Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

アシックスの模倣品対策

模倣品対策の講演会

1月25日(木)に日本商標協会の実務検討部会で行われた、アシックスの齊藤浩二部長の講演会に出席しました。

齊藤さんは、以前の会社で私がブランドマネジメントで、齊藤さんが知財の立場で議論をしたことがある、旧知の方です。

もともと特許を担当されていたのですが、米国駐在員の時に、ブランドの大切さに気付かれ、商標も担当となられた方です。ブランドのことを良く理解されています。

現在は、アシックスの知的財産部の部長として、特許、商標意匠、模倣品対策のすべてを見ておられるようですが、当日の話は、特に中国の模倣品対策と異議申立に集中していました。

 

ASICS(アシックス)は、Onitsuka Tigerからスタートし、次にasics TiGERとなり、現在のasicsになってたようです。しかし、今でも、3つのブランドを使い分けているとのことです。

海外売上比率が、7割5分を超え、アジアで人気ということです。

商標としては、asics、スパイラルマーク、asics TiGER、Onitsuka Tigerの他に、ASICS Stripeというシューズの横にある井桁状のラインが商標のようです。このラインの商標が侵害されているようでした。

 

模倣品を第一世代(部分模倣)、第二世代(全模倣)、第三世代(改変模倣)と整理し、第一世代、第二世代に比べて、最近の第三世代は、相手方は商標などを改変しており、また、自分で商標権を持っていたりして、対処が難しいと説明されていました。

 

模倣品対策とも連動して、異議申立も相当やっておられ、2014年は5件、2015年は9件だった中国の異議を、2016年、2017年と年180件ほどされていると聞きました。

以前は、勝率は、9割5分で、勝つ案件しか異議をしなかったのを、今は、ある意味、勝率度外視で異議申立しているとのことです。

中国の場合は、基本的に署名者が証人喚問されるようなこともなく、代理人任せでOKですので、中国についてはあり得る対策です。

 

面白かったのは、類似商標のモニターで発見された案件は、その出願人名で検索をかけて、異議申立のロングリストを作っているという点です。中国の場合、同じ出願人がよく似た商標を展開して出願することが多いので、これは、参考になる方法だと思います。

 

中国展開した日本企業に共通の失敗として、漢字から中国に入ってしまった点を仰っていたのは、まさにその通りだと思います。

日本でなまじ漢字の社名があったばかりに、それをそのまま中国に移植し、中国では別の読み方となってしまっています。

できれば、ブランドの音を覚えて欲しいですので音訳が望ましいですし、音が無理な場合は意味を伝える意味訳でも良いのですが、単に日本の漢字を持って行ってしまっており、これは問題です。(音も意味も、両方が近いというのが一番です。)

簡単に伝わるからと言って、日本の社名をそのまま移植したのは問題でした。欧米の会社は、アルファベットですので、この点は、しっかりと音か意味を伝えています。

 

少しの間に、だいぶ高いレベルまで進めておられるように思いました。刺激を受けました。