Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

働き方改革と経営目標

強みに集中するなどの処方箋

付加価値増と労働分配率

2018年3月5日の日経の私見卓見に、公認会計士の星野雄滋さんの寄稿がありました。

www.nikkei.com

星野さんは、トーマツのパートナーのようです。

働き方改革を経営目標とするのであれば、生産性(1時間当たりの付加価値)、労働分配率(付加価値に対する人件費の比率)など、これまで財務分析の対象ではあったが、経営目標ではなかったものを、経営目標に組み込むことが必要では?という内容です。

 

日本の労働分配率は2011年以降低下傾向で、生産性は数十年にわたり最下位というのが前提です。

これを一定の労働分配率を維持しながら、いかに持続的な生産性向上を実現するかを、経営目標にすべきとの主張です。

通常、働き方改革の当初は、労働時間の短縮によって生産性が向上しますが、これを持続するには、価格の再構築や新製品を出すことが重要。一方、残業削減で働き手が不利にならないように、株主配当と労働分配率を同列に論じるべきとのことです。

 

一つのモデルとして、長時間労働の原因である過剰な製品・サービスを捨て、最も価値の提供できる得意分野(強み)に集中し、時間削減と付加価値増加をセットで実現することを提案されています。

 

コメント

面白い話ですので、是非、日経でご覧ください。

働き方改革で、残業時間が削減されると、単位時間あたりの生産性がアップするように見えますが、それは従業員に単位時間あたりのアウトプットの強化という意味でもあります。

労働時間削減と生産性向上を、持続的に両立するには、1)従業員の能力向上、2)仕組みやITやAIの支援による生産性の向上、などが必要になります。

今回の寄稿は、これに経営目標(経営者のコミットメント)を入れているのが、ポイントだと思います。経営者として、知恵を出す必要がありそうです。

 

従業員の能力向上に関しては、大手企業では、労働時間削減による利益を、会社の利益にするのではなく、従業員教育のために使用するという動きがあります。 

nishiny.hatenablog.com

 

このような研修も悪くないのですが、従業員の生活を考えると、原資は賃上げ、すなわち労働分配率を上げる方に持っていくのが本筋であるように思います。

 

ただし、単に労働分配率を上げるだけなら、(残業以外の)通常の時間内で密度の濃い仕事をすることになり、労働者には負荷増となり、疲弊することになります。

残業して残業代をもらっていた時の方が、時間にゆとりがあり、豊かであったということにもなりかねません。

 

残業を減らしながら、賃金を上げるには、一例として、儲からない製品・サービスを止め、儲かるものに集中というのは、その通りだと思います。

 

一方、事業のスクラップ&ビルドは、良く見かけます。儲からなくなった事業から撤退して、儲かる事業を模索する動きです。たぶん、このスクラップ&ビルドは、既に状況が悪化した後の外科治療のようなものなのだと思います。

 

たしかに、経営資料では売上・利益が中心で、生産性・労働分配率などは、ほとんど見たことはありませんので、これを経営目標に入れることは、必要なことなのかもしれません。生産性は技術の分野で、労働分配率は人事の分野というように、担当が違うのかもしれません。

 

労働分配率を維持しながら生産性を上げる活動は、漢方薬のように時間をかけて取り組む必要がありそうですが、長期的にその企業を強くするような気がします。

 

特許事務所の業務は、画期的な新製品というものはなく、労働集約型の業務ですので、この分析は向いているように思いました。