Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

消費者庁の不当表示運用

不当表示のまとめ記事

2018年4月23日の日経に、消費者庁が景表法の「不当表示」の摘発を加速させているという記事がありました。

www.nikkei.com

1.(再発防止策を求める)措置命令の件数

  • 2017年度は50件ソフトバンク東レ東京ガスなど)
  • 他にアマゾンジャパンの二重価格表示など
  • 大手企業でも表示管理体制が適切でない

2.摘発内容

  • 以前は、優良誤認表示(商品・サービスの質を実際より良いと示す)が中心
  • 最近は、有利誤認表示(「今だけ安い」など価格や取引条件が実際より有利と誤解させる広告)が多い。アマゾンのケースが代表例

3.課徴金の運用

  • 2016年4月に導入した課徴金の納付命令も急増
  • 2016年度は三菱自動車の1件だけだが、2017年年度は19件
  • OEM供給元(例、三菱自動車)が不正を行っても、情報を十分に確認しなかったとして、納付命令を受ける(例、日産自動車

4.テレビ通販の「個人の感想です」では打消しできず

  • 一般消費者の目から分かりやすくなければ、問題になりうる

5.企業の対策

などとあります。

 

コメント

また、2018年4月26日の日経には、優良誤認のケースですが無印良品のソファカバーが、撥水加工をしていないのに、「はっ水加工」をしていると表示していたとして、再発防止を求める措置命令を受けています。

www.nikkei.com

 

冒頭の記事にも、景表法の運用につき、消費者庁はアグレッシブとありますので、この傾向は続くのだと思います。

 

弁理士は、景表法は勉強しませんが、不正競争防止法は勉強します。

不正競争防止法にも、品質等誤認惹起行為があります(不競法2条1項14号)

十四 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

このような表示によって、営業上の利益を侵害されたものは、不競法に基づいて、差止請求や損害賠償請求が可能です。

 

景表法と不競法は、よく似た場面に適用される法律ですが、景表法が消費者を守るためのものであり、行政命令・行政罰であるのに対して、不競法は事業者間の公正な競争を確保するためのものであり、事業者間の争いという違いがあります。

 

営業主体や商品主体の混同行為であれば、企業として私訴をしてでも止めたいと思いますが(不競法)、品質誤認についてはどちらかというと公的な機関の判断になじむように思います。社会が、景表法を重視する流れは正しいのかなと思います。

 

なお、商標法3条1項3号(商標登録条件としての識別性)の規定ぶりは、不正競争防止法の規定ぶりに良く似ています。

第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。 

三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
同じ経産省所管の法律だからだと思います。
 
商標法は、商標として登録しない、保護をしかいと言っているだけで、使ってはいけないとは言っていません。
 
使用して、事業者間で問題が生ずれば、不競法で私訴をして解決をして(刑事もあり)、
使用して、消費者が誤認混同を生じれば、景表法で行政的に解決するという内容です。
 
重複する部分があると思いますので、景表法が活性化した今となっては、不競法の品質等誤認惹起行為は、景表法に移管しても良いように思います。
景表法は独禁法ベースでアメリカ由来のものです。一方、ドイツでは日本の独禁法のようなものをドイツの不競法で解決していると聞いたことがあります。そもそも独禁法と不競法は近いところがあるのだと思いますので、あながちおかしくはありません。
 
商標は特許と一緒に動かないと、WIPO等や諸外国の特許庁との関係などがややこしくなるので、そのようなことはまず無いと思いますが、商標(ブランド)や意匠(製品外観)は、消費者から見ると、商品やサービスにまつわる各種の表示の代表選手にすぎませんので、消費者保護という理屈を全面に出すと、特許庁から、例えば商標を取り出して、消費者庁に組み入れることなども考え方としては、ありうるのかなと思いました。