吉野源三郎著の文庫版
今、マンガ版が人気の吉野源三郎の「君たちはどういきるか」の岩波文庫版を、家族から借りて読みました。
2017年に羽賀翔一の漫画が出て(「漫画 君たちはどう生きるか」)、本屋に沢山並んでいます。また、宮崎駿が、製作中のアニメのタイトルが、「君たちはどう生きるか」になるということで、話題になっている本です。
この本は、1937年という戦争が迫ってくる当時において、言論統制が厳しくなったなかで、子供には自由な考え方を持ってほしいということで、山本有三が編者責任者として出した「日本少国民文庫」というシリーズの最終刊です。
当初は、山本有三が執筆予定だったようですが、目の病気のため、吉野源三郎が筆をとることになったとのことです。
まず、非常に読みやすい本です。1937年(昭和12年)に出版された本ですが、古さは全く感じません。
子供向けとありますが、内容は高度です。科学的知識、歴史学、倫理、資本論の入門まで入っています。
説明されている内容は、現代からみても違和感はありません。
これらの科学的な知識(社会科学を含む)が、少年だれしも経験するような倫理的な物語の随所にちりばめられており、上手に説明されるので、子供でも自然科学、社会科学などの本質的な理解が可能なようになっています。
また、仲間との信頼関係や、それを崩してしまった後悔、悩みなど、全く、現代でも古さを感じない倫理的な課題も扱っています。
1937年の本ですので、戦争を否定していません。戦争の高揚感は現代人が忘れたものの一つだと思います(替わりに受験戦争や、スポーツの競争、企業の業績争いなどがあるのでしょうが)。
省線電車という言葉がわからなかったのですが、後で調べたところ国電(山手線や大阪環状線など)のことであると知りました。読んでいるときは、市電(路面電車、チンチン電車)をイメージしていましたが違っていました。
それはさておき、この本は、2017(正確には2017年~2018年1月3日まで)に読んだ本で、No.1の本です。「君たちはどう生きるか」自体は漫画を頼らずとも、岩波文庫版で十分理解できます。
なお、岩波文庫版では、巻末の解説を、丸山真男が書いているのですが、本当に良くポイントを指摘しているなと感心しました。
エッカーマンの「ゲーテとの対話」を読んで、その後、斎藤孝がゲーテとの対話の感想をまとめた「座右のゲーテ」を読むと、斎藤孝は何と上手に本を読んでいるのかと思いましたが、今回も同じ感想を持ちました。
私が漠然と面白いなと思った点について、そう整理して説明すればいいのかと思うような解説をしてくれています。