Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

シャープ 北米でテレビ再参入

ハイセンスと合意

2018年6月28日の日経新聞に、シャープが北米で液晶テレビに再参入するという記事がありました。

www.nikkei.com

<経緯>

  • 2015年に米国テレビ事業から撤退
  • 2016年から5年間の契約で、米州で、シャープとアクオスの商標使用権を、ハイセンス(海信集団)にライセンス
  • 2016年8月に、シャープは鴻海傘下に
  • 2017年2月、シャープ欧州テレビに再参入
  • 2017年春からハイセンスを特許権侵害で米国で提訴
  • 2017年末にシャープが訴えを取り下げ
  • 2018年2月末にハイセンスは東芝のテレビ事業を買収

コメント

シャープの北米テレビのハイセンスへのブランドライセンスは、2016年からの5年契約ですので、2021年までです。

ハイセンスは、東芝のテレビ事業も買収し、TOSHIBAブランドを、40年間使えるようですので、TOSHIBAブランドは、今後育成すべきブランドとなります。 

nishiny.hatenablog.com

SHARPブランドは、2021年には使えなくなりますので、ハイセンスとしても、あまりこれに肩入れしても仕方ないという判断は理解できます。

 

また、現在のテレビは、8Kや55型以上ではなく、中小型に量販モデルのようですので、シャープが、SHARPブランドで、8Kや55型以上を出してくれると、SHARPブランドのテレビのラインナップが揃いますので、市場でのプレゼンスがアップし、中小型の販売にも良い影響が出てくるように思います。

ライセンス権がある2021年までに、SHARPブランドで売れる間はSHARPブランドからの売上も期待できます。

 

TOSHIBAのテレビを中長期で育成しながら、SHARPのテレビは短期で売り切ることができれば、成功と言えます。

 

サービス業では、サービスを提供したら、アフターサービスという概念はあまりないですか、メーカーの場合、7年~8年補修部品の在庫を持ったり、相当長期ににわたって品質クレームの対応をしたりしないといけません。

北米のSHARPブランドの事業主体が、旧シャープ→ハイセンス→新シャープと移り変わるなかで、どのように、品質問題などを分担するのかというのは、論点になりそうです。

エンドユーザーは、商品を購入した家電量販店やアマゾンに修理の依頼やクレームをします。その家電量販店は、製造会社により、シャープに連絡したり、ハイセンスに連絡したりが必要になります。SHARPブランドのテレビの販売は、面倒だなという感じがします。

最終的には、シャープがブランドを生かしたいということですので、シャープ側がハイセンス製の商品まで、ある程度の面倒を見るという事態も予想されます。

 

今回、ハイセンスに5年間という短い期間ではありますが、ブランドをライセンスしてしまったために、この回復のために、シャープは特許訴訟まで起こして大変な努力をしたことになります。

また、ハイセンスとの商標ライセンス契約に、契約期間終了後の使用不能期間の条項でもあれば、その例外を認めてもらうために、多少の色を付けないといけないかもしれません。

シャープは鴻海傘下に入って復活したので、言えることなのですが、ブランドのライセンスは、やっぱり簡単にはやってはいけないなという感じがします。

 

よく法律的にいうと不使用取消があるので、対策としてライセンスすべきとか言いますが、コーポレートブランドでは、あまりお薦め出来ません。

 

商標の世界の格言で、「ブランドが無くなるより、工場がなくなった方が良い」という内容のものがありますが、会社がつぶれるかどうかの瀬戸際のときは、ブランドの社外へのライセンスも致し方ないとしても、極力、やらずに越したことはないなと思いました。 

 

シャープも非常事態を抜けるということでしょうか。

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