Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

医薬品の偽造品対策

光や電磁波の活用

2018年5月10日の日経に、医薬品の真贋判定の新技術の紹介がありました。

www.nikkei.com

  • 欧米を中心に偽造医薬品の被害は広がっている。やせ薬、ED治療薬など
  • EUでは年100億ユーロ以上の経済損失。約37万人の雇用喪失
  • 日本には東南アジアから流入
  • インターネット経由で入手したED治療薬の約4割は偽造品という報告
  • 従来から分析手法はあるが、手間と時間がかかった
  • 武蔵野大学の教授らは近赤外線を包装の上からあてて、反射光から識別する技術
  • 金沢大の助教らは注射液につき、特殊な電磁波をあてて、その透過光から見破る
  • 水際対策として、税関に導入すると、現場ですぐに振るい分けできる

コメント

模倣品は、一般用語では「偽物」といい、知財の業界用語では「模造品」という用語が使われていました。これは、1990年代後半からの流れです。

ただ、最近、医薬品については、偽造品という言葉が使われているようです。

模倣品という言葉には、「模倣」自体は悪ではない。技術は模倣して伸びるものである。ただし、無断で他人の知的財産権の侵害をすることは許されない、というニュアンスがあります。一方、偽造品は、模造品よりも悪いことをしているという語感があります。

 

さて、先日、米国の偽造品対策の研修を受けたときに、特に医薬品が深刻で、カナダから大量に流れてきているという話を聞きました。 

nishiny.hatenablog.com

 

広大な国ですので、薬を対面販売の薬局から買うだけではなく、インターネット経由で購入することが多いようで、それに伴い偽物も多いようです。世界では、医薬品の偽物が相当あるようです。

 

健康被害のある偽造品の薬もあるようですので、医薬品の偽造品は、罪が重いと思います。

昔、中国の模倣品対策の話を聞いたとき、模倣品販売業者が逮捕されて死刑になったと聞いて驚いたのですが、健康被害のある医薬品の偽造品だと聞いて理解できたことを思い出します。

日本で良く話題になっていたGUCCICHANELなどのラグジュアリーブランドの模倣品は経済犯罪に過ぎませんが、医薬品の偽造品は殺人罪や傷害罪ですので納得できました。

 

薬品のネット販売は、現在でも相当あります。アマゾンや楽天で通常の薬局で買える薬は買えます。医者の処方箋が必要な薬は、さすがにありませんが、ただ、個人輸入などをすれば、買えるようです。

 

昨年来、奈良の店頭販売の薬局で、ハーボニーという薬の偽物があったことが度々新聞で取り上げられています。日本の薬局はどこでも安全だろうと思っていたのに、実はそうではなかったとして、相当ショッキングな事件です。いわゆるバッタ屋ルートのようなものが、医薬品でもあったのかとショックを受けました。

 

ラベルやパッケージのホログラムはメーカー側で実施する対策ですが、今回のような技術は流通側で実施する対策だと思いました。税関だけではなく、薬局が正規ルート以外から購入するときは、必要になるように思いました。

 

富士ゼロックスのヨクトレースなど、真贋判定の技術は色々ありそうです。業界ごとに特性が違うのだと思いますが、早く決定的なものが欲しいように思います。 

nishiny.hatenablog.com