Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ダブルブランドとCo-Branding (その2)

任天堂のソフトで確認 

 

四半世紀前に、ゲームのソフトウェアをパッケージに入れて販売することになったのですが、ゲームの場合、自らゲームを作るか、ゲームの著作権ごと買い取るようなビジネスでもないかぎり、販売元になって商品流通させている会社と、実際にゲームソフトを作った会社は違うようです。

その場合、ソフトウェア開発会社のブランドロゴがパッケージに記載されます。そうなると、販売元のブランドは、ダブルブランドとなりますので、ダブルブランド禁止のままでは、表示できないことになります(例外決裁、特別決裁という方法はありますが)。

販売元の事業部門は、折角なので、自社のブランドを出したいと考えた場合、ダブルブランド禁止の考え方と整合性がとれなくなりました。

そして、そもそも、ダブルブランドとは何であって、なぜ禁止するのか、どのような場合はOKにできるのか、基本に戻って考えるべきという話になりました。

 

そこで、上司に言われ、考え方を整理するために、(その1)の冒頭の知人に教えを乞いに行きました。その会社は、子会社に有名なレコード会社があったため、有益な示唆があるのではないかということでした。

そのとき、教えてもらったのは、レコード会社の話であり、音楽の世界では、CDを製造・販売するレコード会社とは別に、レーベルという概念があり、なんでもかんでも自社のブランドを表に出すという商売では、そもそもないということでした。自社でプレスし、自社のルートで販売するとしても、レコード会社の社名程度はでるが、表に出るのはレーベルということです。

 

相談したダブルブランド案件では、こちらのブランドが、相当大きく出ていました。

ゲームソフトの場合は、ゲームの種類(規格)を示すマークが、レコード会社でいうレーベルなのです。プレスし、流通しているブランドは、社名程度にするか、ダブルブランドにするとしても、極控えめに出すべきものでした。

結局、この事業は長続きしませんでしたが、製品へのブランドロゴの入れ方は、業界業界で、だいぶ差があるなと思ったことを思い出しました。家電などでは、自社のブランドをどれだけ立派に見せるか、露出するかが一番重要なのと好対照です。

 

たまたま、家にあった任天堂3DSのソフトのパッケージを見てみました。マリオカート7とサンエックスランド テーマパークであそぼう!というソフトです。

マリオカート7は任天堂の商品で、裏面には任天堂の社名があります。一方、サンエックスランド テーマパークであそぼう!は、裏面にはエム・ティ・オー㈱の社名があります。この部分が、販売者=責任主体が違うことを示しています。事実そうだという証明に、写真をつけておきます。

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この商品においては、NINTENDO DS3DS)は、正面や側面に大きく出ています。これは、ゲームの種類(規格)を示すもので、出所表示=責任表示ではないようです。

 

マリオカート7やサンエックスランド テーマパークであそぼう!はタイトルですので、正面や側面のメインの位置に大きく出ています。

 

この整理の方法は、一つの方法であり、必ずしもこのような整理になるとは限りません。事業の設計次第で、裏面の社名を全部、任天堂にして、必要に応じて、コンテンツの責任主体や著作権者がエム・ティ・オー㈱にあると表現する方法もありそうです。

 

また、NINTENDO DS3DS)というゲームの種類を示すマークに、NINTENDOという社名が入り込んでいますが、PlayStation やPS Vita、X-Boxなどは、きのゲームの種類(規格)を示す商標は、ソニーマイクロソフトという社名の部分ではありません。

 

ゲームをしないので、ソニーマイクロソフトがどんな表示になっているのか、手元に資料はないのですが、このような表現のあり方を設定するのも、商標管理の仕事の一つです。

 

このダブルブランドの話題だけで、一冊の本ができるぐらい重要な話しで、アーカー先生の本など、表面的だなと思うものです(書いておられるだけ良いのかもしれませんが)。各社とも苦労されているのではないかと思います。