Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

例えば外国商標調査で比較

企業と特許事務所の違い

企業の知財部と特許事務所の双方に勤務した経験から、両者はだいぶ違うなと感じましたので、書いておこうと思います。

 

他の業務でも、良いのですが、商標調査を題材に説明してみます。

 

企業の知財部で、事業部門から外国商標調査の依頼を受けたとします。大体、依頼書のようなものがあり、①商標(マーク)、②国、③対象の商品・サービスなどを記載した依頼書が来ます。

場合によっては、商品・サービスが分かりにくかったりして、Webでチェックしたり、電話をして確認をしたりします。

そして、特許事務所なり、その他の調査会社なりに、調査の依頼を出します。企業の場合は、例えば、至急などでない限り、調査は2週間程度かかるとします。

2週間ほど経って、特許事務所や調査会社から回答があると、それを読んで理解します。そして、理解したものを、まとめ直して、事業部に分かり易い形で連絡します。

特許事務所からの連絡は、専門用語が使われており、事業部の営業部門の方などには、専門的すぎます。忙しい事業部の人には、結論と、理由(抵触しているのか、識別性がないのか)と、引例が一つから三つぐらいが良いところだと思います。 事業部長は、企業でまとめた方だけを見ます。

 

グローバルネーミングの場合は、同じ商標を複数国で調査をしますが、同じ引例なのに、各国の弁護士・弁理士が違う評価をしていたりします。なぜ違うのか、企業としてはこの相手方にどう対応すべきか、重視すべきか、無視するのか、決めなければなりません。各国の調査を横にならべて、う~んと考えて、腹を決めるときです。

 

事業部に説明しますが、事業部もこのネーミングで勝負をしたいと思っているので、例えば、使用不可と伝えても、簡単には引き下がりません。交渉をしてくれ、同意書を取ってくれて、ライセンスを得てほしいと言ってきますが、商品の発売時期が2か月後に決まっているので、今から交渉していては、半年かかってしまい、間に合いません。

そうなると、また、ネーミングからやり直しとなり、次に商標調査となります。どこかで、グレーだけど、商標課長が腹をくくって、OKにしようかということになり、出願します。そして、心配していたのに、結局、何も問題なく登録になったりします。

 

一方、特許事務所で、商標調査の実務をやってみて、見える世界が全く違いました。企業の知財部からの依頼書からスタートするのは同じようなものです。依頼書に記載してある商品・サービスに不案内の場合は、インターネットで調べたり、企業の担当者に質問したりするのは同じです。

 

ただ、企業の知財部にいた時は、依頼してきている事業部の経営や、主力商品や、事業の進捗、評判、活動地域、事業部長の顔、担当者の顔など、色んな前提情報があったのですが、特許事務所で、商標と商品・サービスだけ記載があり、調査をするように依頼があっても、実感がわかないことが多いのです。

国際分類で認められる英語表現にしたり、多少の作業はしているのですが、その商標(マーク)に込めた依頼の思いが理解できません。ここは、企業と特許事務所のやり取りで改善すべき点だと思います。

webサイトがあるのでだいぶ理解は出来るのですが、当該事業の重要性などが分かりません。

調査でも、事業の重要性や事業の本気が伝わる調査依頼ならば、海外の弁護士も本気で回答してくれるのではないかと思います。

 

また、企業にいたとき、特許事務所からの調査報告は、一カ国10分程度で読んで、それを、事業部用に5分でまとめていました。

それが、特許事務所では、英語で来た回答を読んで、理解するだけなら、20分で出来るとして、それを文章にすると計2時間はかかります。企業のように、結論と理由と引例だけではすまないためです。依頼にも、30分ほどかかり、その他の連絡に30分ほどかけているとすると、調査1件に3時間です。現地実費とは別に3万円は必要だなと思いました。

 

やってみて、こりゃ大変だなと思ったのと、この苦労は企業の人には解らないと思いました。企業の知財部でも直接海外の弁護士・弁理士とやりとりしている会社も多いと思いますが、社内への説明用のまとめしかしません。商標の専門家に読んでもらう特許事務所のレポートとはボリュームが違います。

だいたい、2時間かかるとすると、一日に2、3件しかできません。

この1年、時間が経つのが、非常に早いのですが、作業に没頭しているためだと思います。生産性という意味では、課題があるかもしれません。

 

どんな調査がよいかは、企業でも好みが違うところです。詳細な日本語の説明を求める企業も、そうではない企業もあります。

企業の担当者は忙しいので、なんでもA4で1枚以下という会社もありますし、丁寧な説明を好む会社もあります。

事業部には、結論と理由と引例で説明するので、その報告フォームにして回答し欲しい。そこに企業の担当者や課長が検印を押して、事業部に渡すという会社もあります。

スピードを重視する会社で、必要があれば自分で読むので、手間をかけないで、そのまま直ぐにパスして欲しいという会社もあります。

 

昔いた会社で、戦後一番はじめにブランド網を築くために、お願いした弁護士さんが、外交官出身に弁護士だったので、英語の書類をそのまま送ってこられていたようです。企業が英語を読んで理解して、弁護士さんには日本語で回答すると、弁護士が英語で現地に連絡するということで、翻訳が一回抜けていますので、速いことは速いです。

たぶん、シーメンスやフィリップスといった、海外主要企業はバイリンガルですので、意図せずに、そうなっています。ある意味、ここは、日本の特許の運用の問題点だと思います。スピードダウンやコストアップや過剰サービスである可能性があります。