Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

警告書もニュースリリースで、の時代?

DMMの艦娘

2018年5月31日のDMMグループのニュースリリースで、他社の名称使用に対する警告が出ています。

dmm-corp.com

 

  • 他社のゲームの宣伝・告知のなかで、ゲームに登場するキャラクターについて「艦娘」という呼称が使用されている

  • 当該ゲームは、DMM GAMEの「艦隊これくしょん -艦これ-」とは、一切関係がない

  • 「艦娘」は、「艦隊これくしょん -艦これ-」のキャラクターの呼称として創作した造語

  • 艦隊これくしょん -艦これ-」にとって極めて重要な要素

  • また、DMMグループは「艦娘」を商標登録いる(登録第5682313号、第5682314号)

という内容です。

 

コメント 

Wikipediaによると、艦隊これくしょん(艦これ)は、旧日本海軍の軍艦を擬人化した艦娘(かんむす)を集めるゲームということです。

艦隊これくしょん -艦これ- - Wikipedia

艦娘は、「かんむす」と読むのですね。

 

ゲームソフトの名前は、商標ですが、ゲームに登場するキャラクターの名称は、本来的な意味での商標ではありません。五輪のマスコットの名称も、商標でないのと同じです。基本的には名称の選択は自由です。

ただ、キャラクターの名称がゲームの名称になったり(例えば、スーパーマリオブラザーズ)、キャラクターグッズ(例えば、ぬいぐるみやフィギュア)になった場合は、商品の名称ですので、商標になります。

 

ゲームの名称に戻ると、キャラクターの名称が有名であれば、不正競争になることがあると思います。

また、商標登録の存在は、不正競争を確認する手段の一つには、使えそうです。第三者の商標とは同一・類似していないと特許庁が認めたという事実が、不正競争事件で、有利に働きます。

さらに言えば、今回の「艦娘」は、キャラクターの名称であり、ゲームの名称ではないですが、この名称だけで、このゲームを想起できるまでになっているなら、商標と言っても良いのかもしれません。

 

さて、ポイントは、本来、私的な権利のやり取りは、内容証明付きの警告書(ラブレター)を送付するというのが長年の慣行でしたが、DMMになると、警告書の替わりに自らのサイトでニュースリリースにするのだということです。

私的な権利についてのやり取りですので、公にする必要がないのと、もし、裁判等になり、あるいは商標が無効になり、最終的に、非侵害ということが確定すれば、営業妨害として反対に損害賠償を求められてしまうなどを考えて、余程の場合でないとリリースは出しません。

 

リリースを出すのは、消費者への注意の喚起が必要な場合です。たぶん、本件の場合は、消費者は、ゲームの違いは分かる人々ですので、出所混同や品質誤認の防止ではありません。

 

放置すると、艦隊ゲームの女性キャラークター擬人化のことを、艦娘とするのが、普通名称化してしまうので、その防止という面は考えられます。

 

また、絶対に勝てる場合に、時間をかけるのではなく、一挙に、勝ち負けを決めようという場合も考えられます。

 

実際、6月3日には、相手方のYostarのお詫びが同社のWebサイトに掲載されています。

アズールレーン - ニュース

 

さすがに、この業界は、動きが早いなと思います。