Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

TPP11の外国商標への影響

TPP11関連法案が成立

2018年6月29日の日経電子版で、TPP11の関連法案が成立したという記事がありました。www.nikkei.com

日経は、TPPとTPP11を区別して、書き分けているようです。

  • TPP11は、日本、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、ベトナム、マレーシア、シンガポールブルネイ、オーストラリア、ニュージーランドの11カ国が3月に署名
  • このうち6カ国以上が国内手続きを終えれば60日後に発効
  • 政府は年内発効を目指して、各国に手続きの加速を促す

コメント

知財の話としては、著作権の保護期間の延長や、映画・漫画の海賊版の取り締まりの強化が盛り込んまれています。

TPP11の発効により、今後、域内の貿易・取引が加速しますので、そのつもりで、準備しておく必要があります。

 

日本、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、ベトナム、マレーシア、シンガポールブルネイ、オーストラリア、ニュージーランドの11カ国は、今後、商標の外国出願するときも、セットで出願する必要があり、TPP11パックのようなものが必要になるかもしれません。

 

ちなみに、この11ヵ国のマドリッドプロトコルの加盟状況をチェックしてみたところ、カナダ、チリ、ペルー、マレーシアが、未加盟でした。

マドリッドプロトコルに入ると、18ヶ月以内のファーストアクションが完了することという現地の特許庁へのハードルがあります。また、現地の弁護士・弁理士にすると、審査で何らかの拒絶が発見されたときだけ、出願にタッチすることになりますので、収入が相当減りますので、導入に積極的にはなりません。

ただ、ユーザーからすると便利なため、ユーザーとしては、できれば経済協力協定を結んだ先には、マドプロ加盟もしてほしいと思うことが自然です。

 

カナダは、マドプロ加盟をにらんで、法改正をしようとしているようです。チリやペルーは、太平洋の向こうで、少し、時間がかかっても許容できるとしても、マレーシアは早期にマドプロに入ってほしいというところではないでしょうか。

 

TPPと並んで、RCEP(アールセップ、東アジア地域包括的経済連携)というのが、議論されているようです。

www.nikkei.com

参加国は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポールベトナムブルネイというTPP11にも参加している国の他、ASEANのタイ、インドネシア、フィリピン、カンボジアミャンマーラオスと、中国、韓国、インドの16ヵ国です。(アジアですので、カナダ、メキシコ、ペルー、チリは入っていません)

日本と中国・インドとは、主張に隔たりがある部分もあるようであり、交渉がどうなるかは不明ですが、米国の保護貿易には反対している点では一致しているようです。

 

この16ヵ国で、マドプロに入っていないのは、マレーシアとミャンマーだけです。ミャンマーは、これから商標法が発行するという段階ですので、致し方ないというところでしょうか。

 

このRCEP加盟予定国は、経済的な結び付き強い国が多いですので、RCEPが本当に発効するなら、これらの国は、TPP11以上に出願しておきたい気がします。

 

外国出願はマドプロルートを使うとしても、調査は各国毎に行う必要がありますので、この効率化が、次の課題になりそうです。

調査では、DBだけで日本人が判断するのは難しいですので、現地の弁護士・弁理士の意見を聞くしかありません。