特許庁がDD手順書作成
2018年4月2日の日経に、特許庁が知財のデューデリジェンス(資産査定=DD)の標準手順書を策定したとありました。www.nikkei.com
- DDは、リスクを把握し、投資額を検証するためのもの
- 技術系のVBなどは、知財DDが必須
- 日本のM&A実務は、財務などが中心で、知財はわずかな項目だけ
- 日本では知財訴訟が少ないことが原因
- 特許庁の調査でも、知財DDはM&Aの判断に影響していないとの回答
- 知財DD標準手順書には、流れ、項目、リスクを列挙
- 必須特許を競合他社がもっている、ライセンスに特約があり買収後は更新できないなど
- 対策としては、事業譲渡から会社分割へ、取引価格の減額、契約によるリスク回避など
とありました。詳しくは、日経でご確認ください。
また、知財DDに関する調査報告書は、特許庁のWebサイトから入手可能です。
コメント
海外を含めたM&Aが、非常に日常的になってきていますので、知財のDDは必須です。ただ、限られた時間の中で行うので、何を目的に、何をするか、どこまでするか、という問題があります。
特許庁の報告書は、NTTデータがとりまとめたようです。調査項目の一覧表などが、参考になるのではないかと思います。
さっと見たところ、国内寄りの内容ではないかと思いました。件数は、圧倒的に国内企業のM&Aが多いと思いますので、致し方ないというところでしょうか。
商標権については、
- 権利の取得状況
- 契約状況
- 紛争状況
などが触れられていました。
例えば、商標権の取得状況の調査では、現在その会社がどのような権利を持っているかを洗い出してリスト化したり、件数などの数字を出す程度は、やっていると思います。(相手方に報告させて、確認する程度かもしれません。)
しかし、海外の企業のM&Aの場合、その会社の商標権所得状況が十分ではないケースが多いように思います。
買収先が、例えば欧州だけとか、米国だけとか、ある程度の地域だけで商売をしている会社が多いので、保有する商標権もその地域に限られていることが多いように思います。
日本から見ると、他にもっとそのブランドが活躍できる地域がある場合、商標権をその地域で取得できるか、先行権利が存在し難しいのかというようなところは、新規商標採用時の商標調査と同じく特許事務所のルートを使った調査が必要です。
商標の地理的範囲の拡大ができるか、できないかというのも、リスクの一つです。
この点、M&A後に、すぐに、不足している国への商標出願の手当をしておけば、2~3年後には、海外で権利がある状態で商売ができるようになっているかもしれません。
M&Aの実行部隊にこのような感覚を持った人が必要なように思いますが、知財部門に連絡が来なかったり、来るのが遅かったり、また、来ても特許の担当者が特許中心で検討してしまい、商標に連絡がなかったりします。
公表までは、できるだけ情報を知っている人を限定する必要があり、知財でも極少数の人しか情報をしりません。商標担当者までは連絡をしないのが普通です。M&A案件の窓口になる知財担当者は、商標にも配慮できる人であって欲しいと思います。
また、DDのタイミングでは無理で、そのすぐ後のタイミングになるのかもしれませんが、やるべきだなと思うのは、ブランド調査です。
具体的には、ブランド認知度・ブランドイメージ項目調査、ブランド価値評価です。簡単なものでも良いので、これらをM&Aのルーチンに組み込んどおくべきだと思います。
目的は、買収後に、継続的に、ブランド価値が上がったか下がったかの把握をするためめです。