なぜか、日本の宣伝・販促担当者には人気がない
2018年1月29日の日経の私見卓見のコーナーで、タイププロジェクト社長の鈴木功さんの投稿記事がありました。内容は、コーポレートフォントで企業アイデンティティを確立していこうというものです。www.nikkei.com
- 企業がメッセージを発するとき、文字を使用
- デザインを統一した「フォント」を介して、企業は社会にメッセージを送る
- 欧米では多くの企業が、使用フォントを吟味
- 企業のアイデンティティーを示す重要な手段
- 自社名を冠したフォント、いわゆる「コーポレートフォント」を導入する例が増えている
- 印刷物やウェブサイト上で使用する文字をコーポレートフォントで統一
- また、店舗とウェブのアイデンティティーを統合
- 日本企業は立ち遅れている
- ソニーやデンソーなど、グローバル展開する大手がコーポレートフォントの重要性を意識し、独自フォントを導入
- 企業ブランドの構築の手段として、コーポレートフォントが不可欠
コメント
タイププロジェクトの鈴木社長は、自社名を冠した独自フォントであるコーポレートフォントを推奨されています。
ただ、フォントを自社開発することは、お金をかければできたとしても、その出来上がったフォントを社内各部署のみならず、デザイン会社や広告代理店、協力工場に至るまでに配布しないとフォントを統一することはできません。
最近のフォントの会社は、企業の独自フォントを開発することもしてくれますし、そのフォントをネットで販売するところまでやってくれますので、このような企業を使う方法もあります。
ただ、そこまでせず、一般的なフォントでも、当社はこれを使うと決めれば良いと思います。当社は、どこどこの会社のヘルベチカ・フォントを使うとか、どこどこの新ゴを使うとかでも、十分代用できます。まずは、そこからのスタートだと思います。
欧米では、今回話題にしているコーポレートフォントを使って文章を表現し、他のフォントを使わず、そのフォントの中の級数の違いやBold体を使う程度収めるようにするのが一般的なのだと思います。これは、製品やパッケージのみでなく、宣伝・カタログ等でも守られています。
ただ、この話、欧米では一般的ですが、日本の宣伝・販促担当者には、人気のない話です。日本の宣伝・販促担当者は、目立つことを最上の使命と考えて、奇麗にまとまっていることを良しとしません。また、創作の自由度が下がることを極端に嫌がります。クリエイターほどその傾向があります。
本来の表現の自由は、(ルールによる)束縛の中にこそあるという言ってくれる人もいますが、クリエイターの同意をなかなか得られません。
ソニーがコーポレートフォントを使っているといっても、パッケージデザインやコーポレートツールまでであり、宣伝までは踏み込めていないのではないでしょうか。
フォントを綺麗にしたが、売り上げが下がってしまったというのでは意味がないのですが、コーポレートフォントにとって、宣伝・販促は課題です。
欧米の宣伝・販促担当者が受け入れているのに、日本の宣伝・販促担当者が受け入れられないというのは、なぜなのかと考えると、日本語の特殊性に行きつきます。
日本語の文章には、漢字、片仮名、ひらがな、ローマ字、数字など、色々なものが混じっており、また、縦書きもあれば、左横書きもあります。新聞を見ても、ゴシック体もあれば、明朝体もあり、一つの小見出しでゴシックと明朝がマゼコゼになったものまであります。この多様性は、アルファベットとアラビア数字程度の欧米の文章とは、大きく違うところです。
このあたりが、大きく日本の宣伝・販促に大きく影響をしているような気がします。日本企業がグローバルになりきれない理由の一つではないでしょうか。