Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

元号の商標(商標審査基準の改訂)

特許庁が審査での運用を示す

2018年6月22日に特許庁のWebサイトで、「元号に関する商標の取扱いについて」という文章が発信させています。

www.jpo.go.jp

  • 元号以外の元号についても現元号に準じた取扱いをするように、商標審査基準の改訂の検討
  • 現在の商標審査基準には「元号を表示する商標」について商標法第3条第1項第6号に該当する旨記載あり
  • 商標「平成」は、単に現元号として認識されるにすぎないため、商標登録を受けることはできない
  • また、他の識別力のない文字等を組み合わせた商標(例:商品「饅頭」に、商標「平成まんじゅう」)も、商標登録を受けることはできない
  • しかし、そもそも、元号にすぎない商標は、識別力がない
  • 元号は、会社の創立時期、商品の製造時期、その他の日付・期間等を表示するものとして一般に使用されるもの
  • 元号であるか否かは問わない
  • 「平成」ま、単に旧元号として認識されるにすぎなくなるものであるため、商標登録を受けることはできない
  • なお、ある特定の商品・役務に使用された結果、後発的に識別力が獲得されたものは、商標登録を受けることが可能

というような内容です。

 

コメント

世の中には、お菓子の「明治」(旧社名、ブランドは、「明治製菓」)や、「大正製薬」などの、有名企業・ブランドがあります。

これらは、そもそもが使用による、それぞれが登録された時代に、使用による顕著性(識別性の後天的な獲得)が認められて、登録されたのだとおもいます。それを明確にするための改訂だと思います。

 

審査基準が改正されてから、このように改訂しましたというのが、多いパターンですが、緊急性があったのでしょうか、改訂しますということを発表しています。

 

「現元号」というのは、平成に変わる段階で入ったのか、昭和からあった審査基準だったのか、忘れてしまったのですが、昭和の時代に明治や対象を名乗る会社は、既に大会社ばかりだったように思いますし、昭和の時代に、今から明治、大正を名乗る会社も少なかったのかもしれません。

 

あるいは、元号は、昔から数えると沢山あるので、そのすべてを拒絶理由とすべきなのか?というのも論点なのだと思います。大化や建武、慶長などは有名ですが、知らないものも沢山あります。

 

そのあたりの理由で、現行の商標審査基準は、現元号のみ、識別性なしとしていたのだと思いますが、新元号に変わったときに、旧元号の「平成」の入った商標を出願する人が増えるのではないかということで、その予防目的で検討しているのだと思います。

 

今住んでいる同じ区に「平成横浜病院」という病院があるのですが、地元では有名です。しかし、審査基準では全国的に認識されている必要があるとしてますので(商標権が全国的権利であることから)、登録は難しいのもしれません。

 

新しい元号ができると、新しい元号の商標を出願しようとする人は、増えると思いますが、旧元号となったものを、今更、商標出願しようとする人が増えるという気はあまりしませんし、念のための改訂という気がします。