Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「かっぱえびせん」のコピーの話

創作者が誰かで、もめない様に

2017年12月19日付のIT Mediaに、カルビーの「かっぱえびせん」の「やめられない、とまらない」のキャッチ・コピーの帰属をめぐる、カルビーと元広告代理店クリエイターの争っている話が載っていました。www.itmedia.co.jp

記事の内容は、かっぱえびせんの「やめられない、とまらない」というコピーを考えた元広告マンが、カルビーを誉棄損で訴えたというものです。カルビー側は、コピーはカルビー社員が考えたとしています。

  • 「やめられない、とまらない」という文句の発案者は近年まで不明
  • 元広告マンがカルビーに対して、我こそが「生みの親」だと手紙で伝えた
  • 社長にも誕生秘話を直々に伝え大いに喜ばれた
  • 元広告マン氏の誕生秘話はカルビー社内報に掲載される運びとなった
  • しかし、待てど暮らせどいっこうに掲載されなかった
  • カルビーは、テレビ番組や新聞記事などで、コピーはカルビー社員が考えたという説明をするようになった
  • 元広告マンは、今年7月に1億5000万円の損害賠償請求をカルビーに提訴した

このような内容の話です。詳細は、IT Mediaをご覧ください。

 

コメント

この話、考えさせるものがあります。

 

発明や意匠の場合、職務発明であっても、個人が発明してそれを会社が譲渡を受け、証拠として譲渡証を作ったり押印したりしてきていますし、明細書への発明者掲載権があったり、使用報償制度があったりして、発明者、創作者の特定はされていると思います。

一方、商標や著作物の場合、このあたりがいい加減で、後で困ることが多いように思います。

 

商標でも、あの商標、誰が考えたのか?というのが、後になってみて、分からないケースっていうのが非常に多いのではないかと思います。

 

商標では、社内に俺があの商標を考えたという人が、複数いることもあります。何が本当かどうかは分かりません。会議でブレーンストーミングなどしながら決めて、決めた時に会議に参加していた人は、皆、関与しているのかもしれませんし、よくわからないのです。また、ネーミングは、外部の委託先と一緒に作ることも多いので、外部の人が本来的な創作者のときもあると思います。

 

以前の会社では、だいぶ前ですが、知財部への商標出願依頼書に、商標の創作者の記載欄があり、ミニマムな使用報償金を支払っていたので、皆、一応、創作者の記載をしていました。

 

しかし、特許や意匠のように譲渡証を取るまでの厳格な運用ではなかったので、依頼書への記載をそのまま鵜呑みにするしかありませんでした。外部の人が作ったものを社内の人の名前で知財部に申請することもなかったとはいえません。

 

それはさておき、今回のコピーですが、一番良いのは、米国の発明ノートのようなものをつけておくことです。確かに、以前、ブランドマネジメントの仕事を一緒にやったメンバーで、クリエイター系の人は、自分の業績をまとめて、ファイルを作っていました。あれがあれば、何をしたかは、ある程度、はっきりします。

 

最近、商標のケースですが、米国や中国で、商標に、著作権も活用できるというケースに遭遇し、現地の弁護士・弁理士から著作権登録が重要と勧められるケースがあり、そうだなと思ったことがあります。確かに、著作権登録により、公表日や、譲渡の関係が明らかになります。

 

かっぱえびせんのコピーや、商標の創作者を、著作権登録でなんとか明確にできないかと思ったですが、日本の著作権登録では、創作者が誰かということは、正面から記載事項ではないようですし、法人著作もありますので、個人の創作者なり、企業なりがしかっりと著作権法を理解して、メモをとり、契約をして対応するしかなさそうです。

 

このあたりの権利意識というか、創作者認定の問題は、今後も出てくると思います。法律はこのあたりは考慮の対象外で実務に任せ、実務は法律がないので何もしておらず、取り組みがちぐはぐだと思われるところではないでしょうか。