Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

iPSの山中教授の要請

富士フィルムに特許料の値下げ要請

少し前の記事になりますが、2017年12月6日の日経電子版に、iPS細胞の山中教授が富士フィルムに対して特許料の値下げを要請したという話がありました。

www.nikkei.com

  • 京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は、iPS細胞を使った再生医療の普及に向け、富士フィルムに特許料を低額にするように要請
  • 同社子会社のもつ関連特許は再生医療に重要
  • このライセンス料が高額だと低コスト化への足かせになりかねない
  • 山中教授の研究所は再生医療向けのiPS細胞の備蓄を進めている
  • 京大が取得したiPS細胞に関する基本特許は、特許管理会社のiPSアカデミアジャパン(京都市)が管理
  • iPSアカデミアは企業向けに製品の売上高に対して1.5%と低額
  • 山中教授は「iPS細胞の備蓄は公共事業」とし、「価格を上げるべきではない」という立場。安価にして利用を広げる狙い
  • 一方、富士フイルムの子会社、米セルラーダイナミクス・インターナショナル(CDI)はiPS細胞の作製に関する特許を保有
  • iPS細胞から再生医療で移植に使う細胞を作るのに重要な特許
  • 富士フイルム再生医療関連のライセンス料を明らかにしていない
  • 富士フイルムは「研究を妨げるつもりはない」とし「企業が事業化した場合は製薬と同じように特許交渉するのは当然」
  • 将来市場が拡大するよう、十分に配慮したいという姿勢あり。今後、合意点を見いだせる可能性

コメント

日経の独自取材ですが、この記事を読んで、驚いたのは、山中教授のような影響力のある方が、民間企業の特許の料率に直接言及している点です。

 

1.5%のiPSアカデミアジャパンの特許料は安く、安価にして利用を広げるというのはそれはそれで良いと思います。

 

富士フィルムとしても、まだ研究段階に近いところですので、今高い料率を取ってパイが広がらないよりは、今はパイを広げることに専念し、大きな事業に育てた方が、結局、富士フィルムにしても実入りが多いようこともあると思います。

 

しかし、そのような判断は、社会の要請は聞いた上で、富士フィルムの判断で行うべきもので、第三者に強制されるものではないように思いました。

 

ドイツの土地所有権

www.fujitsu.com

全然違うことを検索していて、富士通総研の記事で、空き地や空き家が多くて、困っているという社会問題で、面白い記事を見つけました。

 

日本の土地所有権は絶対ですが、これはローマ法を起源とするドイツ民法の第一草案がモデルであり、実際に施行されたドイツ法はゲルマン法の伝統にもどり、相対的所有権になっているという記事です。

民法の制定にあたっては、ドイツ民法第一草案がモデルとされた。これはローマ法学者によって作られたもので、結局はドイツにおいて日の目を見なかったものである。「ローマ法型」の土地所有権は絶対的、排他的であり、その絶対性は土地の自由な利用、処分に結びつく。絶対的な所有権の下では、土地取引の自由が基本とされるため、一般に土地が商品として扱われ、土地投機も起こりやすいとされる。このことは、地租改正以降、実際に土地投機が現れるようになったことと符合している。

これに対して、「ゲルマン法型」の土地所有権は、都市の秩序を守るために、所有権の絶対性が限定される相対的所有権の概念である。相対的所有権は、その性格から社会的所有権とも呼ばれる。

欧州では、18世紀から19世紀末にかけて絶対的所有権の考え方がとられていたが、19世紀末から20世紀にかけて相対的所有権の考え方に改められた。絶対的所有権では所有が最優先されるのに対して、相対的所有権では利用が最優先される。相対的所有権の下では、土地所有は公共の福祉に役立つものでなければならず、土地所有者がそのように使用する義務を負うとされる。

 ふ~ん。そうなのかという話ですが、特許も独占排他権であり、所有権の影響が非常に強いものですので、本家本元の土地所有権が相対的所有権と考えて、公共の福祉に役立つものでないといけないとすると、特許も影響を受けるはずです。

 

大学時代の英法の授業で聞いた話で、あまり正確ではないのですが、イギリスでは日本のような土地の所有権はなく、すべての土地は女王陛下のものであり、日本の所有権類似の使用権があり、一般の人は、その使用権を売買したりしているという話を聞きました。

立論の仕方はだいぶ違いますが、公共の福祉的なものが出てくる余地は、ドイツに近いものがあると思いました。

 

そうなると、山中教授の話も、単に言い過ぎとはいえないのかとなと思いました。