Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

品質不正をブランド管理で防ぐ

阿久津先生のオピニオン

2018年4月12日の日経の私見卓見に、一橋大学の阿久津聡教授の「品質不正、ブランド管理で防げ」というタイトルの投稿がありました。

www.nikkei.com

  • 日産やSUBARUで無資格従業員が検査をした問題など日本企業で品質不祥事発覚
  • 既存ルールが形骸化しているなら、堂々と制度の改正を訴えるべき
  • 消費者は、法令すら守れない企業が自分との約束を守れないと不安
  • 企業と顧客の暗黙の約束である「ブランド」の価値が損なわれる
  • 法令違反という裏切りで、気づき上げてきたブランド価値が損なわれる
  • 品質不正をする企業は、ブランドのシステムが理解できていない
  • 品質に問題がなかったとしても、ブランド管理の観点でNG
  • 不正問題の背景は、ものづくりのレベルが下がったということではない
  • ブランド管理のプロセスの理解が組織の隅々に浸透していないこと
  • ブランド戦略の徹底が必要

実際の日経新聞で、ご確認ください。

 

コメント

●一般に、ブランドと品質の関係は非常に密接なものとは言われますが、どのように社内で説明していくか、非常に悩む問題です。

品質は品質で専門組織があり、プロの専門家がいます。その人達に、素人のブランド戦略担当者が、製品の安全や機能の品質のことを言っても始まりません。

(では、魅力的品質はというと、こちらも、既に、デザインや宣伝や広報など、多くの部署があり、その道のプロがいて、ブランド戦略担当者の出る幕はありません。)

 

ブランド戦略担当者は、ブランドの目指す姿や、ポリシーのようなもの、社内の方向性を併せるものを作り、それを啓発することは可能ですが、そこまでが仕事範囲になります。

 

でも、実際は、阿久津先生のオピニオンの冒頭にあるような、品質不祥事が発生し、場合によっては、会社存続が危ういケースも出てきます。

ブランド戦略担当者が責任を問われることはなさそうですが、何か、自分の仕事が、机上の空論というか、隔靴掻痒の業務でしかなく、何もできていなかったのではないかと思ってしまいます。

 

●また、阿久津先生のオピニオンにある、時代遅れの法令の改正ですが、これはこれで大変です。欧米の企業は、政府の法令でも積極的に変えていく力がありますが、日本の企業は(トヨタさんは別として)、行政の力が強いのか、通常は、時代遅れの法令を変える力があるようには思えません。

他社を含めた企業の専門家集団が声をあげて、工業会などを通じて、変えるべきだとは思いますが、そのためには、相当な努力が必要になるように思います。

 

今回、現場の品質担当者は、ルールと実体が違うということや、それが問題であることは分かっているのだと思います。これを改善することは、簡単ではないなと思いました。

最近は、行政もパブコメなど積極的に求めているようですので、昔とはだいぶ違うのかもしれませんが。

 

●もう一つ、思ったのは、企業の各部署の担当者が、ブランドと品質の関係を理解したとして、ルール改正をイシューにするには、自分の属する一企業のブランドの利益だけでは、難しいだろうと思いました。

今回は、時代遅れのルールを守っていた企業も多いようです。他社まで巻き込めれば、ルールも変えられると思いますが、他社を巻き込まず、自社の活動だけでルールを変えるのは、現状の日本では難しそうです。

 

●一企業の意見でも、筋の通った意見であれば、行政が採用してくれるようにならないと、なかなか、前に進みそうにありません。 工業会で意見や要望を吸い上げるシステムからの離脱が必要なのかもしれません。