平成29年度(2017年)知的財産活動調査から
2018年6月28日に、特許庁のWebサイトで、平成29年度知的財産活動調査が公表されていました。その「結果の概要」をパラパラめくってみていると、2018年には商標出願が減少するとありました。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/files/h29_tizai_katsudou/kekka.pdf
●下記の数字は、内国人の商標出願の件数です。
これを見ていて驚いたのは、2018年度は出願件数がほとんどの業種で減る予定というところです。2017年比で、2018年は、-7.9%の予測です。これはどういうことでしょうか?
- 2018年 142,531件(予測値)
- 2017年 154,780件(暫定値)
- 2016年 133,337件
- 2015年 117,960件
- 2014年 100,053件
この予測は、2017年9月の一ヶ月間に、約6,262者への調査を実施して上で出てきた数字のようですので、ある程度の信ぴょう性はあります。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/pdf/syutugan_toukei_sokuho/201804_sokuho.pdf
この統計速報を見ても、2018年2月~4月は、前年比割れが続いているようです。
●商標出願件数が減るということは、日本の景気見通しも悪くなっているということかもしれません。商標出願の件数は、企業の売上等、企業活力のバロメーターだと思っています。これは、特許出願件数よりも、如実に商標出願件数に出てくるように思います。
最近、分割出願について、出願日の遡及効を得るには料金納付が必要という法改正まであったため、ベストライセンスと上田育弘氏の出願が減る影響かなとも思ったのですが、特許庁の資料では、各業種で減るようですので、それではないようです。
東京オリンピック・パラリンピックを目指して、多くの企業が新商品・新サービスを検討していたのが、そろそろ打ち止めになったということでしょうか?
それなら、一過性のイベント出願が収まったということで、全体には、あるべき数字に戻るだけという理解をすれば良いのかもしれません。
●ちなみに、知財ラボの数字(毎月の商標の公開件数をカウントして、集計したもの)によると、ベストライセンスと上田氏で次の数字です。
<ベストライセンス㈱>
- 2018年 14,590件(1月~6月の半年)
- 2017年 25,581件
- 2016年 19,949件
- 2015年 8,130件
<上田育弘氏>
- 2018年 2,327件(1月~6月の半年)
- 2017年 6,029件
- 2016年 5,701件
- 2015年 6,656件
今年に入っても、出願活動は活発です。2017年には、両方で、31,610件の出願です。ただ、ほとんどが分割出願ですので、法改正の影響で、今後は、分割出願はだいぶ減るのだと思います。
●商標出願の統計は、次のところにあります。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2018/toukei/0106.pdf
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2018/toukei/0204.pdf
- 対象年 出願総数 内国人出願 外国人出願 ベストライセンス計
- 2017年 190,930件 154,780件 36,159件 31,610件
- 2016年 161,859件 133,337件 28,522件 25,650件
- 2015年 147,283件 117,960件 29,323件 14,786件
- 2014年 124,442件 100,053件 24,389件 (以下不明)
- 2013年 117,675件 92,496件 25,179件
- 2012年 119,010件 95,548件 23,462件
- 2011年 108,060件 84,673件 23,387件
- 2010年 113,519件 92,163件 21,356件
- 2009年 110,841件 90,474件 20,367件
- 2008年 119,185件 95,674件 23,511件
2008年秋にリーマンショックがあり、2011年に東日本大震災がありました。2011年が国内商標出願の底のようです。2013年9月に東京オリンピックが決定しましたので、その影響は、2014年ぐらいから出ていると見るのが自然です。
2017年の190,939件という商標出願全体から、外国人の出願35,979件を引いた、内国人の商標出願154,960件のうち、31,610件がベストライセンスと上田氏の出願です。内国人出願の約20%がこの両者の出願となっています。
逆にいうと、154,960件の内国人の出願件数から、この両者の数字を引いた123,350件が、2017年の内国人の商標出願のだいたいの実力ということになります(ベストライセンスと上田氏は、分割出願を更に分割出願しているなどがあり、内国人の統計は、よりしっかりとカウントしないと出ないのかもしれません。この点、ご容赦ください)。
それでも、2014年以前に比べると、だいぶ増えています。
また、この3年間、外国人による、日本出願が伸びているの点は、特筆できると思います。インバウンドと同じ影響が出てきているようです。資料は、無いのですが、先日の日経一面のことから考えると、中国人の日本への商標出願が増加することが想定されます。
特許の場合、外国人の日本への出願件数が、この10年間、4万8千ぐらいで横ばいのようです。
ここ3年の日本への外国人の商標出願件数の伸びは、日本を有望な市場とみて、出願を増やしていると見て良いように思います。
外国人の商標出願は、3年前の2014年比で、1万件程度のプラス要因です。
これらのことを俯瞰すると、 東京オリンピック後の商標出願ブームは一段落したこと、外国人が日本を一つの市場とみる傾向は続いていることは、言えると思います。
世界の商標登録件数の総数は、2014年からだいぶ増えています。2014年の358万件/年が、2016年には460万件/年となっています。登録ですので、タイムラグがあり、中国の商標出願の激増前の数値で、これですので、今後、もっと増えそうです。
日本企業も、従来の国内向けの企業(ユニクロ、無印良品)、中小企業やスタートアップなど、海外に販路を求めて、外国商標出願する時代になっていますが、まだ、外国商標出願には慣れていないのか、外国出願は、2012年に12万9千件がピークで、2016年には11万件と減っています。
TPPも発行しますし、日本企業も、マドプロで良いので、外国出願を本気でやらないと、生き残っていけないと思います。 これからの課題です。