Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

フォルクスワーゲンの地域ブランド戦略

単なるグローバルじゃない

2018年6月26日のフォルクスワーゲンのプレスリリースに、面白いブランド戦略が載っていました。リージョナルな「リードブランド戦略」です。

www.volkswagen.co.jp

  • フォルクスワーゲは、各地域にリードブランドを設定ん
  • 各地域がそれぞれ一つのリードブランドによって担当
  • フォルクスワーゲン ブランドは、北米、南米、サハラ以南のアフリカ地域。中国は、グループに残る
  • セアトは、北アフリカの成長市場
  • アウディは、中東および(中国を除く)アジア太平洋地域
  • シュコダは、ロシアとインド市場
  • 地域の知識・ノウハウ活用。地域のパートナーと協力。ラインナップをその地域に適合させる
  • リードブランドは、その地域における他のグループブランドと連携。その地域の グループ戦略を遂行。また、各ブランドの取組み、パートナーシップ、相乗効果の活用を調整
  • 意思決定を分散した形で行うことが可能に。グループ役員会は戦略的に重要な案件に取り組む。より迅速、スリムで、効率的な組織にする

コメント

非常に珍しいブランド戦略です。

まず、通常は、BoPの考え方のように、超富裕層から一般まで、購買層を購入能力で輪切りにして、高級なアウディ、普及価格帯のフォルクスワーゲン、低価格のシュコダなどのようにするのが、一般的だと思います。そして、価格帯でセグメント化されたブランドを、グローバルで拡大していくのが、通常です。

 

次に、経営の意思決定とブランドを絡めているところが、珍しいところです。世界をリージョナルに分割して、アジア、北州、欧州、中近東・アフリカなどに分けて、そこにリージョナル本社を置き、世界本社の権限を委譲することは良くあることだと思います。例えば、投資金額の一定レベルまでは、地域の判断で実行可能とするなどです。

ただ、そこにブランドが絡んでくるのは珍しいと思います。通常は、基本となるブランドは一つであり、そのブランドを使うことは、自明なものという前提だからです。

 

Wikipediaで調べたところ、

とあります。

 

アセト、シュコダは、そもそも、地域のブランドですので、特定地域に強いというのは、頷けます。

アウディは、高級ブランドですので、中東やアジアで人気というのは、頷けます。

 

各地で強いブランドがあり、そのブランドのトップに、地域を任せて、基本は、自らの担当ブランドを見ながら、同時に、グループが有する他のブランドの面倒も見てもらおうという作戦です。

確かにフォルクスワーゲン商品が全世界的に売れているのではあれば、フォルクスワーゲンのリージョナル・ヘッドクォーターを、中心に、地域のグループ全体政策を進めれば良いのでしょうが、売りの小さな地域に、力のあるリージョン・ヘッドクォーターは、設置できませんので、この戦略はありだと思いました。

 

屋上屋を架したような、地域本社が多いように思います。地域の営業部門のとりまとめ役とか、情報収集やロビー、法務、経理などのシェアードサービス以外の目的で、地域本社は本当に必要なのかなぁと思うことも多いのですが、ブランドを分けると、ブランドの成長が目標になり、ブランド毎に一つの独立国家となりますので、良い効果が出てきそうです。

 

ただ、この方式でいくときは、リージョンのTOPは、他のグループのブランドの面倒を見ないといけなくなりますので、各ブランドについての深い理解(=愛情)が必要になります。

 

この方式で、しばらくやってみて、どのような結果になるのか注目しないといけないと思います。