Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

聞いてきました(伊藤元重先生の講演会)

世界の景気の話

2018年1月21日にホテルニューオータニで開かれた、東京大学名誉教授で、学習院大学国際社会学部教授の伊藤元重先生の話を聞いていました。

「2018年の世界経済の動向」というテーマです。

 

世界的に景気は良いが、全世界同じく、株は高いが賃金や成長率が低い状態で同じということです。珍しいことのようです。

2000年のITバブル崩壊、2001年の9.11のテロで悪くなった世界経済が、ゴールドマンサックスのオディール氏のBRICsという言葉の発明で一旦良くなるのですが、2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマンショックで崩壊するという歴史の話があり、今は、どのあたりかというような話でした。

 

欧米ともリーマンショックの危機が本格的に回復してきた時期という認識です。トランプ政権は評価できない政策ばかりですが、景気が良いので助かっています。2008年のアイスランドの3大銀行の崩壊とギリシャ危機は、ユーロの根本的な弱さを露呈しました。

中国は、胡錦涛政権の温家宝が40兆元の投資をして、新幹線・道路・原発・住宅・鉄鋼と開発し、瞬間的に12%成長し、危機対応としては社会主義が有効であることを示しますが、2014年、2015年に不動産価格の暴騰・暴落でチャイナショックを起こします。その後、ニューノーマルとなり、6~7%成長で、最近は安定しているようです。中国には、不良債権問題があるようですが、経済成長や資産などもなり、中国政府がグリップしているようですので、当面は心配ないようです。

 

BRICsは、もはや死語で、今高い成長率を示しているのは中進国で、フィリピン、ベトナムインドネシア、インドということです。これらの国は、自力で成長しています。特に、フィリピンは、麻薬撲滅戦争をしており、犯罪者を5000人を射殺し(撃ってきたから応戦する)、12万人が投降し、人権問題ありと言われながらも、レイプ・自動車強盗・拳銃強盗が軒並み50%ほど減り、大統領は支持率80%という状態です。

欧米企業や日本企業の一部はフィリピンに投資しています。中国の華南地区に比べて、5分の1から10分の1の人件費、ASEANで唯一英語が話せる、人口が1億人(増えています)の若い人の国、ということでメリットがあるようです。タイは高齢化国ということでした。

 

石油相場は、27ドルあたりまで落ちていたのが、最近は60ドル70ドルで安定しています。

 

全体的に、2018年は、良い時期なのですが、良い時期にはリスクを見ておくという話がありました。

 

リスクは、①金利(上昇すると不動産価格と株価が低下する)、②トランプ大統領と欧州のBRIEXIT、③地政学リスク(北朝鮮と中東)です。

トランプ政権はNAFTAでカナダ、メキシコ、中国と経済戦争状態で、優秀な技術者がカナダに逃げているようです。メルケル首相も連立が難しくなっています。

 

日本ですが、アベノミクスについて日本では評判が低いのですが、海外では評判が高いということです。

日本で評価が低いのは、①デフレ脱却、②経済成長、という当初の目標が達成できていないからですが、これは他の先進国と同じ状態です。

逆に評価が高いのは、①株価が、8800円から2万4千円、②GDPが回復。GDPは、1997年の532兆円で、リーマンショック東日本大震災で、2012年には500兆円も切ったのが、元に戻った、③雇用も、有効求人倍率が1.56~1.57という数字となり、これは1970年代に戻った数字、④企業の収益の貯蓄剰余金は、毎年25兆円以上で、この10年で日本企業は250兆円貯めた計算となっています。(アメリカはGDPの0.9%、ドイツは2.5%、日本は5.1%)

 

今後の日本は、企業が、賃上げ、投資、配当を行うかにかかっており、アマゾン(配当をせず、投資し続けている)を例に挙げて、電気自動車、フィンテック、小売業など、国際社会の動きが変わる中で、投資をすることができるかにあるとしています。

 

2020年の東京オリンピックのあと、少しは景気が悪くなっても、長期的には良いという展望と感じました。

 

伊藤先生の講演の後、三井住友信託銀行の投資顧問業務部長さんのがあったのですが、こちらも面白い話がありました。

記憶に残ったは、①今のドル円レートは、アメリカの金利が動くと(日本の金利が動かないので)円レートが変化する、②女性・シニア層のパートタイムを中心に雇用環境が良い、③日本株と為替の連動が切れてきた、④株価は日本は割安だが、アメリカは割安ではない、⑤中国で「煤改電・煤改気」という暖房を石炭から電気・ガスにシフトする動きがある、⑥中国にはコマツのKOMTRAXという指標ち注目、⑦恐怖指数(VIX)が下がっているので要注意、という点です。

 

景気予測は、あくまでも参考までです。

 

コメント

伊藤先生のお話は、新聞とかで見たこと、聞いたことがある話ばかりなのですが、まとめて聞くと非常によく理解できました。良い頭の整理になりました。

目新しい情報としては、フィリピン、GDPの回復、企業の貯蓄剰余金の高さでしょうか。

企業が、お金を貯めこむだけではなく、この良い時期に、 どれだけ事業に投資できるかですね。

 

外交関係のインテリジェンスでも、基本は、その国の公表された情報、新聞情報から構成されているといいますので、知っている話をいかに整理して理解しているかが、重要なのだと思います。