Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「たけのこの里」の商標出願


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きのこの山」につづいて

2018年6月6日の日経に、明治が、「きのこの山」に続いて、「たけのこの里」についても、商標出願をしたことの記事がありました。

www.nikkei.com

  • お菓子の明治が、今春、「きのこの山」が立体商標として登録
  • 5月末、「たけのこの里」を商標出願
  • 食品の形状が立体商標として認められるのはまれ
  • 立体商標の登録は、約2300種類
  • しかし、食品では、ハリボーのグミ菓子「ゴールドベア」、明治の「きのこの山」など程度
  • きのこの山」は、三度目の正直でやっと登録
  • 福岡市の菓子会社の「ひよこ」の鳥型菓子は、ありふれているとして、2007年に最高裁決定で登録が取消。以後、全国的な知名度が必要との判断が定着
  • 明治は、アンケートを実施。N数は、1300。9割がきのこの山と認識
  • きのこの山に似た商品に、明治は警告していく
  • 明治は、SNSで、「きのこ党」と「たけのこ党」の人気投票。立体商標も話題に

という内容です。

 

コメント

複数の話が入っています。

  1. 明治が立体商標の出願を(模倣品対策と広告宣伝に)活用している
  2. 製品形状の立体商標の登録は難しい
  3. 明治は、登録取得のために、アンケートを活用している

一つめですが、立体商標でも、音や色彩といった新しい商標でも、何のために出願するのか?が良く問われます。権利をとっても、権利行使やライセンスにつながるなら、権利を取得する価値があるのですが、大抵は、自分で使うだけだからです。

この点、明治は、模倣品対策と広告宣伝に使うということですので、立体商標という制度を上手く使っているのだと思います。

久光のTMCMの音の商標も、主に、広告効果が大きかったのだと思います。マスコミに取り上げられた回数や量を、自社で広告したとしたら、数億円の広告換算効果があったと思われます。

しかし、2番手以降は、ニュースにもなりませんので、これは一番はじめにやった人だけが享受できるメリットです。

 

明治の「きのこの山」は、難しい、食品形状を登録に持ち込んだという意味で、ニュースバリューがありますが、「たけのこの里」になると二番手ですので、これをマスコミに取り上げてもらうには、SNSでの話題づくりなどとセットであることなど、話題を提供している点が大きいのではないでしょうか。

 

二つめですが、立体商標は、製品の形状と無関係な立体商標は、割合簡単に登録になります。例えば、不二家のぺこちゃんです。しかし、製品の形となると、基本的には意匠が受け持つ領域であり、そちらの基本は公開代償で一定期間の独占権という考え方ですので、保護期間を超えると、パブリックドメインとなるのが基本です。

ただ、強い顧客吸引力が生じた製品デザインは、商標と同じ効果がある考えで、製品自体の形状は、周知の場合のに、立体商標の対象となり、食品の場合は、「ゴールデンベア」や「きのこの里」だけが登録となっています。

 

福岡市のひよこのお菓子は、全国に同じようなお菓子が、昔から複数あったのだと思いますので、そもそも、登録自体に無理があったということなのでしょう。

 

三つめは、アンケートの活用です。昨年、新しい商標のときもアンケートの活用が話題になりました。はじめに提出したアンケートの認知度が高くなかったので、アンケートをやり直したということも聞きました。

ただ、アンケートは、どのような人に聞くか(業界人か、一般人か)、純粋想起か・助成想起か、などで、大きく数字は異なります。

9割という数字が、ひとり歩きするするのは、危険です。

本来、アンケートは、権利化のためというよりは、侵害事件で混同が生じているとか、混同ではないが、広義の混同(関係していると思ったとか)が生じている、とかを見るためにあるのではないかと思います。

不競法は混同理論ですが、商標法が行政が商標を使用する場所を割り当てるという感覚の制度設計なので、混同などの理論が前面ではなく、後ろに回っており、あまりアンケートが活用されていないのが、実情です。

 

余談ですが、今は、商標権侵害事件では、不競法とセットで権利主張するのが普通です。そのため、商標制度自身も、不競法的な考え方に合わせていく方が、法律間の齟齬が少なくなり、良いと思います。不競法の工業所有権への適用除外がなくなり、不競法中心となった今、商標法の復権のためには、大改正が必要だと思います。

商標の使用主義、登録主義という言葉は、首都大学東京の渋谷先生が言い出したと聞いていますが、使用主義の本家の英国がEUTM(CTM)で法律を変えたので、あまり、両者の差はあまりありません。

登録主義という言葉は、世界の商標では使われていない言葉であり、同意書を認めない等の日本のガラパゴス化の原因の一つになっていると思っています。