Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ダブルブランドとCo-Branding(その1)

商標管理では禁止

ブランディングでは推奨

先日、発明推進協会の外国相談室に勤務されている知人が、今年度末で事業終了となりリタイヤされるということで、事務所にご挨拶に来られました。

特許庁の「中小企業海外展開支援施策」と外国相談室(外国産業財産権侵害対策等支援事業)のパンフレットをいただいたので、それについても書いておこうと思いますが、久しぶりにお会いして、思い出したことがあるので、メモしておこうと思いました。

 

この方は、以前の会社の関係会社(有名企業です。現在は以前の会社とも資本関係がなくなり、別の会社と合併しています。)の商標の責任者をされていた方で、二度ほど、教えを請いに、大阪から東京に来た記憶があります。

 

その内の一回が、ダブルブランドとCo-Brandingです。

一般に、知財の商標管理の世界で云われてきたのがダブルブランドで、ダブルブランドは禁止だとされています。

一方、マーケティングブランディングの本などには、Co-Brandigは、ブランドの足りないところを補う方法としてある面で推奨されています。

ほとんど同じことなのに、違う結論です。きちんと整理して考えないといけない話です。

 

ダブルブランドといっても、二種類あり、一つが商標同士が結合したものです。典型的なダブルブランドですが、最近は、あまり見かけません。例えば、次のような商標です。

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NECの電子部品事業とTOKINが事業統合をして、社名を「NECトーキン株式会社」として、このロゴを使っていた時期がありました(2017年に、株式会社トーキンに変更したようです。)

結合社名や結合商標は、簡単に認めることはできません。特に、社名は要注意です。何の契約もなく認めるとその会社のものになるので、戻ってきません。なぜなら、社名はその会社のものだからです。資本が50%以上あっても、契約は必須です。

ブランドロゴのNEC/TOKINは、そのブランドが出して良い商品を絞ること(これをしないと、新製品が競合したときなどもめます)やロゴの使い方を決めておく必要があります。

 

もう一つが、製品本体やパッケージやカタログで、相手方のブランドロゴを表示するタイプのものです。例えば、我が家のPCはNECなのですが、sound by YAMAHAとなっています。

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こちらは、 積極的な意味のダブルブランドです。コンピュータで名声を得ているNECが、音響で名声を得ているYAMAHAと一緒になるので、Win-WInになるためです。マーケティングブランディングが、Co-Brandを推奨しているのは、だいたい、このような事例です。

例えば、次のアーカー先生のブランド・ポートフォリオ戦略の第6章の戦略的資産の使用:ブランド提携などが、この立場です。

ブランド・ポートフォリオ戦略

ブランド・ポートフォリオ戦略

 

 

しかし、例えば、ある販売店が1,000台売るから、YAMAHAの位置に、自社のロゴを表示してくれと言っても、OKは出せません。消費者がPCを買うのは、NECのブランドを信頼して買うのであって、その会社のブランドではないためです。商標用語では出所がどこか分からなくなるということもできます。

また、一社に認めると、他の販売店にも認める必要も出てくるとか、営業が有名でもない会社にダブルブランドを乱発して、こちらのブランド価値を落とすなどということもあります。

ダブルブランドは禁止としているのは、このような理由です。家電も厳しい運用でした。