぐになくなりましたが、TVCMもしていたのである程度有名でした)、あってもおかしくない商標ですので、第三者が善意に使い始める可能性があった商標です。今回の相手方も、裁判では造語の語源を説明しています。

 

あとは、証拠の問題です。2001年4月がポイントのようですが、これ以前に有名である、(それも日本でではなく)インドでの認識として、海外では有名であるという証拠を提出しなければならなかったようですが、それが十分できなかったことになります。

 

トヨタ側は最高裁まで争うのですから、戦う姿勢ではあるのですが、最大の問題は、1997年から2001年までに、商標出願ができなかったという点にあるように思います。

 

このあたり、製薬会社は、新薬などは、はじめから100ヵ国対応すると言いますので、だいぶ先を言っているように思います。

今回は、よく言う交通事故のようなケースと思いますが、教訓になるケースのように思います。

 

トヨタは昔、米国で、LUXUSが、判例データベースのLEXISから異議申立てを受けて異議に勝ったということが有名でしたが、この判決も違った意味で、有名になりそうです。

 

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